【掲載日:平成25年7月16日】
うつせみの 常のことばと 思へども 継ぎてし聞けば 心惑ひぬ
またも聞かすか お寒い口説き
気にもせんけど 一寸良え気分
日暮れ寂しと 思たは昔
来んか夕暮れ この胸弾む
うつせみの 常のことばと 思へども 継ぎてし聞けば 心惑ひぬ
《耳すんは ありきたりやと 思うけど 重ね聞いたら その気になるわ》
―作者未詳―(巻十二・二九六一)
夕さらば 君に逢はむと 思へこそ 日の暮るらくも 嬉しくありけれ
《夕暮れ来たら あんた逢えると 思うから 日ぃ暮れるんも 嬉しいもんや》
―作者未詳―(巻十二・二九二二)
海石榴市の 八十の衢に 立ち平し 結びし紐を 解かまく惜しも
《海石榴市の 歌垣出合て 気が合うて 結び合た紐 解くん惜しわ》
―作者未詳―(巻十二・二九五一)
夢かと 心惑ひぬ 月数多く 離れにし君が 言の通へば
《夢違うか うちびっくりや 長いこと 逢わんあんたの 言伝て来たわ》
―作者未詳―(巻十二・二九五五)
弱女は 同じ心に 暫しくも やむ時もなく 見てむとぞ思ふ
《うち思い あんたと同じ 一時も 休むこと無う 逢てたいんやで》
―作者未詳―(巻十二・二九二一)
うたて異に 心いぶせし 事計り よくせ我が背子 逢へる時だに
《今日妙に 鬱陶しよって 晴らす様に ちゃんとやってや 逢うてる間》
―作者未詳―(巻十二・二九四九)