【掲載日:平成25年7月19日】
我が命の 長く欲しけく 偽りを よくする人を 捕ふばかりを
未練残すは 男の常か
焼けぼっくいの 燻りないか
女懐古の 思いに浸る
昔馴染んだ あの人恋し
うらぶれて 離れにし袖を また巻かば 過ぎにし恋い 乱れ来むかも
《恋冷めて 別れたあの児 また逢たら 昔の激恋が 戻るやろうか》
―作者未詳―(巻十二・二九二七)
今よりは 恋ふとも妹に 逢はめやも 床の辺去らず 夢に見えこそ
《もうお前 焦がれしたかて 逢われへん 夢に始終 出て来て欲しな》
―作者未詳―(巻十二・二九五七)
玉梓の 君が使を 待ちし夜の なごりぞ今も 寝ねぬ夜の多き
《あの人の 使いを待った 名残やで 寝付けん夜が 今も多いんは》
―作者未詳―(巻十二・二九四五)
我が命の 衰へぬれば 白栲の 袖のなれにし 君をしぞ思ふ
《衰えた 命思たら その昔 馴染んだあんた 良う思い出す》
―作者未詳―(巻十二・二九五二)
男腑抜けで しょぼくれてても
女気丈や なにくそ生きる
うたがたも 言ひつつもあるか 我れならば 地には落ちず 空に消なまし
《何時までも まだ言うてるか 情けない うちなら死ぬわ しょぼくれてんと》
―作者未詳―(巻十二・二八九六)
(仲割かれ逢えん相手に叱咤激励?)
ようしこのうち 長生きしたる
嘘つく男 許さで措くか
我が命の 長く欲しけく 偽りを よくする人を 捕ふばかりを
《この命 長ご欲しもんや 嘘ばかり 言う人捕まえ 懲らしめたいで》
―作者未詳―(巻十二・二九四三)