【掲載日:平成23年11月4日】
雲雀上がる 春へとさやに なりぬれば
都も見えず 霞たなびく
難波での務め 前準備含め 二ヶ月になっていた
次々訪れる防人兵士差配
慣れぬ任務の多忙に
疲れが 気を倦ませていた
(越を 除けば 長期の都離れは
聖武帝 関東行幸以来か
あの後 恭仁京では
大嬢ありながら
紀郎女 宮中娘子を 追うておった
わしも 若かった)
家持に 都 佐保邸 大嬢が浮かぶ
竜田山 見つつ越え来し 桜花 散りか過ぎなむ 我が帰るとに
《桜花 見ながら越えた 竜田山 わし帰るとき 散り果てとるか》
―大伴家持―(巻二十・四三九五)
堀江より 朝潮満ちに 寄る木屑 貝にありせば 苞にせましを
《朝潮が 堀江に寄せる 木の屑が もしも貝なら 土産にするに》
―大伴家持―(巻二十・四三九六)
見わたせば 向つ峰の上の 花にほひ 照りて立てるは 愛しき誰が妻
《見はるかす 向かいの丘に 花咲いて 花に映えてる 可愛い児誰や》
―大伴家持―(巻二十・四三九七)
【二月十七日】
やがて 防人任務も 終局迎え
紫微中台派遣の役人共々
打ち上げ宴が 催される
解放の任務納めに 皆 都が恋しい
朝な朝な 上がる雲雀に なりてしか 都に行きて 早帰り来む
《毎朝に 上がる雲雀に なりたいな 都に行って すぐ戻れるに》
―安倍沙美麻呂―(巻二十・四四三三)
雲雀上がる 春へとさやに なりぬれば 都も見えず 霞たなびく
《ほんにまあ 雲雀の上がる 春なった けど霞出て 都見えんで》
―大伴家持―(巻二十・四四三四)
含めりし 花の初めに 来し我れや 散りなむ後に 都へ行かむ
《わし花の 蕾時分に 出て来たが 散って仕舞てから 帰るんやろか》
―大伴家持―(巻二十・四四三五)
【三月三日】
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