【掲載日:平成23年11月8日】
鴬の 声は過ぎぬと 思へども
染みにし心 なほ恋ひにけり
恭仁京以来の友 大原今城 今 上総国掾
役目終えて 任地へ戻る 宴 家持邸
「家持殿 防人検閲 ご苦労に御座った
東国の歌 収集怠り無しと お見受けいたす
これも中に 加えられたらと 持参
任国 出る折 郡司妻女が 餞歌」
足柄の 八重山越えて いましなば 誰をか君と 見つつ偲はむ
《足柄の 山々越えて 行かれたら 慕う今城の 代わり居れへん》
―上総国郡司妻等―(巻二十・四四四〇)
b>立ちしなふ 君が姿を 忘れずは 世の限りにや 恋ひ渡りなむ
《しなやかな 今城の姿 忘れんと 命の限り お慕いするわ》
―上総国郡司妻等―(巻二十・四四四一)
「先ほど 拝聴の 防人任務の折 作られし
その上 難波宴 思われし歌
これは それのお礼 としましょうや」
【元正太上天皇 御製歌】
霍公鳥 なほも鳴かなむ 本つ人 かけつつもとな 我を哭し泣くも
《ほととぎす もっと鳴け鳴け 逝った人 思い出しして 泣きとなったで》
―元正天皇―(巻二十・四四三七)
【薩妙觀 元正太上天皇の詔に応えての奏上歌】
霍公鳥 此処に近くを 来鳴きてよ 過ぎなむ後に 験あらめやも
《ほととぎす もっと近こ来て 鳴いとくれ 今鳴かへんと 意味無いやんか》
―薩妙觀―(巻二十・四四三八)
【石川邑婆 元正太上天皇の詔に応えた 歌】
松が枝の 地に着くまで 降る雪を 見ずてや妹が 籠り居るらむ
《松の枝 地ぃに着くまで 雪降った この雪見んと 籠っとるんか》
―石川邑婆―(巻二十・四四三九)
思わぬ 土産を得て 家持
大原今城との 旧交温めの 歌が弾む
我が背子が やどのなでしこ 日並べて 雨は降れども 色も変らず
《この庭の 撫子花は 引き続き 雨降るけども 萎れまへんで》
―大原今城―(巻二十・四四四二)
ひさかたの 雨は降りしく なでしこが いや初花に 恋しき我が背
《雨濡れて 咲く撫子は 咲き初めや まるで今城や わし惹かれるで》
―大伴家持―(巻二十・四四四三)
我が背子が やどなる萩の 花咲かむ 秋の夕は 我れを偲はせ
《この庭に 植えた萩花 咲く秋の 宵にまたわし 偲んで欲しな》
―大原今城―(巻二十・四四四四)
鴬の 声は過ぎぬと 思へども 染みにし心 なほ恋ひにけり
《鶯の 声終わりやと 思うけど 心沁みてて まだ聞きたいで》
―大伴家持―(巻二十・四四四五)
【五月九日】
防人検閲任務 無事終え 心穏やか家持
この年暮に起こる 思わぬ事態 知る由もない
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