【掲載日:平成23年11月22日】
今朝の朝明 雁が音寒く 聞きしなへ
野辺の浅茅ぞ 色づきにける
運命を背負っての誕生であらせられた
奇しくもの 同年 光明皇太后様 ご生誕
父君 文武帝は
天武大帝 皇子らとの 後継争いに
祖母持統帝・義父藤原不比等殿の支え得ての
帝位継承
その父君を 齢七才にして亡くされ
後を継ぐべくの 運命責務
帝位は 祖母元明帝 伯母元正帝と渡り
やがて 即位
即位間なしには
夫人光明子との子 基王 一歳待たずの身罷り
追うように 長屋王の変事
治世は 律令制度下での 藤原氏専横
国の主たる者として 懊悩の日々
やがて 襲い来たった 疱瘡の大嵐
藤原四兄弟の 相次ぐ死去
廟堂中心に 躍り出られた 橘諸兄様
帝の信任厚く 皇親政治復活の兆し
突如起こった 藤原広嗣蜂起
彷徨五年の流浪
藤原仲麻呂台頭で 燻る政情不安
安積皇子の 不審死
大仏開眼
橘諸兄様失脚と 帝の崩御
家持は 父大伴旅人から聞かされ
自らの 目で見 耳に聞いた
帝位を廻る 権謀術数の数々を思い
暗澹たる 思いでいた
文机の上
帝 並びに 関わりの人々の 歌が並んでいる
(これは これは 何とも爽やかなお歌
未だ 帝にお着きになられる前であろうか
伸び伸びとして
心 穏やかで あらせられたか)
秋の田の 穂田を雁がね 暗けくに 夜のほどろにも 鳴き渡るかも
《朝まだき まだ暗いのに 秋の田の 穂の上雁が 鳴き飛んで行く》
―聖武天皇―(巻八・一五三九)
今朝の朝明 雁が音寒く 聞きしなへ 野辺の浅茅ぞ 色づきにける
《明け方に 雁寒々と 聞いたあと 野辺の浅茅の 色付き見たよ》
―聖武天皇―(巻八・一五四〇)
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