goo blog サービス終了のお知らせ 

令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(20)満ち欠けしけり

2012年08月28日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月28日】

隠口こもりくの 泊瀬はつせの山に 照る月は 満ち欠けしけり 人のつねなき


以下の歌々 古歌集こかしゅう載せる
飛鳥 ・藤原 時代の歌か

 問答】
佐保川に 鳴くなる千鳥 何しかも 川原かはらしのひ いや川のぼ
佐保川さほで鳴く 千鳥よなんで 殺風景さっぷけな 川原しのんで 川のぼるんや》
                           ―古歌集―(巻七・一二五一)
人こそば おほにも言はめ 我が幾許ここだ しのふ川原を しめふなゆめ
仕様しょうもない 場所うけども わしにとり え川原やで 邪魔じゃませんといて》
                           ―古歌集―(巻七・一二五二)
 何で通うか つまらん児やに
 放っといてん か 好みやわしの)

楽浪ささなみの 志賀津しがつ海人あまは れなしに かづきはなそ 波立たずとも
志賀しがの津の 海人あまよこのわし らん時 もぐりするなよ 波静かでも》
                           ―古歌集―(巻七・一二五三)
大船おほぶねに かぢしもあらなむ 君なしに かづきせめやも 波立たずとも
大船おおふねに 梶付けてんか そしたなら もぐりせんがな 波静かでも》
                           ―古歌集―(巻七・一二五四)
(わしらん時 勝手をするな
  頼りなるなら 勝手をせんわ)

【物に寄せて思いをべる】
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山に 照る月は 満ち欠けしけり 人のつねなき
泊瀬はつせ山 照る月ちる けもする 人かてそやで 明日あしたは知れん》
                           ―古歌集―(巻七・一二七〇)

 その場所行って感じて詠う(旋頭歌)】
百磯城ももしきの 大宮人おほみやひとの 踏みしあとところ
沖つ波 寄らずありせば せずあらましを

《ここの浜 昔宮人みやひと 行幸のあとや 
 沖波おきなみが 寄せなんだなら のこっとったに》
                           ―古歌集―(巻七・一二六七)

 旋頭歌】
春日なる 御笠みかさの山に 月の舟
風流士みやびをの 飲む酒杯さかづきに 影に見えつつ
《春日ある 三笠の山に 月の船
 風流人ふうりゅうの 酒杯さかずき中に 影浮かばして》
                          ―作者未詳―(巻七・一二九五)




――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(19)神を斎(いは)ひて

2012年08月24日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月24日】

大海おほうみの 波はかしこし しかれども 神をいはひて 舟出ふなでせばいかに


海に浮かべば 船下ふねした地獄
風が吹き来て 波こなれば
かぶ飛沫しぶきに こわさがつの
まして夜船よぶねは 命が縮む

大海おほうみの 波はかしこし しかれども 神をいはひて 舟出ふなでせばいかに
大海おおうみの 波おそろしが 神さんを まつり船そ なんとかなるで》
                            ―古集―(巻七・一二三二)
あさりする 海人あま娘子をとめらが 袖通り 濡れにしころも せど乾かず
《こらまるで 海人あま娘子おとめやな ずぶ濡れで してもふくは 乾かへんがな》
                            ―古集―(巻七・一一八六)
けて なかかたに おほほしく 呼びし舟人ふなびと てにけむかも
よるけて 夜中よなかこうに かすか声 さけんでた船人ひと とまれたやろか》
                            ―古集―(巻七・一二二五)
大葉山おほばやま 霞たなびき さけて 我が舟てむ とまり知らずも
大葉おおばやま 霞なびいて よるけた わしのこの船 何処どことまるやろ》
                            ―古集―(巻七・一二二四)
わたの底 沖漕ぐ舟を に寄せむ 風も吹かぬか 波立てずして
《沖の方 漕いでる船を 岸のに 寄せる風吹け 波立たさんと》
                            ―古集―(巻七・一二二三)
波高し いかにかぢ取り 水鳥の 浮寝うきねやすべき なほや漕ぐべき
《波えろう こなったけど 船頭せんどうよ 浮寝うきねするんか 漕ぎ進めんか》
                            ―古集―(巻七・一二三五)
鳥じもの 海に浮きて 沖つ波 さわくを聞けば あまた悲しも
《鳥みたい 海かんでて 沖波おきなみの 荒れんの聞いて おそろしなった》
                            ―古集―(巻七・一一八四)




――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(18)海人(あま)か刈りけむ

2012年08月21日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月21日】

あさりすと 磯に我が見し 名告藻なのりそを いづれの島の 海人あまか刈りけむ



夜明け 鳴く鶴 思いを誘う
 待つ妻の 土産に貝を
名告藻なのりそ草に 恋忘れ貝
 かにつけて 思うは連れか

あさりすと 磯にたづ 明けされば 浜風さむみ おのづま呼ぶも
えさりに 磯る鶴が 夜明けどき 浜風かぜ寒いんか れ呼んどるで》
                            ―古集―(巻七・一一九八)
つともがと はば取らせむ かひひりふ 我れを濡らすな 沖つ白波
土産みやげはと うたらろと 貝ひろう わし濡らしなや 沖の白波》
                            ―古集―(巻七・一一九六)
磯のうへに 爪木つまき折りき がためと 我がかづし 沖つ白玉
《この白玉たまは 磯で火ぃき お前にと このわしもぐり ったもんやで》
                            ―古集―(巻七・一二〇三)
あさりすと 磯に我が見し 名告藻なのりそを いづれの島の 海人あまか刈りけむ
ろ思い 磯で見つけた 名告藻なのりそを 何処島どこ海人あまめが りよったんや》
                            ―古集―(巻七・一一六七)
手に取るが からに忘ると 海人あまひし こひわすがひ ことにしありけり
《手にしたら 効き目すぐやと 海人あま言うた 恋忘れ貝 名前ばっかり》
                            ―古集―(巻七・一一九七)
沖つかぢ 漸々やくやくしぶを 見まくり 我がする里の かくらくしも
忙楫かじゆるみ 落ち着き見たら しことに 見たい里の 隠れて仕舞てる》
                            ―古集―(巻七・一二〇五)
沖つ波 巻き持ち 寄せとも 君にまされる 玉寄せめやも
沖波おきなみが 岸の巻いて 寄せるが あんたみたいな 良男えおとこんわ》
                            ―古集―(巻七・一二〇六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(17)磯もと揺(ゆす)り

2012年08月17日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月17日】

大海おほうみの 磯もとゆすり 立つ波の 寄せむと思へる 浜のきよけく




大和官人かんじん 海なし人は
見ての驚き 想像おもいを超える
寄せる海鳴り 白砂しらすな浜辺
釣りする海人あまに 異郷の情緒おもい

大海おほうみの 水底みなそことよみ 立つ波の 寄らむと思へる 磯のさやけさ
大海おおうみの 水底そことどろかせ 寄せる波 磯のきよいん あこがんや》
                            ―古集―(巻七・一二〇一)
大海おほうみの 磯もとゆすり 立つ波の 寄せむと思へる 浜のきよけく
大海おおうみの 磯くだけよと 寄せる波 浜清いんに あこがんや》
                            ―古集―(巻七・一二三九)
浜清み 磯に我がれば 見む人は 海人あまとか見らむ 釣りもせなくに
《この清い 浜の磯る わしのこと 漁師思うか 釣りしとらんに》
                            ―古集―(巻七・一二〇四)
しほ早み 磯廻いそみれば かづきする 海人あまとや見らむ 旅行く我れを
《潮よて 磯で船出を待つ 旅やけど もぐりの海人あまに 見られんちゃうか》
                            ―古集―(巻七・一二三四)
しずけくも 岸には波は 寄せけるか これの通し 聞きつつれば
壁越かべごしに 聞いとったなら 岸に波 えろう静かに 寄せてるようや》
                            ―古集―(巻七・一二三七)
今日けふもかも 沖つ玉藻は 白波の 八重やへ折るがうへに 乱れてあるらむ
《今日の日も 沖の玉藻は 白波の かさなるあたり 靡揺れとんやろか》
                            ―古集―(巻七・一一六八)
我が舟は 沖ゆなさかり むかぶね かた待ちがてり 浦ゆ漕ぎはむ
《この船は 沖へ漕ぐなよ 浦で待つ 迎えの船に わならんので》
                            ―古集―(巻七・一二〇〇)




――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(16)由良(ゆら)の岬に

2012年08月14日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月14日】

妹がため 玉をひりふと 紀伊の国の 由良ゆらの岬に この日暮らしつ




行幸みゆきお供か わたくし旅か
紀ノ川下り 雑賀さいかでて
玉津島たまつ訪ねて 黒牛くろうしがた
巡り巡れ ど まだ飽き足りん

 南海道 紀伊(妹背山~由良)藤原卿作】
麻衣あさごろも 着ればなつかし 紀の国の 妹背いもせの山に あさ我妹わぎも
《麻のふく 着たら思うで 麻のたね 妹背いもせの山で いてたあの児》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一一九五)
紀の国の 雑賀さひかの浦に で見れば 海人あま燈火ともしび 波のゆ見ゆ
雑賀さいか浦 出て沖見ると 海人あまの灯が 波間なみまちらちら れてん見える》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一一九四)
玉津島たまつしま 見れどもかず いかにして つつみ持ち行かむ 見ぬ人のため
《見て見ても 玉津島たまつかへん どしたなら 持って帰れる ここん人に》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一二二二)
若の浦に 白波立ちて 沖つ風 寒きゆふへは 大和やまとし思ほゆ
《和歌の浦 白波しらなみ立って 沖風おきかぜが さむ吹く晩は 大和やまと恋しで》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一二一九)
黒牛くろうしの海 くれなゐにほふ 百磯城ももしきの 大宮人おほみやひとし あさりすらしも
黒牛くろうしの 海あこなった 大宮の 女官おつれ浜辺で 釣り真似してる》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一二一八)
妹がため 玉をひりふと 紀伊の国の 由良ゆらの岬に この日暮らしつ
《お前る 玉をひろおと 紀の国の 由良ゆらの岬で 丸一日や》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一二二〇)
我が舟の かぢはな引きそ 大和やまとより 恋ひし心 いまだかなくに
大和やまとから 来たい来たいで 来たのんや まだらん かじまわしなや》
                         ―藤原房前ふじわらのふささき―(巻七・一二二一)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(15)糸鹿(いとか)の山の

2012年08月10日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月10日】

足代あて過ぎて 糸鹿いとかの山の さくらばな 散らずもあらなむ 帰りるまで



 なし国の 大和の人は
ひらけ明るい 紀伊きのくに海に
あこがれ来ては 嬉々ききして遊ぶ
めぐって 南紀に出れば
黒潮おどり 岩礁いわ噛む波頭はとう

 南海道 紀伊(紀ノ川河口周辺)】
藻刈もかり舟 沖漕ぎらし 妹が島 形見かたみの浦に たづかける見ゆ
いもしまの 形見かたみの浦で 鶴飛ぶよ 沖でりの 船漕いでんや》
                            ―古集―(巻七・一一九九)
玉津島たまつしま よく見ていませ 青丹あをによし 奈良なる人の 待ちはばいかに
《景色え 玉津の島を う見とき 奈良で待つ人 聞くかも知れん》
                            ―古集―(巻七・一二一五)
玉津島たまつしま 見てしよけくも 我れはなし 都に行きて 恋ひまく思へば
《玉津島 景色見てても うれしない なら帰ったら 焦がれるよって》
                            ―古集―(巻七・一二一七)
名草山なぐさやま ことにしありけり が恋ふる 千重ちへ一重ひとへも なぐさめなくに
名草なぐさ山 名ぁばっかしや うちの恋 千の一つも なぐさ出来できん》
                            ―古集―(巻七・一二一三)

 南海道 紀伊(有田川河口近辺)】
安太あだへ行く 小為手をすての山の 真木まきの葉も 久しく見ねば 苔しにけり
安太あだへ行く 途中小為手おすての 山の樹々きぎ ご見んうちに 苔してるで》
                            ―古集―(巻七・一二一四)
足代あて過ぎて 糸鹿いとかの山の さくらばな 散らずもあらなむ 帰りるまで
足代あてとおり 糸我いとが峠の 桜花はな綺麗きれえ 散らんといてや わし帰るまで》
                            ―古集―(巻七・一二一二)
潮満たば いかにせむとか 海神わたつみの 神が手渡る 海人あま娘子をとめども
《潮ちて 来たらどすんや 海人あま娘子おとめ そんなあぶない 岩礁いわばって》
                            ―古集―(巻七・一二一六)

 南海道 紀伊(南紀)】
風早かざはやの 三穂みほ浦廻うらみを 漕ぐ舟の 舟人ふなびとさわく 波立つらしも
《風早い 三穂みほうらとおる 船の上 みなあわてとる 波たんやで》
                            ―古集―(巻七・一二二八)
磯に立ち 沖辺おきへを見れば 藻刈めかぶね 海人あま漕ぎらし 鴨かける見ゆ
《磯立って 沖の見たら 鴨ぶよ りの漁師 船したらし》
                            ―古集―(巻七・一二二七)
荒磯ありそゆも まして思へや 玉の浦 離れ小島こしまの いめにし見ゆる
荒磯ありそより え思うんか 玉浦の 離れ小島が 夢出てんは》
                            ―古集―(巻七・一二〇二)
三輪みわの崎 荒磯ありそも見えず 波立ちぬ 何処いづくゆ行かむ き道はなしに
三輪みわの崎 磯見えんほど 波立つよ どない行くんや みちいで》
                            ―古集―(巻七・一二二六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(14)妹と背の山

2012年08月07日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月7日】

我妹子わぎもこに が恋ひ行けば ともしくも 並びるかも 妹と背の山




大和 別れて 紀伊へと入る
真土の山は 紀和国境くにざかい 
川沿い道を 辿たどれば見える
妹と背の山 仲え姿

 南海道 紀伊(紀ノ川沿い)】
妹がかど 出入いでいりの川の 瀬を早み つまづく 家思ふらしも
いりの川 瀬ぇはよて馬 つまづいた 案じとんかな このわし家で》
                            ―古集―(巻七・一一九一)
白栲しろたへに にほふ真土まつちの 山川やまがはに が馬なづむ いへふらしも
真土まつち山 馬山川やまかわで もたつくで 家でこのわし 案じとんのや》
                            ―古集―(巻七・一一九二)
背の山に ただに向へる 妹の山 ことゆるせやも 打橋うちはし渡す
《背の山の 川の向かいの 妹の山 求婚さそい受諾けたか 橋渡しとる》
                            ―古集―(巻七・一一九三)
人ならば 母が愛子まなごぞ あさもよし 紀の川のの 妹と背の山
《人でや 母が可愛いがる 子供やで 紀の川沿いの 妹山背山》
                            ―古集―(巻七・一二〇九)
我妹子わぎもこに が恋ひ行けば ともしくも 並びるかも 妹と背の山
うらやまし 妹と背の山 並んどる お前恋しと 旅空たびぞら来たら》
                            ―古集―(巻七・一二一〇)
妹にひ が越え行けば 背の山の 妹に恋ひずて あるがともしさ
《妹と背が 仲並んで うらやまし お前恋しと 山越え来たら》
                            ―古集―(巻七・一二〇八)
妹があたり 今ぞ我が行く 目のみだに 我れに見えこそ こと問はずとも
《妹山の そばとおるんで せめてもに 幻姿すがた見せてや 声せんかても》
                            ―古集―(巻七・一二一一)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(13)鞆(とも)の浦廻(うらみ)に

2012年08月03日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年8月3日】

海人あま小舟をぶね 帆かも張れると 見るまでに とも浦廻うらみに 波立てり見ゆ



 をかき分け 西へと進む
ともうら景色 見事の極み
やがて 見え来る あの山影は
行き着きどこの 筑紫の峰か

 山陽道 備中・備後】
網引あびきする 海人あまとか見らむ あくの浦の 清き荒磯ありそを 見にし我れを
《網を引く 漁師思うか 飽浦あくうらの 清い荒磯ありそを 見に来たわしを》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一一八七)
娘子をとめらが はたうへを 真櫛まくしもち 掻上かか栲島たくしま 波のゆ見ゆ
《見えて来た 波のあいだに 栲島たくしまや 機織はたおくしで 糸くたくの》
                             ―古集―(巻七・一二三三)
                                  (綰く=束ねる)
海人あま小舟をぶね 帆かも張れると 見るまでに とも浦廻うらみに 波立てり見ゆ
《帆を張った 小舟多数よける みたいやで ともうらあたり 白波なみ立ってるん》
                             ―古集―(巻七・一一八二)
さきくて またかへり見む 大夫ますらをの 手に巻き持てる とも浦廻うらみ
《もし無事に 帰りれたら 見よ思う このともうら このえ景色》
                             ―古集―(巻七・一一八三)

 西海道 豊後】
娘子をとめらが はなりの髪を 由布ゆふの山 雲なたなびき 家のあたり見む
娘子おとめらが おがみう 由布山ゆふやまに 雲棚引たなびきな 家見たいんや》
                             ―古集―(巻七・一二四四)

 西海道 筑前】
天霧あまぎらひ 日方ひかた吹くらし 水茎みづくきの をかの港に 波立ちわたる
《一面に 曇って日方ひかた 吹くらしい おかの港で 波立っとるで》
                             ―古集―(巻七・一二三一)
                                (日方=日の方から吹く風=東風)
ちはやぶる かねの岬を 過ぎぬとも 我れは忘れじ 志賀しか皇神すめかみ
難所なんしょどこ かねの岬は 過ぎたけど 志賀しか神さんの 加護忘れんで》
                             ―古集―(巻七・一二三〇)
志賀しか海人あまの 釣舟の綱 へずして 心に思ひて でて来にけり
志賀しか海人あまの ふねづな切れん 別れしな れへんと おもて来たんや》
                             ―古集―(巻七・一二四五)
志賀しか海人あまの 塩焼くけぶり 風をいたみ 立ちはのぼらず 山に棚引く
志賀しか海人あまが 塩焼く煙 風よて うえのぼらんと 山のなびく》
                             ―古集―(巻七・一二四六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(12)明石の水門(みと)に

2012年07月31日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月31日】

我が舟は 明石の水門みとに 漕ぎてむ 沖へなさかり さけにけり



山陽みちは 西へと延びる
遥か筑紫の 遠御門とおみかどまで
難波なにわ出た船 を追いかけて
辿たどふなみち 見聞きの景色

 山陽道 摂津・播磨・備前】
朝霞あさがすみ まず棚引く 竜田山 舟出ふなでせむ日は れ恋ひむかも
《朝霞 常時いつも棚引く 竜田山 名残なごりしいで 船出ふなでの日には》
                            ―古集―(巻七・一一八一)
朝凪に かぢ漕ぎて 見つつし 御津みつの松原 なみしに見ゆ
朝凪なぎ漕出て 眺めながらに 来た御津みつの 松原波間なみま 隠れて仕舞しまう》
                            ―古集―(巻七・一一八五)
大海おほうみに あらしな吹きそ しなが鳥 猪名ゐなの港に 舟つるまで
海原うなばらに 嵐来るなよ みなと せめてこの船 そこ着くまでは》
                            ―古集―(巻七・一一八九)
いにしへに ありけむ人の 求めつつ きぬりけむ 真野まのはりはら
《ここの原 昔の人も 来て採って ふく摺染めた云う 真野まの榛原はりはらや》
                            ―古集―(巻七・一一六六)
印南野いなみのは 行き過ぎぬらし 天伝あまづたふ 日笠ひかさの浦に 波立てり見ゆ
印南野いなみのは 通り過ぎたで ほらあそこ 日笠ひかさ浦やで 波立ってるん》
                            ―古集―(巻七・一一七八)
家にして れは恋ひむな 印南野いなみのの 浅茅あさぢうへに 照りし月夜つくよ
《戻ったら 思い出すやろ 印南野いなみのの ちがやに照った あのえ月夜》
                            ―古集―(巻七・一一七九)
荒磯ありそ越す 波をかしこみ 淡路あはぢ島 見ずか過ぎなむ 幾許ここだ近きを
荒磯あらいそを 越す波こわて 淡路あわじ島 見んとくんか すぐそばやのに》
                            ―古集―(巻七・一一八〇)
粟島あはしまに 漕ぎ渡らむと 思へども 明石の門波となみ いまださわけり
粟島あわしまに 渡りたいなと 思うけど 明石海峡 まだ波高い》
                            ―古集―(巻七・一二〇七)
我が舟は 明石の水門みとに 漕ぎてむ 沖へなさかり さけにけり
《この船は 明石港に とまりする 沖へりなや もう夜更よふけやで》
                            ―古集―(巻七・一二二九)
山越えて 遠津とほつの浜の 岩つつじ 我が来るまでに ふふみてあり待て
遠津浜とおつはま そこに咲いてる 岩つつじ わし帰るまで つぼみ付けとき》
                            ―古集―(巻七・一一八八)
てて かし振り立てて いほりせむ 名児江なごえ浜辺はまへ 過ぎかてぬかも
《船めて 杭打ちもやい とまろやな 名児江なごえ浜辺の 素通すどおしで》
                            ―古集―(巻七・一一九〇)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(11)箱根飛び越え

2012年07月27日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月27日】

足柄あしがらの 箱根飛び越え 行くたづの ともしき見れば 大和やまとし思ほゆ



近江 若狭は 畿内に近い
気楽気持が ただよい見える
東山道とうさんひがし さすがに異郷いきょう
見聞き のすべて 珍し見える

 東山道 近江】
近江あふみの海 港は八十やそち 何処いづくにか 君が舟て 草結びけむ
近江おうみ海 港多数よけある その何処どこに あんた船め 宿してんやろ》
                            ―古集―(巻七・一一六九)
楽浪ささなみの 連庫山なみくらやまに 雲れば 雨ぞ降るちふ 帰り我が背
連庫なみくらの 山くも出たら 雨やう 帰っといでや なぁお前さん》
                            ―古集―(巻七・一一七〇)
大御船おほみふね ててさもらふ 高島の 三尾みをの勝野の なぎさし思ほゆ
《見えてるん 大君おおきみふねの 風待ちの 三尾の勝野の あのなぎさやで》
                            ―古集―(巻七・一一七一)
                           (大君が行幸時に雲の具合で船待ちをした三尾)
何処いづくにか 舟乗りしけむ 高島の 香取かとりの浦ゆ 漕ぎる舟
《あの船は 何処どこの港を 出て来たか 香取かとりの浦を とおり漕ぐんは》
                            ―古集―(巻七・一一七二)
高島の 安曇あど白波は さわけども 我れは家思ふ いほり悲しみ
安曇川あどがわの 白波なみ騒がしが 耳そぞろ わし家恋し 旅さみしいて》
                            ―古集―(巻七・一二三八)

 北陸道 若狭】
若狭わかさなる 三方みかたの海の 浜きよみ い行きかへらひ 見れど飽かぬかも
若狭わかさくに 三方みかたの海は 浜清い 行きつ戻りつ 見きん景色》
                            ―古集―(巻七・一一七七)

 東山道 飛騨】
飛騨ひだ人の 真木まき流すといふ 丹生にふの川 ことかよへど 舟ぞ通はぬ
飛騨人ひだひとが 流す丹生川にうは 瀬ぇはげし 声届くけど 船かよわんで》
                            ―古集―(巻七・一一七三)

 東海道(東) 常陸・下総・相模】
あられ降り 鹿島かしまの崎を 波高み 過ぎてや行かむ 恋しきものを
鹿島かしま崎 波高いから 素通すどおりや 寄って行きたい おもとったのに》
                            ―古集―(巻七・一一七四)
なつ引く 海上うなかみがたの 沖つに 鳥はすだけど 君はおともせず
海上潟うなかみの 沖の砂州さすには 鳥つどい 五月蝿うるさいが あんたおとし》
                            ―古集―(巻七・一一七六)
足柄あしがらの 箱根飛び越え 行くたづの ともしき見れば 大和やまとし思ほゆ
足柄あしがらの 箱根を越えて 鶴行くで 大和こてる わしうらやまし》
                            ―古集―(巻七・一一七五)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(10)己(おの)が妻呼ぶ

2012年07月24日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月24日】

ゆふなぎに あさりするたづ しほ満てば 沖波高み おのが妻呼ぶ




見事景色に いやされしても
旅はつらいし 命がかる
 妻離れ 夜風が寒い
鳴くかりつるに わびしさ募る

いへさかり 旅にしあれば 秋風の 寒きゆふへに 雁鳴き渡る
《家はなれ 旅空たびぞら行くと 秋の風 さむ吹くよいに 雁鳴いてくで》
                            ―古集―(巻七・一一六一)

古代 社会の 行政区画
畿内七道しちどう 律令決める
七道これぞ 太平洋たいへよ沿いに 
西さいなんとうの 海道うみみち区画 内海うちうみ行くは 山陽みち
日本海沿い 山陰みちに 北陸みちが 北へと続く
山中辿たどる 東山道とうさんみちは 近江西端にしはし 北陸奥むつまでよ

【畿内 大和近辺きんぺん
玉櫛笥たまくしげ みもろと山を 行きしかば 面白くして いにしへ思ほゆ
《三輪山の ふもとあたりを 辿たどったら 太古たいこ昔が しみじみせまる》
                            ―古集―(巻七・一二四〇)
ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下やましたつゆに 濡れにけるかも
黒髪山くろかみを お前しのんで 朝越えて 山すそつゆに 濡れて仕舞しもたで》
                            ―古集―(巻七・一二四一)
あしひきの 山行きらし 宿借らば 妹立ち待ちて 宿やど貸さむかも
《山道を 行き暮れて仕舞た 宿さがそ え児待ってて 宿貸さへんやろか》
                            ―古集―(巻七・一二四二)
見渡せば 近き里廻さとみを たもとほり 今ぞ我がる 領巾ひれ振りし野に
《気ィいて すぐやおもたに 中々なかなかで やっと着いたで 領巾ひれ振った野に》
                            ―古集―(巻七・一二四三)
                            (出掛け別れにあの児が領巾振った野に)

 東海道(西) 伊勢・尾張】
円方まとかたの 港の洲鳥すどり 波立てや 妻呼びたてて に近づくも
円方まとかたの なぎさる鳥 波立って れ呼び鳴いて 岸寄って来る》
                            ―古集―(巻七・一一六二)
年魚市潟あゆちがた しほにけらし 知多ちたの浦に 朝漕ぐ舟も 沖に寄る見ゆ
年魚市潟あゆちがた 潮引いてくか 知多ちた浦に 朝に漕ぐ船 沖寄る見える》
                            ―古集―(巻七・一一六三)
しほれば ともに潟にで 鳴くたづの 声とほざかる 磯廻いそみすらしも
《潮引けば 干潟ひがた群れ鳴く 鶴の声 とおなってくで こ磯行くか》
                            ―古集―(巻七・一一六四)
ゆふなぎに あさりするたづ しほ満てば 沖波高み おのが妻呼ぶ
夕凪ゆうなぎで えさ採る鶴は 潮ちて 沖波こて れ呼び鳴くよ》
                            ―古集―(巻七・一一六五)
いめのみに ぎて見えつつ 小竹しの島の 磯越す波の しくしく思ほゆ
《毎晩に 夢出るあんた 恋しいで しのしま波の しくしくしくと》
                            ―古集―(巻七・一二三六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(09)遠里(とほさと)小野の

2012年07月20日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月20日】

住吉すみのえの とほさと小野をのの はりもち れるころもの 盛り過ぎゆく



住吉すみのえ浜は 沖波おきなみ寄せて
浜はきよいし 波音さや
名児なご吾児あご海は 干潟が続く
玉藻刈ろうや 白玉たま拾おうや

 摂津にして作れる歌(二)】
住吉すみのえの 沖つ白波 風吹けば 来寄きよする浜を 見れば清しも
住吉すみのえの 沖立つ白波なみは 風吹くと 岸に寄せ来て 浜清々すがすがし》
                            ―古集―(巻七・一一五八)
住吉すみのえの 岸の松が根 うちさらし 寄せ来る波の 音のさやけさ
住吉すみのえの 浜ある松の 根ぇ洗ろて 寄せてくる波 音すずやかや》
                            ―古集―(巻七・一一五九)
住吉すみのえの 岸に家もが 沖にに 寄する白波 見つつしのはむ
住吉すみのえの 岸に家し 沖立って 岸寄せる波 見て楽しむに》
                            ―古集―(巻七・一一五〇)
大伴の 御津みつ浜辺はまへを うちさらし 寄せる波の 行方ゆくへ知らずも
《寄せてくる 波何処どこって 仕舞しまうんか 御津みつの浜辺の 打ち寄せ波は》
                            ―古集―(巻七・一一五一)
かぢの音ぞ ほのかにすなる 海人あま娘子をとめ 沖つ藻刈もかりに 舟出ふなですらしも
かじの音 かすか聞こえる 漁師あま娘子おとめ 沖の藻刈りに ふねすらしな》
                            ―古集―(巻七・一一五二)
名児なごの海の 朝明あさけのなごり 今日けふもかも 磯の浦廻うらみに 乱れてあるらむ
名児なご海で 朝の見栄みばえの 潮だまり 浦のあちこち 今日もあるかな》
                            ―古集―(巻七・一一五五)
住吉すみのえの 名児なご浜辺はまへに 馬立てて 玉ひりひしく つね忘らえず
住吉すみのえの 名児なごの浜辺で 馬めて 玉ろたんを 今も思うで》
                            ―古集―(巻七・一一五三)
時つ風 吹かまく知らず 吾児あごの海の 朝明あさけしほに 玉藻刈りてな
《潮風が 吹く知れんけど 吾児あご海で 夜明け干潟ひがたで 玉藻を刈ろや》
                            ―古集―(巻七・一一五七)
雨は降る 仮廬かりいほは作る いつの間に 吾児あご潮干しほひに 玉はひりはむ
《雨降って 小屋作ってて 行けんがな 吾児あごの引き潮 玉拾いに》
                            ―古集―(巻七・一一五四)
住吉すみのえの とほさと小野をのの はりもち れるころもの 盛り過ぎゆく
住吉すみのえの とおさとの野の はんの木で 摺染めたこのふく 色せてくで》
                            ―古集―(巻七・一一五六)
難波なにはがた 潮干しほひに立ちて 見渡せば 淡路あはぢの島に たづ渡る見ゆ
難波なにわ浜 干潟ひがたに立って 見渡すと 淡路あわじの島へ 鶴飛んでくで》
                            ―古集―(巻七・一一六〇)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(08)垂水(たるみ)の水を

2012年07月17日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月17日】

いのちをし さきくよけむと 石走いはばしる 垂水たるみの水を むすびて飲みつ


瀬戸内 兵庫 東部の歌と
大阪 湾の 海辺の歌と
名高い埴生はにゅう 染料土せんりょつち
拾う て帰ろ 恋忘れ貝

 摂津にして作れる歌(一)】
しなが鳥 猪名野ゐなのれば  有馬山ありまやま 夕霧立ちぬ 宿やどりはなくて
の野を はるばる来たが 有馬山ありまから 夕霧きり出て来たに 宿るとこない》
                            ―古集―(巻七・一一四〇)
武庫川むこがはの 水脈みをはやみと 赤駒あかごまの 足掻あがたぎちに 濡れにけるかも
《武庫の川 流れはようて 馬足掻あがき 飛沫しぶきが飛んで わし濡れて仕舞た》
                            ―古集―(巻七・一一四一)
いのちをし さきくよけむと 石走いはばしる 垂水たるみの水を むすびて飲みつ
《この命 ごとねごうて 垂水たるみ神水みず 手ぇにすくうて わし飲んだんや》
                            ―古集―(巻七・一一四二)
さ夜更けて 堀江漕ぐなる 松浦舟まつらぶね かぢおと高し 水脈みを早みかも
よるけて 堀江漕ぎ行く 松浦舟まつらぶね かじせわし 潮早いんや》
                            ―古集―(巻七・一一四三)
くやしくも 満ちぬる潮か 住吉すみのえの 岸の浦廻うらみゆ 行かましものを
《悔しいな 潮ちてきた 住吉すみのえの 浦をつとうて 行きたかったに》
                            ―古集―(巻七・一一四四)
妹がため 貝をひりふと 茅渟ちぬの海に 濡れにし袖は せど乾かず
《お前にと 貝ひろおして 茅渟ちぬ海で 袖濡らしたで かわかん程に》
                            ―古集―(巻七・一一四五)
めづらしき 人を我家わぎへに 住吉すみのえの 岸の埴生はにふを 見むよしもがも
いとを うち住ましたい 住吉すみのえの 岸の埴生はにゅうを 見るすべしな》
                            ―古集―(巻七・一一四六)
めて 今日けふ我が見つる 住吉すみのえの 岸の埴生はにふを 万代よろづよに見む
《馬つらね わしが今日見た 住吉すみのえの 岸の埴生はにゅうを またまた見たい》
                            ―古集―(巻七・一一四八)
いとまあらば ひりひに行かむ 住吉すみのえの 岸に寄るといふ 恋忘れ貝
ぁあると ひろい行きたい 住吉すみのえの 岸に寄るう 恋忘れ貝》
                            ―古集―(巻七・一一四七)
住吉すみのえに 行くといふ道に 昨日きのふ見し 恋忘れ貝 ことにしありけり
住吉すみのえに つうじる道で 昨日見た 恋忘れ貝 名前倒れや》
                            ―古集―(巻七・一一四九)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(07)舟渡せをと

2012年07月13日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月13日】

宇治川うぢがはを 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし かぢの音もせず



以下のりょうた しゅうが載せる
奈良朝初期に さかのぼる歌
吉野うたうは 山川誉める
山背やましろ歌は 宇治川風情

 吉野にして作れる歌】
かむさぶる 岩根いはねこごしき み吉野の 水分山みくまりやまを 見れば悲しもっ
神々こうごしい 岩のひしめく 水分みくまりの 山を見てたら 胸せまや》
                            ―古集―(巻七・一一三〇)
皆人みなひとの ふるみ吉野 今日けふ見れば うべも恋ひけり 山川清み
《みんなみな 見たがる吉野 今日見たで 山川よて 成程なるほど思た》
                            ―古集―(巻七・一一三一)
いめのわだ ことにしありけり うつつにも 見て来るものを 思ひし思へば
《夢のわだ 夢とちがうで 目の前や 見とてたまらん おもてたわだや》
                            ―古集―(巻七・一一三二)
皇祖神すめろきの 神の宮人みやひと ところづら いやとこしくに 我れかへり見む
代々だいだいの つかえの人も 見た吉野 わしらまたまた 見によ吉野》
                            ―古集―(巻七・一一三三)
                            (ところづら=やまいもの蔓→とこしく)
吉野川 いはほかへと 常盤ときはなす 我れはかよはむ 万代よろづよまでに
《吉野川 岩とかしわは 永久とこしえや わしも永久とこしえ かようできっと》
                            ―古集―(巻七・一一三四)

山背やましろにして作れる歌】
宇治川うぢがはは 淀瀬よどせなからし 網代あじろひと 舟呼ばふ声 をちこち聞こゆ
《宇治川は 渡る淀瀬ないで 網代あじろ海人あま 呼びわす声 あちこちしてる》
                            ―古集―(巻七・一一三五)
宇治川うぢがはに ふる菅藻すがもを 川はやみ らずにけり つとにせましを
《宇治川の 流れはようて える菅藻ぉ 取れんかったで 土産みやげ思たに》
                            ―古集―(巻七・一一三六)
宇治人うぢひとの たとへの網代あじろ 我れならば 今は寄らまし 木屑こつみずとも
《物引寄せる 網代あじろ浮かぶで 宇治聞くと 寄る前 うち寄るからね》
                            ―古集―(巻七・一一三七)
                      (網代=女を引き寄せる男に譬えた 木屑=詰まらん女)
宇治川うぢがはを 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし かぢの音もせず
《宇治川を 渡してくれと 叫んでも 聞こえへんのか 楫音かじおとせんで》
                            ―古集―(巻七・一一三八)
ちはやひと 宇治うぢ川波を 清みかも 旅行く人の 立ちかてにする
《宇治の川 波清いんで 旅の人 くんしいて 川ながめてる》
                            ―古集―(巻七・一一三九)
                     (ちはや人=猛々しく勢いの激しい人→流れの激しい宇治川?)




――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(06)いまだ経なくに

2012年07月10日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月10日】

年月としつきも いまだなくに 明日香川 瀬々せぜゆ渡しし 石橋もなし



自然風物 歌中うたなか
人の生活くらしの 関わり歌が
明日香故郷ふるさと 偲びの歌や
湧水わきみず巡る 暮らしの場面
琴にたくした 妻偲び歌

清き瀬に 千鳥妻呼び 山のに 霞立つらむ 神奈備かむなびの里
《この季節 千鳥れ呼び 山間やまあいは 霧立つやろか 神奈備かんなび里は》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二五)

年月としつきも いまだなくに 明日香川 瀬々せぜゆ渡しし 石橋もなし
《そんなにも っとらんのに 明日香川 瀬渡し石の 橋もう無いわ》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二六)

落ちたぎつ 走井はしりゐ水の 清くあれば 置きては我れは 行きかてぬかも
ほとばしる 流れ湧き水 きよい わしこれ置いて くこと出来ん》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二七)

馬酔木あしびなす 栄えし君が 掘りし井の 石井いしゐの水は 飲めど飽かぬかも
馬酔木あしび花 羽振はぶりのあんた 掘った井戸 湧き出る水は 美味おいしいで》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二八)

琴取れば 嘆き先立つ けだしくも 琴の下樋したびに 妻やこもれる
《琴取ると 嘆きさき来る もしかして 琴のの中 お前るんか》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二九)
                                (妻を亡くした男の歌か)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ