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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

古今相聞往来(下)編(19)朝戸開くれば

2013年09月03日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年9月3日】

我妹子わぎもこに 恋ひすべながり 胸をあつみ あさくれば 見ゆる霧かも



深い恋焦こがれは 逃げ場がうて
男のくせに 深刻しんこくしき
がれ何時いつまで 死ぬ思いやで
恥や外聞がいぶん もうらん
  
忘れ草 我がひもに付く 時となく 思ひ渡れば けりともなし
《忘れ草 わし身に付けた ずううっと がれ続けて 死ぬいしてて》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六〇)
   
海人あま娘子をとめ かづるといふ 忘れ貝 世にも忘れじ 妹が姿は
《恋忘れ 出来るう貝 あるらしが 忘れられんで あの児の姿》【貝に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八四)
   
思ひでて すべなき時は 天雲あまくもの 奥処おくかも知らず 恋ひつつぞ
《目ぇ浮かび どう仕様しょもないで このまんま がれ続くん 何時いつまでなんや》【雲に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三〇)
   
我妹子わぎもこに 恋ひすべながり 胸をあつみ あさくれば 見ゆる霧かも
《朝の戸を 開けたら霧や れん あの児恋しの ふさがり胸の》【霧に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三四)
                           (一晩中の嘆きが霧になった)
  
剣大刀つるぎたち 名のしけくも 我れはなし このころのの 恋のしげきに
《この恋は えろはげしで もうわしは 恥外聞がいぶんも うてもえわ》【大刀に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八四)
                          (大刀の刃=「ナ」という→名)
  
思ひづる 時はすべなみ 佐保さほやまに 立つ雨霧あまぎりの ぬべく思ほゆ
《この目ぇに 浮かんだ最後 ども出来ん 佐保立つ霧や 消え入りやで》【霧に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三六)
   
ゆふへ置きて あしたぬる 白露の ぬべき恋も れはするかも
《日暮れ置き 朝来た消える 白露つゆみたい 身ィ消えるな 恋するかわし》【露霜に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三九)
   
のちつひに 妹は逢はむと 朝露の 命はけり 恋はしげけど
後々あとあとに あの児うため この命 生き続けるで がれろても》【露霜に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇四〇)

古今相聞往来(下)編(18)斐太(ひだ)の細江の

2013年08月27日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年8月27日】

白真弓しらまゆみ 斐太ひだ細江ほそえの すがとりの 妹に恋ふれか かねつる




浅い恋焦こがれは 救いがあるよ
恋し寝付けん 伝えてがれ
き出るは あのひと名前
忘れ草にも 愚痴ぐちて嘆く
  
こひごろも 着奈良きならの山に 鳴く鳥の なく時なし が恋ふらくは
奈良山ならやまで ひっきりなしの 鳥の声 なしまんで わしがれんは》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八八)
  
白真弓しらまゆみ 斐太ひだ細江ほそえの すがとりの 妹に恋ふれか かねつる
つがいなか 鴛鴦おしどりを 見とったら お前恋して わし寝付けんが》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九二)
   
妹が目を 見まく堀江ほりえの さざれ波 しきて恋ひつつ ありとげこそ
いとうて 堀江さざ波 寄せるに がれしきりと あの児にうて》【海に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇二四)
                          (見まく欲り→堀江)         
                         (波がしく=重なり来る→しきて<頻り>)
  
との曇り 雨布留ふる川の さざれ波 なくも君は 思ほゆるかも
《雨降りの 布留ふるのさざ波 絶えない あんた思うん うちもなしや》【川に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇一二)
   
すげよし 宗我そが川原かはらに 鳴く千鳥ちどり なし我が背子せこ が恋ふらくは
宗我そが川原かわら 鳴く千鳥やで しや あんた恋して うちがれんは》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八七)
   
玉襷たまだすき けねば苦し けたれば ぎて見まくの しき君かも
つぶやきを せんとつらいが 口すると 余計よけいとなる あんたさんやで》【襷に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九九二)
                          (襷を懸ける→<名前を口に>懸ける)
  
忘れ草 垣もしみみに 植ゑたれど しこしこくさ なほ恋ひにけり
《忘れ草 垣に仰山ぎょうさん 植えたけど 役立たず草 恋まへんわ》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六二)
   
大崎おほさきの 荒磯ありその渡り くずの 行方ゆくへもなくや 恋ひ渡りなむ
かずらつる 伸び先どっち この恋の 続くがれは 何処どこ向かうんか》【葛に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇七二)

古今相聞往来(下)編(17)馬に水飼へ

2013年08月20日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年8月20日】

檜隈ひのくま 檜隈ひのくまがはに 馬とどめ 馬に水へ 我れよそに見む



しとうて待つは 女の常か
あんたのあたり 見てしのぶんや
噂聞くだけ むなしい恋や
空音そらねを 知りつつ待って
垣間見かいまみるから 馬水飲まし 
  
君があたり 見つつもらむ 生駒山いこまやま 雲なたなびき 雨は降るとも
《あんたる あたり見てたい 生駒山いこまやま 雲隠しなや 降ってもえが》【雨に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三二)
   
葦辺あしへ行く かも羽音はおとの 音のみに 聞きつつもとな 恋ひ渡るかも
《鴨羽音はおと あんた噂を 聞くだけで むなしにうちは 恋続けとる》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九〇)
   
楽浪ささなみの 波越すあざに 降る小雨こさめ あひだも置きて 我が思はなくに
なみこしの 土手降り続く 小雨あめみたい うちは あんた思てる》【雨に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇四六)
   
あしひきの やますがの根の ねもころに れはぞ恋ふる 君が姿に
山菅やますげの 根ちゃうが ねんごろに あんたの姿 うちれてんや》【菅に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇五一)
   
とほつ人 猟道かりぢの池に む鳥の 立ちてもても 君をしぞ思ふ
《池にむ 鳥くだり 休みし うちもやす あんた思てる》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八九)
                          (遠つ人=遠来の鳥=雁→狩)
  
白髪しらかつく 木綿ゆふは花もの ことこそば いつのまさかも つね忘らえね
木綿ゆうはなは その場限りや 言葉かて けどうち全部 覚えてまっせ》【木綿に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九九六)
                          (木綿花=造花)
  
檜隈ひのくま 檜隈ひのくまがはに 馬とどめ 馬に水へ 我れよそに見む
檜隈川ひのくまの 岸で馬め 水飲まし そのにそっと うち見るよって》【馬に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九七)

古今相聞往来(下)編(16)まだらの蘰

2013年07月26日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年7月26日】

むらさきの まだらのかづら 花やかに 今日けふ見し人に のち恋ひむかも



女の恋は 純情じゅんじょう可憐かれん
相手姿を う見も出来ず
じっとがれて 待つ一方で
今がけりゃと 撓垂しなだれ掛かる  
  
春日野かすがのに 照れる夕日の よそのみに 君を相見あひみて 今ぞくやしき
《今うと 横す夕日 横ので あんた見ただけ やみしきりや》【日に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇〇一)
   
ぬばたまの わたる月の さやけくは よく見てましを 君が姿を
《夜空照る 月澄んでたら しっかりと あんたの姿 充分よう見たのんに》【月に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇〇七)
   
夕月夜ゆふづくよ あかときやみの おほほしく 見し人ゆゑに 恋ひ渡るかも
《ぼんやりと 見ただけやのに 気になって なんやがれて 仕様しょうないのんや》【月に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇〇三)
  
くれなゐの うすころも あさらかに 相見あひみし人に 恋ふるころかも
薄赤うすあかの ふく浅い 軽い気で うた人やに なんや恋しわ》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九六六)
   
むらさきの まだらのかづら 花やかに 今日けふ見し人に のち恋ひむかも
《今日うた かずら似合にあう あの人に あとでこのうち がれんやろか》【蘰に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九九三)
   
祝部はふりらが いはふみもろの 真澄鏡まそかがみ けてしのひつ 逢ふ人ごとに
《気ぃけて あんた偲んで 行きちがう 人見るたんび 顔のぞくんや》【鏡に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八一)
                          (鏡を懸ける→気に懸ける)
  
梓弓あづさゆみ すゑはし知らず しかれども まさかは君に 寄りにしものを
 行く末の こと分らんが 今うちは 心べったり あんた寄ってる》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八五)
                          (弓の末→行く末)
  
梓弓あづさゆみ すゑのたづきは 知らねども 心は君に 寄りにしものを
《先々の ことどうなるか 分らんが 心あんたに 寄って仕舞しもてる》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八五 或る本)

古今相聞往来(下)編(15)帯の結びも

2013年07月23日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年7月23日】

むらさきの おびの結びも 解きもみず もとなや妹に 恋ひ渡りなむ



次いで登場 歌種類 寄物陳思きぶつちんしの その意味は
景色や物に たくし付け 心思いを うたう歌
歌の並びは 物による 分類毎に む形
これもほぐして 恋心 うつろい順に 並び替え


男の恋は 未熟みじゅくで青い
ちらと見た児に すぐがれ
せた死ぬやと う一方で
他人ひとの児とても 可愛いとれる

むらさきの おびの結びも 解きもみず もとなや妹に 恋ひ渡りなむ
《紫の おびひもなんも かへんに 甲斐無かいのあの児に 恋続けんか》【帯に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九七四)
   
朝影あさかげに が身はなりぬ 玉かぎる ほのかに見えて にし子ゆゑに
《ちらと見た あの児姿に れて仕舞て 朝影みたい せて仕舞しもたで》【玉に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八五)
   
かくしてぞ 人は死ぬといふ 藤波ふぢなみの ただ人目ひとめのみ 見し人ゆゑに
《こないして 人こいぬか 一目だけ 見ただけれた あの児の所為せいで》【藤に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇七五)
   
浅茅あさぢはら 茅生ちふに足踏み 心ぐみ が思ふ子らが 家のあたり見つ
浅茅あさじはら 胸きゅっとして がれてる あの児のあたり 見ったこっちゃ》【浅茅に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇五七)
                          (茅生に足踏み=痛い)(心ぐみ=心が痛い)
  
あしひきの 山川やまがはみずの おとでず 人の子ゆゑに 恋ひ渡るかも
《激し水音おと させるんごて こっそりと 人妻あの児 恋いしととんや》【川に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇一七)
   
小竹しのうへに て鳴く鳥 目を安み 人妻ゆゑに れ恋ひにけり
小竹しの上で 鳴く鳥みたい 感じて 人妻やのに わしれて仕舞た》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九三)

古今相聞往来(下)編(14)捕ふばかりを

2013年07月19日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年7月19日】

我がいのちの 長くしけく いつはりを よくする人を とらふばかりを



未練みれん残すは 男の常か
焼けぼっくいの くすぶりないか
懐古かいこの 思いにひた
馴染なじんだ あの人恋し
 
うらぶれて れにし袖を また巻かば 過ぎにしこひい 乱れむかも
《恋めて 別れたあの児 またたら 昔の激恋こいが 戻るやろうか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二七)
   
今よりは 恋ふとも妹に 逢はめやも とこ去らず いめに見えこそ
《もうお前 がれしたかて われへん 夢に始終しょっちゅう て来てしな》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五七)
   
玉梓たまづさの 君が使つかひを 待ちしの なごりぞ今も ねぬの多き
《あの人の 使いを待った 名残なごりやで 寝付けん夜が 今もいんは》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四五)
   
我がいのちの おとろへぬれば 白栲しろたへの 袖のなれにし 君をしぞ思ふ
《衰えた 命思たら その昔 馴染なじんだあんた う思い出す》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五二)

腑抜ふぬけで しょぼくれてても
気丈きじょうや なにくそ生きる

うたがたも 言ひつつもあるか 我れならば つちには落ちず 空になまし
何時いつまでも まだうてるか 情けない うちなら死ぬわ しょぼくれてんと》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九六)
                         (仲かれ逢えん相手に叱咤激励しったげきれい?)

ようしこのうち 長生きしたる
うそつく男 許さでくか

我がいのちの 長くしけく いつはりを よくする人を とらふばかりを
《この命 しもんや うそばかり つかまえ らしめたいで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四三)


古今相聞往来(下)編(13)常のことばと

2013年07月16日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年7月16日】

うつせみの つねのことばと 思へども ぎてし聞けば 心まとひぬ



またも聞かすか お寒い口説くど
気にもせんけど 一寸ちょとえ気分
日暮れさみしと 思たは昔
来んか夕暮れ この胸はず
  
うつせみの つねのことばと 思へども ぎてし聞けば 心まとひぬ
《耳すんは ありきたりやと 思うけど かさね聞いたら その気になるわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九六一)
   
ゆふさらば 君に逢はむと 思へこそ 日の暮るらくも 嬉しくありけれ
夕暮れ来たら あんたえると 思うから 日ぃ暮れるんも 嬉しいもんや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二二)
   
海石榴市つばいちの 八十やそちまたに 立ちならし 結びしひもを かまくしも
海石榴市つばいちの うたがきて 気がうて 結びた紐 ほどくんしわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五一)
   
いめかと 心まとひぬ 月数多まねく れにし君が ことかよへば
《夢ちゃうか うちびっくりや 長いこと わんあんたの 言伝ことづて来たわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五五)
   
弱女たわやめは 同じ心に しましくも やむ時もなく 見てむとぞ思ふ
《うち思い あんたとおなじ 一時いっときも 休むことう てたいんやで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二一)
   
うたてに 心いぶせし ことはかり よくせ我が背子せこ 逢へる時だに
《今日みょうに 鬱陶うっとしよって 晴らすに ちゃんとやってや うてるあいだ
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四九)


古今相聞往来(下)編(12)無礼(なめ)し畏(かしこ)し

2013年07月12日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年7月12日】

妹と言はば 無礼なめかしこし しかすがに けまくしき ことにあるかも




あの児可愛かわいや いじらし限り
いたいたに 何故なぜかく
結んだ下紐ひもは ちかいのあかし
ほどくかわしが お前やしに
  
おほかたは なにかも恋ひむ 言挙ことあげせず 妹に寄り寝む 年は近きを
わんでも お前と共寝る日 来るうに がれするのん しこっちゃ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一八)
   
死なむいのち 此処ここは思はず ただしくも 妹に逢はざる ことをしぞ思ふ
《死ぬ命 し思わんが ただお前 えんなるん いやだけなんや》
                            ―作者未詳―(巻十二・二九二〇)
   
うつつにか 妹が来ませる いめにかも 我れかまとへる 恋のしげきに
《お前来た 夢かうつつか 幻か がれはげして わしけとんか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一七)
   
玉かつま 逢はむと言ふは れなるか 逢へる時さへ おもかくしする
いたいて うたん誰や そやうに うたら顔を かくすんかいな》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一六)
                         (玉かつま=立派なかごふたと身が合う→逢う)
  
ふたりして 結びしひもを ひとりして れはきみじ ただに逢ふまでは
《二人して 結んだ下紐ひもや うまでは なんで一人で わしほどくかい》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一九)
   
いかならむ 日の時にかも 我妹子わぎもこが きの姿 朝にに見む
何時いつたら あの児の裳裾もすそ 引く姿 朝晩ずっと 見られんやろか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九七)
   
妹と言はば 無礼なめかしこし しかすがに けまくしき ことにあるかも
《「お前」ん もったいないな そやけども てみたいんや 「お前」てんを》
  
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一五)
                          (相手は身分高い女か)

古今相聞往来(下)編(11)言ふは誰(た)が言(こと)

2013年06月21日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年6月21日】

悶々もんもん 片恋かたこいつら
せめて見て欲し やつれの姿
一人あこがれ 姿を見ても
なぜにその手が 取れんと嘆く
  
明日あすの日は そのかど行かむ でて見よ 恋ひたる姿 あまたしるけむ
う見てや 明日あした門口かどぐち 行くよって こいやつれした あわれなわしを》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四八)
   
あひ思はず 君はいませど 片恋かたこひに れはぞ恋ふる 君が姿に
《あんたには その気ないのに 片思かたもいで あんた姿に うちれてんや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三三)
   
あぢさはふ 目はかざらね たづさはり こととはなくも 苦しくありけり
始終しょっちゅうに お目に掛かるが 手ぇつなぎ 言葉わせん えろつらいで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三四)

人妻何故なぜか 魅力みりょくに見える
怖々こわごわ 近づき誘う
受けた人妻 やんわり避ける
ありその気に 男はれる

他国ひとくにに よばひに行きて 大刀たちも いまだかねば さぞ明けにける
《よそのさと 夜這よばいに行って まだ大刀たちも はずさんうに ぉ明けて仕舞た》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九〇六)
   
おほろかに 我れし思はば  人妻に ありといふ妹に 恋ひつつあらめや
加減かげんに 思うてるなら 人妻の あんたにわしが がれるもんか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九〇九)
   
人妻に 言ふはこと さごろもの このひもけと 言ふは誰がこと
《何んや 人妻こて さあ早う このひもけて なんちゅうことを》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八六六)
   
緑児みどりごの ためこそ乳母おもは 求むと言へ 乳飲ちのめや君が 乳母おも求むらむ
乳母うばしん 赤んためや あんたまだ ちちんか 乳母うばしなんて》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二五)
                          乳母みたいな私を <年下男の言い寄り>)
  
くやしくも いにけるかも 我が背子せこが 求むる乳母おもに 行かましものを
《あんたう 乳母うばに行きたい 思たけど ちょっとくやしな 年取り過ぎた》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二六)
  

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古今相聞往来(下)編(10)しゑや さらさら

2013年06月18日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年6月18日】

我が背子せこが むと語りし は過ぎぬ しゑやさらさら しこりめやも




二人共寝る夜の 眠りは深い
あっとう間の 夜明けがくや
独り寝る夜は 眠りが浅い 
まだか夜明けは 早よ早よ明けよ 
  
白栲しろたへの 手本たもとゆたけく 人のる 味寝うまいずや 恋ひ渡りなむ
くつろいで 互い手枕 共寝る様な 眠り出けんで 恋続けとる》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九六三)
   
玉釧たまくしろ まきる妹も あらばこそ の長けくも 嬉しくあるべき
《一緒共寝る 児でもったら この長い よるうれしに 過ごせるんやに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八六五)
   
白栲しらたへの 袖れてる ぬばたまの 今夜こよひはやも けば明けなむ
《あの児袖 枕にせんと 寝るよるは 明けるもんなら 早よ明けて仕舞え》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九六二)
   
我が背子せこが むと語りし は過ぎぬ しゑやさらさら しこりめやも
《ええいもう あんた来るた ぉ明ける 今更んわ 間違まちごたかって》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七〇)
   
たくまし男 恋には弱い
なんでこのわし 女々めめしにがる
正気しょうき分別ふんべつ どこやら忘れ
あの児わんと 夜も日も明けん 

天地あめつちに 少し至らぬ 大夫ますらをと 思ひし我れや 雄心をごころもなき
《天と地に ぐ男やと 思てたに なんやこのわし 女々めめしいこっちゃ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七五)
   
ますらをの さとき心も 今は無し 恋のやっこに れは死ぬべし
《男らし 分別ふんべつごころ うしのうて 恋のやっこに 殺されやで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九〇七)
   
うつせみの うつごころも 我れは無し 妹を相見あひみずて 年のゆけば
《もうわしは 正気しょうきごころも 消失うしのたで おまええんで 日ィつよって》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九六〇)

古今相聞往来(下)編(09)宿閉(さ)すなゆめ

2013年06月14日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年6月14日】

人の見て こととがめせぬ いめに我れ 今夜こよひ至らむ 宿すなゆめ



せめてゆめなか 出て来て欲しい
他人ひととがめん 夢中ゆめなかずっと
えた嬉しと 抱きしめしたが
むなしに泳ぐ からかいな 
  
うつつには ことえたり いめにだに ぎて見えこそ ただに逢ふまでに
言伝ことづても 出来んなった 夢にでも ずっと出てい じかうまでは》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五九)
   
人の見て こととがめせぬ いめにだに やまず見えこそ 我が恋やまむ
他人ひと見ても とがてせん 夢の中 ずっと出てい がれいやしに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五八)
   
人目ひとめ多み ただには逢はず いめにだに やまず見えこそ 我が恋やまむ
人目ひとめて じかえんので 夢の中 ずっと出てい がれいやしに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五八 或る本)
   
白栲しろたへの 袖折りかへし 恋ふればか 妹が姿の いめにし見ゆる
《袖折って 恋し思いで 寝たからか あの児の姿 夢て来たで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三七)
                         (袖折り返し=夢でえるまじない)
  
うつくしと 思ふ我妹わぎもを いめに見て 起きてさぐるに なきがさぶしさ
可愛かいらしと 思てるお前 夢に見て 手探てさぐりしたが むなしでからや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一四)
   
人の見て こととがめせぬ いめに我れ 今夜こよひ至らむ 宿すなゆめ
他人ひと見ても とがめ立てせん ゆめなかへ 今晩こんばん行くで 戸ぉ開けといて》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一二)
   
確かなる 使つかひを無みと 心をぞ 使にりし いめに見えきや
《頼りなる 使いらんで たましいの 使いったが 夢出たやろか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七四)
   
ぬばたまの を長みかも 我が背子せこが いめに夢にし 見えかへるらむ
よるうち 長いからかな あの人が 夢出て消えて また出てんは》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九〇)
   
あらたまの 年月としつきかねて ぬばたまの いめに見えけり 君が姿は
《もう長い 年月あいだ 夢でうち 見続けとんや あんたの姿》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九五六)

古今相聞往来(下)編(08)讒(よこ)しを聞きて

2013年06月11日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年6月11日】

人言ひとごとの よこしを聞きて 玉桙たまほこの 道にもはじと 言へりし我妹わぎも



立った噂は 広がり早い
あっとの ひとつき三月みつき
静まり待つが ひどなるばかり
えん二人は 恋焦こがれになげ

人言ひとごとは まこと言痛こちたく なりぬとも そこにさはらむ 我れにあらなくに
《噂なぞ なんぼひどうに なったかて 気にむわしや い思てたに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八八六)
   
人言ひとごとを しげみと妹に 逢はずして 心のうちに 恋ふるこのころ
ひとうわさ 五月蝿うるそてあの児 わへんで 心こらえて がれとんのや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四四)
   
人言ひとごとを しげ言痛こちたみ 我妹子わぎもこに にし月より いまだ逢はぬかも
ひとみなの うわさひどうて あのには 先月せんげつこっち まだてないで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九五)
   
はなくも しと思へば いや増しに 人言ひとごとしげく 聞こえるかも
われんの つらくやしと 思てるに 噂益々ますます ひどなってきた》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七二)
   
人言ひとごとの よこしを聞きて 玉桙たまほこの 道にもはじと 言へりし我妹わぎも
他人ひとう 中傷うわさに受け わしの児が 道でうんも いややてうた》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七一)
   
み空行く 名のしけくも 我れは無し 逢はぬ日数多まねく 年のぬれば
《噂立ち えん日おおて 年過ぎた もっと噂し もうでわしは》 
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七九)
                          (み空行く名=どんどん広がる噂)
   
人言ひとごとを しげ言痛こちたみ 我が背子せこを 目には見れども 逢ふよしもなし
ひとうわさ おお五月蝿うるそて あの人を 目にはするけど 伝手つてないわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三八)
   
ただ今日けふも 君には逢はめど 人言ひとごとを しげみ逢はずて 恋ひ渡るかも
《今日あんた いと思たに ひとうわさ 五月蝿うるそえん がれてんのに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二三)

古今相聞往来(下)編(07)目こそ忍ぶれ

2013年06月04日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年6月4日】

人目ひとめ多み 目こそしのぶれ すくなくも 心のうちに 我が思はなくに




男思いが あふれていても
人目おおうて い行く出来ん
女忍んで ち焦がれても
夜はけてく 嘆きは募る
  
人目ひとめ多み 目こそしのぶれ すくなくも 心のうちに 我が思はなくに
《人目て しのんでるけど 心では 一寸ちょっとやそっと 思もてんちゃうで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一一)
   
心には 千重ちへ百重ももへに 思へれど 人目ひとめを多み 妹に逢はぬかも
《心では 千も百をも 思てるが 人目いから わへんのやで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一〇)
   
心には 燃えて思へど うつせみの 人目ひとめしげみ 妹に逢はぬかも
《心では 満々いっぱい思て おるけども 人目五月蝿うるそて い行かれへん》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三二)
   
里近く 家やるべき このが目の 人目ひとめをしつつ 恋のしげけく
さとちかに 住むもんちゃうな 人の目を はばかりしてて がれるだけや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八七六)
   
宵々よひよひに が立ち待つに けだしくも 君まさずは 苦しかるべし
《毎晩に 表で待つに もしあんた 来んなったら えられへんわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二九)
   
あかねさす 日の暮れゆけば 術をなみ 千度ちたび嘆きて 恋ひつつぞ
《日ィ暮れる どう仕様しょうて 溜息ためいきを いて がれてんねや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九〇一)
   
我が背子せこを 今か今かと 待ちるに けゆけば 嘆きつるかも
《あの人を 今か今かと 待ってたが けてきて つろなって仕舞た》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八六四)

古今相聞往来(下)編(05)事計(ことは)りもが

2013年05月28日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年5月28日】

ひとりて 恋ふるは苦し 玉襷たまだすき けず忘れむ ことはかりもが



がれ忘れる 手立てはないか
さ晴らす 手掛かりどやろ
夢見るだけで 辛抱しんぼがならん
ええいもううち い出て行くで
  
ひとりて 恋ふるは苦し 玉襷たまだすき けず忘れむ ことはかりもが
われんで 独りがれん 苦しがな 忘れる手立てだて ないもんやろか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九八)
   
つねかくし 恋ふれば苦し しましくも 心休めむ ことはかりせよ
《ずうっとの がれ苦しで ちょっとの 休ます手立てだて 考えてんか》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九〇八)
   
思ひる たどきも我れは 今は無し 妹に逢はずて 年のゆけば
がれ消す 手立てだてもうわし うなった あの児わん日 ご続くんで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四一)
   
思ひる すべのたどきも 我れは無し はずて数多まねく 月のゆけば
《長ご逢わん 月日経つんで 恋憂さ晴らす 手立てだ手掛てがかり もううちいわ》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九二)
   
うつつにも 今も見てしか いめのみに 手本たもとまきと 見るは苦しも
《今すぐに ほんまいたい ゆめなかの ともらんわ 見るだけつらい》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八八〇)
   
外目よそめにも 君が姿を 見てばこそ が恋やまめ いのち死なずは
遠目とおめでも あんたの姿 見られたら がれむのに 生きとったなら》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八八三)
   
思ひつつ れば苦しも ぬばたまの よるいたらば 我れこそ行かめ
がれてて じっと待ってん 苦しから なかなったら うちから行くで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三一)


古今相聞往来(下)編(04)死なむよ我が背

2013年05月24日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年5月24日】

今はは 死なむよ 恋すれば 一夜ひとよひとも 安けくもなし



恋のつらさが 日に日につの
がれがれて この身はせる
の出の入り 何時いつとも知れず
いっそ死ぬが しかと思う
  
おのがじし 人死にすらし 妹に恋ひ 日にせぬ 人に知らえず
《死にかたは 人それぞれや 思伝つたわらん あの児がれて せる日々やで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九二八)
   
いつまでに かむ命ぞ おほかたは 恋ひつつあらずは 死ぬるまされり
《どれほども 生きては行けん いのちやで がれするより 死ぬしや》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九一三)
   
こひと言へば うすきことなり しかれども 我れは忘れじ 恋は死ぬとも
《「恋」たら 聞こえ軽いが そんなちゃう うち忘れんで 恋にしても》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三九)
   
今はは 死なむよ 恋すれば 一夜ひとよひとも 安けくもなし
《もううちは 死にやあんた がれてて 朝晩ずっと 気ィ安まらん》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三六)
   
あらたまの 年の長く かく恋ひば まこと我が命 またくあらめやも
年月としつきの なごうにこんな 焦がれてて このうちいのち もうごないで》
                           ―作者未詳―(巻十二・二八九一)
   
あらたまの 年の長く いつまでか が恋ひらむ いのち知らずて
《このがれ いつまでごに 続くんや いのち何時いつ死ぬ 分らんうに》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九三五)
   
なかなかに 死なば安けむ づる日の 入るわき知らぬ 我れし苦しも
 いっそこと 死んだら楽や 日の出入り 知らんで過ごす 苦してならん》
                           ―作者未詳―(巻十二・二九四〇)