【掲載日:平成25年9月3日】
我妹子に 恋ひ術ながり 胸を熱み 朝戸開くれば 見ゆる霧かも
深い恋焦れは 逃げ場が無うて
男のくせに 深刻頻り
焦がれ何時まで 死ぬ思いやで
恥や外聞 もう何も要らん
忘れ草 我が紐に付く 時となく 思ひ渡れば 生けりともなし
《忘れ草 わし身に付けた ずううっと 焦がれ続けて 死ぬ思いしてて》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六〇)
海人娘子 潜き採るといふ 忘れ貝 世にも忘れじ 妹が姿は
《恋忘れ 出来る云う貝 あるらしが 忘れられんで あの児の姿》【貝に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八四)
思ひ出でて 術なき時は 天雲の 奥処も知らず 恋ひつつぞ居る
《目ぇ浮かび どう仕様もないで このまんま 焦がれ続くん 何時までなんや》【雲に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三〇)
我妹子に 恋ひ術ながり 胸を熱み 朝戸開くれば 見ゆる霧かも
《朝の戸を 開けたら霧や 堪え切れん あの児恋しの 塞がり胸の》【霧に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三四)
(一晩中の嘆きが霧になった)
剣大刀 名の惜しけくも 我れはなし このころの間の 恋の繁きに
《この恋は 偉う激しで もうわしは 恥外聞も 無うても良えわ》【大刀に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九八四)
(大刀の刃=「ナ」という→名)
思ひ出づる 時は術なみ 佐保山に 立つ雨霧の 消ぬべく思ほゆ
《この目ぇに 浮かんだ最後 ども出来ん 佐保立つ霧や 消え入り相やで》【霧に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三六)
夕置きて 朝は消ぬる 白露の 消ぬべき恋も 我れはするかも
《日暮れ置き 朝来た消える 白露みたい 身ィ消える様な 恋するかわし》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三九)
後つひに 妹は逢はむと 朝露の 命は生けり 恋は繁けど
《後々に あの児逢うため この命 生き続けるで 焦がれ辛ろても》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四〇)
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