【掲載日:平成25年5月21日】
かくばかり 恋ひむものぞと 知らませば その夜はゆたに あらましものを
楽し嬉しの 恋路のはずが
なぜに涙が この袖濡らす
逢うたあの夜の 思い出さえも
溢れ溢れて 胸張り裂ける
君に恋ひ 我が泣く涙 白栲の 袖さへ漬ちて 為む術もなし
《恋しいて あんた思うて 泣く涙 袖ぐっしょりで どう仕様もないわ》
―作者未詳―(巻十二・二九五三)
今よりは 逢はじとすれや 白栲の 我が衣手の 干る時もなき
《もうあんた 逢わんつもりや 無いやろに うちの袖口 乾く間ないで》
―作者未詳―(巻十二・二九五四)
ぬばたまの 寝ねてし宵の 物思ひに 裂けにし胸は やむ時もなし
《一緒共寝た 晩思い出し 焦がれ湧き 胸張り裂けて 治り相ないで》
―作者未詳―(巻十二・二八七八)
かくばかり 恋ひむものぞと 知らませば その夜はゆたに あらましものを
《こんなにも 恋い焦がれるて 知ってたら あの夜ゆっくり した良かったな》
―作者未詳―(巻十二・二八六七)
世の中に 恋繁けむと 思はねば 君が手本を まかぬ夜もありき
《こんなにも 焦がれ苦しと 思わんで あんたと共寝ん夜 有ったなそ言や》
―作者未詳―(巻十二・二九二四)
(男は旅に出たか?)
恋ひつつも 後も逢はむと 思へこそ 己が命を 長く欲りすれ
《恋苦しけど その内逢える 思うから ずっと長生き 仕様思てんや》
―作者未詳―(巻十二・二八六八)
いくばくも 生けらじ命を 恋ひつつぞ 我れは息づく 人に知らえず
《伝わらん 苦し恋して 溜息や 命長いと 云うわけ違うに》
―作者未詳―(巻十二・二九〇五)
恋ひ恋ひて 後も逢はむと 慰もる 心しなくは 生きてあらめやも
《後逢える 思て慰め 為んことに 焦がれ苦して 生きとられんわ》
―作者未詳―(巻十二・二九〇四)