犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(032)生ける人

2011年07月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月十日】放映分

けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな

 《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)



【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭を抱える旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに 言う顔見たら 猿そっくりや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたくしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値付けさえ 出けん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらばには 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
 徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた



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