犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(189)味飯を

2013年03月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月十六日】放映分

味飯うまいひを 水にみなし が待ちし 甲斐かひはさねなし ただにしあらねば
美味うまめし かもし酒に 待ってるに 自身来んやて 甲斐あらへんで》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八一〇)

【万葉歌みじかものがたり】こもらばともに》

《楽しいとわし 隠れの恋は》

昔男と 美女がた 
共に両親ふたおや 内緒ないしょして 深い恋仲こいなか 成って仕舞た 
そのうち女 おもたんや このまま親に 知らせんと
ったあかんと 考えて これを男に 送ったと 

こもりのみ 恋ふれば苦し 山のゆ でくる月の あらはさばいかに
かくしてて がれん苦し もう不要ええで 出る月みたい 表にそや》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇三)
  
ここに一人の 女た 両親ふたおや内緒ないしょ 男出来でき
逢瀬おうせかさねて おるうちに 相手男の こころなか
親の叱責しかりを こわがって 躊躇ためらい心 まれたを
知った女が 歌作り 男けしかけ 贈る歌

事しあらば 泊瀬ばつせ山の 石城いはきにも こもらばともに な思ひそ我が背
《何んや もしもの時は 二人して 墓の中でも かくれよあんた》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇六)

 悲し懐かし 未練の心》

昔ひとりの 娘子おとめた 
愛夫おっとおとずれ 遠退とおのいて がれ思いで としした 
やがて男は 別妻つまめとり 訪ねん日ィ 続いたが
(今日はこのうち まれの日 もしや来んかの 望み抱き)
酒を造って 待つもとに 思い掛けない 贈り物
やれうれしやの 気もしたが 心尽こころづくしの 酒悲し
  
味飯うまいひを 水にみなし が待ちし 甲斐かひはさねなし ただにしあらねば
美味うまめし かもし酒に 待ってるに 自身来んやて 甲斐あらへんで》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八一〇)

《任にかれし 恋仲夫婦》

昔男が ひとりた こんむすびて なしやに 
えきうま任務 くだり来て 遠い任地に 行かされた
任務休み 次々で 妻に逢う日の いままに
嘆き悲しみ 暮らすうち 妻はやまいで とこ
年をかさねた 任てて 帰る旅路は 雪しき
かんに報告 終えたのち 妻のもとへと おもむくに
花のかんばせ やつて おとろえし その姿
驚き嘆き 如何いかばかり 涙むせびて 声も

かくのみに ありけるものを 猪名川ゐながはの おきを深めて が思へりける
《いつまでも 元気でると 思てたに こんなやつれて 可哀想かわいそしたな》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八〇四)
  
つれの声聞き す妻は 頭もたげて 歌返す

ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪あわゆきの 降るにやます 幾許ここだ恋ふれば
ゆるしてね うちががれて 思うから 雪降る中を かみずぶれで》
                         ―娘子おとめ―(巻十六・三八〇五)





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