犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(109)あらかじめ

2012年05月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月二十六日】放映分
あらかじめ 君まさむと 知らせば かどにやどにも 玉敷かましを
《前もって 佐為卿あんたのお越し 知ってたら 門や庭にも 玉いたのに》
                          ―門部王かどべのおおきみ―(巻六・一〇一三)



【万葉歌みじかものがたり】かはづ聞かせず》

左為王さいおう 葛城かつらぎ王 弟
さすが に 王族の出 
鷹揚おうようたる 物腰 取り巻き官人に 受けがよい

左為王さいおう様 もうお帰りですか
 宴のたけなわ 今がとうところ を」
「ハハハ もう十分に 堪能たんのう致した
 あとは 皆々で よろしゅうに ご歓談を」

思ほえず ましし君を 佐保川の かはづ聞かせず 帰しつるかも
《珍しい おしやったに 佐保川さほ河鹿かじか 聞かしもせんと なして仕舞しもた》
                       ―按作くらつくり村主のすぐり益人ますひと―(巻六・一〇〇四)

親父おやじ殿 いま一時ひととき おいでになれば
  皆も 喜びましょうに 悪うございますよ」
「お相伴しょうばんが 物うでない
 おぬし 馳走ちそうが しいのであろう
  次じゃ 次の席が 待って居る」

辿たどり着いたは 弾正尹だんじょうのかみ 門部王かどべおうが屋敷
「これは これは 左為王さいおう
 本日は 参向さんこうかなわぬとのおお
  十分なご用意 致しておりませぬ」
「大事ない 腹はもう満腹くちる」

あらかじめ 君まさむと 知らせば かどにやどにも 玉敷かましを
《前もって 佐為卿あんたのお越し 知ってたら 門や庭にも 玉いたのに》
                          ―門部王かどべのおおきみ―(巻六・一〇一三)
子息むすこ 橘文成あやなりが 応じる
一昨日をとつひも 昨日きのふ今日けふも 見つれども 明日あすさへ見まく しき君かも
一昨日おとついも 昨日きのう今日きょうも うたのに 明日あすも逢いたい 門部王あんたさんです》
                          ―橘文成たちばなのあやなり―(巻六・一〇一四)
玉敷 きて 待たましよりは
 たけそかに きた今夜こよひし 楽しく思ほゆ《用意して 待つのんよりか 突然とつぜんに られるんも うれしもんです》
                          ―榎井王えのいのおおきみ―(巻六・一〇一五)
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左為王婢さいのおおきみがまかだちの歌】
左為王さいおう近く つかえの侍女じじょは 
つときつうて 夜昼なしで
宿がれんと おっとに逢えず 
鬱屈うっくつまり 恋焦こがれが募る
ある夢見に おっとでて 
やれうれしやと 双手もろてを伸ばし
抱きつきみるに くう切るかいな 
糠喜ぬかよろびに 気付いた侍女じじょ
嘆きいや増し 叫びてうたう 

いひめど うまくもあらず
 ぬれども 安くもあらず
 あかねさす 君が心し 忘れかねつも
めしたかて 美味うもうない
  寝てはみるけど うつうつや
  あゝ思うんは うちの人
やさし心の うちの人》
                       ―左為王婢さいのおおきみがまかだち―(巻十六・三八五七)
聞いた左為王さいおう あわれに思い 
泊まり勤めを 長きにゆる




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これなら あなたも 訳せますよ。
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