桐の花を初めて認識したのは
足元だった
隣家との境に桐の木があることを
そのとき知った
落ちていた花の色は
子供の心にも
ただならぬ高貴な気配を感じさせた
見上げると遠い梢の先に
花の集まりが
手を伸ばしても届かない花に思えた
神楽坂に住まいを探しに来て
地下鉄の階段を上っていたとき
五月の空の中に鮮やかに現れたのは
新潮社の桐の木だった
それ以来毎年見に来る
成長の早い桐の木は
花が遠くにあってまぶしい
色と形を確かめられるのは
足元に落ちている花だけ
足元だった
隣家との境に桐の木があることを
そのとき知った
落ちていた花の色は
子供の心にも
ただならぬ高貴な気配を感じさせた
見上げると遠い梢の先に
花の集まりが
手を伸ばしても届かない花に思えた
神楽坂に住まいを探しに来て
地下鉄の階段を上っていたとき
五月の空の中に鮮やかに現れたのは
新潮社の桐の木だった
それ以来毎年見に来る
成長の早い桐の木は
花が遠くにあってまぶしい
色と形を確かめられるのは
足元に落ちている花だけ