みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

線維筋痛症

2012-09-01 09:34:55 | その他
全身に激痛 女性に多い「線維筋痛症」 早期診断が重要

全身で耐えられないほどの激しい痛みが続く線維筋痛症。
30~40代女性に多いが、原因や発症の仕組みははっきり分かっていない。

国内患者200万人
■この病気の国内患者数は推定で約200万人。
約7割が女性という。
ケガや病気など肉体的・精神的なストレスが引き金になり、耐えられないほどの痛みに見舞われるのが一般的だ。

■交通事故のほか、運動時のケガ、手術、出産などが原因になる。
さらに、職場の環境変化、更年期障害、いじめ、親の介護、夫婦仲の悪化などもきっかけになる。

■発症時は、痛みが急に全身に広がる場合や肩甲骨の周辺などから全身へと広がる人もいる。
爪を切るだけで激痛が走るケースもある。
また、痛みのため体がいつも緊張状態になり、交感神経のバランスが崩れる。この影響などで、めまいや便秘、下痢、耳鳴り、ドライアイ、視力障害、不眠、うつ状態など様々な症状が現れるという。

■痛みが続く詳しい仕組みはまだ分かっていないが、専門家は体の痛みを感じ取る脳の部分が過敏になっていると考えている。
これに加え、体に備わる痛みの感覚を鎮める作用も弱まっているようだ。
体に何かが触れるだけでその刺激を脳が痛みとして感じ取り、抑制作用がないため、いつまでもやまない。
さらに次の刺激も痛みとして上乗せされ、どんどん痛みが蓄積するという悪循環に陥る。

■患者にとって大変なのはつらい症状に悩まされているのに、体の異常を見つける決定的な検査方法がないことだ。
人によって症状が異なるケースが多いことが診断を余計に難しくしている。
多くの診療科を回ったあげく「なんともない」と言われてしまうこともある。診断まで10年かかった例もあるという。

■現在の診断ガイドラインは、米国リウマチ学会の基準をもとにしている。
原因不明の痛みが全身に3カ月以上続くケースで、首や肩など18カ所の基準となる箇所を、やや強く押す。
11カ所以上に痛みがあれば線維筋痛症と診断する。

■これに加え、患者自身が記入する問診票を活用する取り組みもある。
過去1週間で体のどこが痛んだか、痛み以外の全身症状がどれくらいあったかをもとに点数化する。

対処可能な病に
■治療は薬物療法が中心。
症状に応じて適切な薬を選ぶ。
今年6月には米製薬大手ファイザーが開発した帯状疱疹(ほうしん)などの痛みを抑える薬「リリカ(商品名)」が、線維筋痛症にも使えるようになった。

■線維筋痛症は医師の間でも知名度が徐々に上がっており、従来より治療に取り組みやすい環境が整いつつある。
体の異変を素早く察知して治療に取り組めば、痛みがかなり軽減され日常生活を取り戻せるケースもまれではなくなった。

出典 日経新聞・夕刊 2012.8.31
版権 日経新聞社
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