みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

胎児の健康状態を調べる「出生前診断」

2012-09-15 07:50:57 | 産婦人科
胎児の健康状態を調べる「出生前診断」 新手法始まる 十分なカウンセリングや説明が不可欠

胎児の健康状態や遺伝子に異常があるかなどを妊娠中に調べる出生前診断。
妊婦の血液からダウン症かがほぼ確実に分かる新しい診断法の臨床研究を、国立成育医療研究センターなどが月内にも始める。
採血だけで検査できる半面、異常が見つかった場合に妊娠中絶につながる懸念もある。
ダウン症の人の多くは成人し、社会生活も送れる。
十分なカウンセリングなどを実施し、慎重に対応すべきだ、という専門家の声もある。

■出生前診断には超音波検査や胎盤の組織を取る絨毛検査、妊婦の血液中のたんぱく質を調べる母体血清マーカー、針を妊婦のおなかに刺し羊水に含まれる胎児の細胞を調べる検査などがある。

■採血だけで済む検査法は、もともと米企業が開発した技術で、母親の血液に混ざっている胎児の血液成分を調べる。
遺伝子解析装置を使い99.1%の精度でダウン症か判別できるという。
対象は子供の染色体異常のリスクが高まる35歳以上の高齢出産の妊婦など。

■遺伝子がのった染色体は人では46本あり、両親から23本ずつ受け継いでいる。
ダウン症はこのうちの「21番染色体」が通常より1本多い3本ある。
ダウン症患者は、先天性の心臓疾患や知的障害などを抱えるケースが多く、妊婦の年齢が上がるほど発症率が高まる。
現在は約1000人に1人の割合で生まれる。かつては短命といわれたが、医療の進歩などで現在の平均寿命は50歳を超えている。

■出生前診断が普及してきた背景には、検査技術の進歩がある。
胎児の動きが詳しく分かる超音波診断装置などは広く普及している。
例えば「NT」と呼ぶ胎児の首の後ろのむくみが通常より厚いと、ダウン症の可能性が高まるといわれる。

■血清マーカー検査でも、分かるのは病気である確率が5000分の1、500分の1、40分の1など曖昧な判定。
より確実に知るには羊水検査が必要で、流産の危険性もあった。

出典 日経新聞・夕刊 2012.9.7
版権 日経新聞社

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子宮内膜症

2012-08-10 07:29:49 | 産婦人科
子宮内膜症、私らしく治療

■つらい月経痛をもたらし、不妊の原因にもなる子宮内膜症。月経を重ねるほど症状が悪化し、再発しやすい。

■近年、副作用の少ない低用量ピルが保険適用され、治療の幅は広がっている。

■子宮内膜症は、本来は子宮の内側で増えて月経時に排出される組織が、子宮以外の場所にできる病気だ。
特に卵巣や、子宮と直腸の間の隙間(ダグラス窩)、骨盤内の臓器を覆う腹膜にできやすい。
炎症が起きたり、臓器同士がくっついたりして、月経痛や腰痛、性交痛、排便痛を伴う。

■子宮内膜症の症状
○激しい月経痛があり、鎮痛剤を飲んでも治まらない
○年々、月経痛がひどくなってきた
○月経時以外にも、下腹部が痛む
○性交時に痛みがある
○排便の時に肛門の奥の方が痛む
○子どもがなかなかできない

■月経血の逆流が原因の一つといわれており、月経回数が多いほど発症のリスクが高くなる。
患者数は月経のある女性の10人に1人、100万~200万人といわれる。初産の高齢化や出産回数の減少などで増えているようだ。

■日本産科婦人科学会のガイドラインは、低用量ピルを使ったホルモン療法を第一選択としている。
排卵が止まる妊娠中は病状が良くなる性質を利用して、妊娠中に似た状態にする。
完治は望めないが、長期間使え、痛みや病気の進行を抑えることができる。月2千~3千円程度と他の治療より安価だ。
2008年に治療に使えるピルとして初めて「ルナベル」が保険適用され、10年には含有ホルモン量がより少ない「ヤーズ」も発売された。

■痛みを抑える効果が高いホルモン剤ジエノゲストは08年に登場、ピルに比べ割高だが、血栓症になりやすい40代にも使える。
以前は主流だったGnRHアゴニストは、病巣を小さくする力は強いが、閉経後に似た状態になるので更年期障害のような副作用も強い。


■子宮内膜症の主な治療法の特徴

《対症療法》
 鎮痛薬や漢方で痛みを和らげる

《ホルモン療法》
 低用量ピル…低価格で副作用が少なく、長く使える
ジエノゲスト…痛みを和らげる効果が高い。不正出血しやすい
GnRHアゴニスト…病巣を小さくする効果は強い。
         副作用も強く、継続使用は半年まで。

《手術療法》
 不妊の改善や将来、妊娠の希望があれば病気の部分だけ切除
妊娠希望がなく根治を望めば、卵巣(場合により子宮も)を摘出

https://aspara.asahi.com/blog/mediblog/entry/0pwpcpzULP
出典 朝日新聞・朝刊 2012.8.2
版権 朝日新聞社






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