本書は、全部で7編の短編集だ。この作家は、私には初めての作家さんなので、調べてみると、三田文学を中心に書いているらしい。
どの作品も不思議なことを味付けとしている。表題作の「空虚成分」では、父親の幽霊が出てくるし、「ヒエログリフの鳥」と言う作品では、ミニロトの当選番号をしゃべるセキセイインコが出てくる。しかし、別にホラーという訳ではない。全体を通すと、大きなヤマのようなものはない。
本書を読んでまず思ったのが、プロローグ集のようだということ。どの作品を読んでも、そこから発展しそうな感じなのだが、そこで終わっている。
例えば、「空虚成分」とは、ドーナツの穴から発見された成分という設定である。成長期の子供に悪影響を与え、多くのドーナツ店が閉店に追い詰められたという。主人公はこのことを新聞で読んだ記憶があるのだが、叔父からそれエイプリルフール新聞だと言われた。しかし、このことをはっきりとはさせていない。普通はそこから物語が発展していくのだが、この作品では、叔父とボウリング勝負をして終わっている。
☆☆☆