宇宙に「終わり」はあると予想されている。本書によれば、それはビッグウィンパーと呼ばれるらしい。宇宙の終焉を表すビッグクランチという言葉はよく聞くが、これは初耳だった。この概念を知っただけでも、本書を読んだかいがあったというものだろう。ただし、調べてみると、宇宙の終わりに関するモデルは、いろいろあってビッグウィンパーもその一つのようだ。だから、研究者によっては他の可能性を主張している。
本書で語ってきた宇宙史は、かなり信憑性の高い理論に基づいているとは言うものの、確実というわけではない。これ以外の可能性を主張する研究者も少なくない。(p253)
まあ、こういうものは前提を少し変えれば全く違う結論になるというのは良くあることだ。いい例がカオスなんかだろう。ちょっとした初期値の違いが、まったく異なる結果に行きつく。
ところで、ビッグウィンパーとは、存在はするが、活動はしない静寂に満ちた世界。ただしビッグバンから10の100乗年後だという。いまが、138億年経過しているからまだまだ先のことだ。
宇宙はビッグバンから始まったとよく言われる。宇宙背景放射のデータからは、ビッグバンが起きたのはほぼ間違いないが、それは、言葉からイメージするような、大爆発ではなかった。本書によれば、実は超高温の一様な空間が、整然と膨張を始めたものだという。
宇宙は不思議なことが溢れている。宇宙物理学の進歩によりわかってきたことも多いが、ダークマターやダークエネルギーを筆頭にまだまだ神秘に溢れている。本書に述べられていることも、あまりにタイムスケールが大きすぎて、いまひとつ実感の湧かないところもある。しかしそれでも圧倒的な大きさのロマンに胸がときめいてしまう。
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※初出は「風竜胆の書評」です。