文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:闘技場の戦姫

2018-07-21 09:39:02 | 書評:小説(その他)
闘技場の戦姫
クリエーター情報なし
フランス書院

・わかつきひかる、(イラスト)HIMA
・美少女文庫

 ヒロインのスカーレット姫はバスティア王国の第一王女である。5年前に長く紛争が続いていた隣国ベルヌープに、和平のために王族交換でやってきたのだ。ところが自分と交換でバスティアに行っていたベルヌープのクロード王子が、鹿狩りのさなかに熊に襲われて死んだため、大衆迎合政治を行っていたベルヌープは、民衆に迎合して、姫を剣闘士奴隷に落としてしまったのである。ベルヌープの愚かな民衆は、姫が闘技場で無残に殺される場面を待ち望んでいるのだ。

 戦いの女神エリスの加護を持つ戦姫でもあるスカーレットは、闘技場で次々に敵を倒していく。しかしそれはベルヌープの民の望むところではない。このままだと、次の試合では素手で人喰い熊と闘い、万が一熊に勝っても、その次には象と闘うことになるという。

 スカーレットの美しさに魅せられたファクトルのグスタフは、彼女から自国へ送り届けることを依頼される。ファクトルとは、依頼されて色々なものを送り届けるのを仕事をしている者たちだ。物品から奴隷、娼婦まで依頼されればなんでも運ぶ。

 「着手金はわ♡た♡し♡」ということで、そこは美少女文庫。もちろん、ご期待の展開はある。実はちょっとスカーレットはフライング気味なところがあり、グスタフは着手金を取る気はなかったのだが、着手金をしっかりと前払いしてもらった後、娼婦に扮したスカーレットを祖国まで送り届けることになる。

 スカーレットの祖国に向かう様子は、まるで愛の逃避行。ベルヌープからの追手が迫る中を、二人は命がけでバスティアを目指す。その途中でやることはやっており、二人は次第に愛し合うようになる。つまり体の関係から入る心の関係というわけだ。しかしスカーレットは一国の姫。グスタフは祖国を持たない平民のファクトル。果たして身分違いの恋はどうなるのか。

 意外にスカーレットの両親(王と王妃)がいい人で、グスタフは命がけで姫を脱出させた英雄として扱われ、物語は結局ハッピーエンドになるのだが、二人が愛しあったのは、心理学でいえば、吊り橋効果じゃないかと思うんだけど。男女が共通の危険な体験をした場合に互いの好感度が増すというあれだ。この作品は、一種のボーイミーツガールものかな。いやもうグスタフの方は、ボーイ(スカーレット17歳、グスタフ22歳という設定)というような年齢じゃないけど・・・。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


コメント
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