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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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怪物はささやく

2017-07-01 14:55:50 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)
クリエーター情報なし
東京創元社

・(著)パトリック・ネス、(原案)シヴォーン・ダウド、(訳)池田真紀子

 この作品の成り立ちは少し変わっている。原案のダウドは、まだ40代の若さで既に亡くなっている。このダウドの構想メモを、パトリック・ネスが引き継いで生まれたのが本書である。

 主人公は、コナー・オマリーという少年。両親は離婚し、現在は母親と暮らしている。しかし、母親は闘病生活を送っており、体調はとてもよくない。彼のめんどうを見るために祖母が手伝いに来るが、コナーは祖母とはあまり馬が合わないようだ。

 そんなコナーの前に「怪物」が姿を現すようになる。「怪物」は彼に3つの物語を話すが、4つ目の話はコナーが語るように要請する。

 精神分析で有名なユングの学説には、「影」というものがある。普段表に現れている「自我」の下には「無意識」の領域が大きく広がっているのだ。ところが、その「無意識」の領域から、押さえつけられていたものが分化して、浮かび上がってくることがある。それがユングが「影」と呼んだものだ。ここに出てくる「怪物」は明らかに少年の「影」だろう。

 作品の最後には、この押さえこんでいたものが明らかになる。コナーは、一連の出来事により、自分の心の奥底にあるものを認識するのだが、それはとても辛いことだった。しかし、彼がこれからの人生を生きていくためには絶対に必要なことだったのだろう。その意味では、この物語は、コナーの通過儀礼の物語なのかもしれない。

☆☆☆☆

※初出は、「本が好き!」です。

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