私の大学受験のときの話である。受験当日、試験が始まる前に、念のためにトイレに行っておこうと、トイレを探していた。今はどうか知らないが、当時は受験生に対するサービス精神というものは微塵もなかったようで、どこにトイレがあるかも、どこにも掲示がされていなかった。
ようやくトイレのあるらしき場所を発見して、そこへ行こうとすると、態度のいかにもえらそうなおっさんが、「ここから入ってはいかん!」とこれまたえらそうに言う。態度から推察するに、どうも試験管の一人のようだ。「トイレを探している。」と言っても、だめだの一点張りである。「どこにトイレがあるのか?」と聞いても「そんなこと知らん!」とけんもほろろで、やたらと態度がでかい。
こんな人間失格のやつのいる大学だったのかと少々がっかりしたのと、カッカしていたことが、かえって硬さがとれて、受検では良い結果につながったのかも知れない。
後で聞いた話では、当日は、私の受けた学科の教員は、学生運動の影響で、大学に出て来れなかったため、他の学科の教員が試験を仕切っていたらしい。(実際、私が大学・大学院時代にお世話になった先生は、このおっさんとは正反対の、親切で尊敬できる方でした。)その後、あのえらそうなおっさんには出会うことはなかったが、いったいどこのどいつだったんだろう。
※
本記事は、2006年05月13日 で「時空の流離人」に掲載したものに加筆訂正を加えたものです。
○関連過去記事
・受験宿にて(思いでシリーズ9)
○姉妹ブログ
・時空の流離人
・本の宇宙