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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

銭形平次捕物控 095 南蛮仏

2021-11-19 08:31:06 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この副題をみて、ピーンと来る人もいるだろう。キリスト教が日本に渡ってきた後、禁教となったので、地下にもぐり、隠れキリシタンとなった。密かに信仰しているため、観音菩薩に似せたマリア像(マリア観音)などを祀っていたのは有名だ。でも当時のキリスト教は植民地化の先兵。キリスト教と知らない蛮人たちに、正しい神の教えを広めるというはた迷惑な考えでやってきたのだ。だから為政者は危険を感じ禁教に指定したのである。しかし、素朴な庶民たちは、なぜかキリスト教に帰依してきた。この話もそのキリシタンに関係するものだ。

 この物語は、いつものようの八五郎が平次の家に飛び込んでくるところから始まるのではなく、いきなり屑屋の周助が殺されたというところから始まる。彼は、転び切支丹と宗門御改めの台帳に載っており、祀っているマリア観音の台座には百両もの大金が隠されていた。

 周助は三軒長屋の真ん中に住んでおり、その両隣のどちらかのうち先に帰ってきた方が犯人だと目されていた。いつものように、平次の敵役、迷探偵役の三輪の万七とその子分のお神楽の清吉が、左隣に住んでいる蝮の銅六をしょっぴいたが、大体万七のやっていることは、無実の人間を冤罪でしょっぴくこと。この時点で真犯人は、右隣に住んでいる魚屋の伝吉だとおもいきや、実は・・・。

 でもやっぱり、三輪の万七は平次の引き立て役だった。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 216 邪恋の償ひ

2021-11-15 08:34:11 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この話も、一連の銭形平次捕物控の中の話と同じく、八五郎が平次の家に飛び込んでくるところから始まる。

親分、逢つてやつて下さいよ。枝からもぎ立ての桃のやうに、銀色のうぶ毛の生えた可愛らしい娘ですがね


八五郎が、永代橋の欄干で水の流れを見つめていた娘を連れて来たらしい。八五郎が可愛らしい娘に弱いのは相変わらず。

八五郎が言つたもぎ立ての桃は良い形容詞でした。化粧もろくにしないらしい處女の肌には若さが馥郁ふくいくと匂つて銀色のうぶ毛の見えるのさへ何んとも言へない新鮮さです。



 娘は、板屋八十郎という深川佐賀町に住む三千五百石の大旗本の姪で、4日前に、叔父が永代橋から、馬に乘つたまゝ、大川に落ちて亡くなったというのだ。板屋の家に離家に杉本という先代順三郎樣の謠の師匠が住んでいたが、こんどはその杉本が自害したというのだ。

 結局、平次はこの事件に乗り出すことになるのだが、事件の背景には板屋家のお家騒動と言うか乗っ取りのようなことがあった。平次は事件の真相が分かってしまったのだが、結局は、知らぬ存ぜぬを決め込む。

あつしは何んにも言やしません。武家の意地や體面や、つまらねえ義理は大嫌ひだが、旦那のなすつたことは無理もねえ。

 

俺は昔から言つてる通り、武家のイザコザは大嫌ひさ。



 平次には、こんな割り切ったところがある。他の話でもこんな場面は見られるのだが、テレビドラマではあまり分からないかもしれない。でも、原作の方を読むとよく分かる。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 267 百草園の娘

2021-11-05 08:28:58 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

「親分、あつしの身體が匂やしませんか」



 この話も八五郎と平次のいつもの掛け合いで始まる。面白いのは平次の返し。

「さてね、お前には腋臭が無かつた筈だし、感心に汗臭くもないやうだ、臭いと言へばお互ひに貧乏臭いが――」



 なんだか平次、八五郎をからかうのが生きがいになっているようだ(笑)。

 それにしても、八五郎が若く美人な娘に弱いのは相変わらず。こんどの相手は、板橋の百草園の娘お玉らしい。百草園というのは、私設の薬草園で、この百草園は本草學者小峰凉庵が生きていた1年前までは、加賀家の庇護を受けていたが、今はもう援助もなくなってしまったようだ。

 お玉はその小峰凉庵の忘れ形見で、八五郎に言わせれば生身の辨天樣と言う位に美人の娘らしい。そのお玉を争って、凉庵の内弟子横井源太郎と打越金彌の二人が争っていた。

 この百草園を舞台に連続殺人事件が起こる。まず、横井源太郎が毒殺され、下男の爲吉が匕首で腹をえぐられ、打越金彌が毒殺される。

 この事件に乗り出してくるのが平次なわけだが、事件の真相を見抜いた平次は、そのまま帰っていく。平次は、四角四面にそれが法に定められているから、犯人を逮捕するのが自分の仕事だ、というような今の刑事ドラマのような真似はしない。それどころか、事件の謎解きをしても、殺されてもいいような奴が殺された場合は、「オラ知らね」とばかりにケツをまくるのだ。これも平次の魅力の一つだと思う。

「それでお仕舞ひさ、さア、歸らうか、八」
 平次はもう立上つて歸り仕度をするのです。
「下手人は親分?」
「横井源太郎の幽靈とでもして置け」
☆☆☆☆

 

 

 

 

 

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半七捕物帳 45 三つの声

2021-11-01 09:09:03 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この話も、半七老人が岡っ引き時代の話を、私に語るという形式のものだ。最初にそんな場面はなかったので、この話は違うのかなと思って読んでいると、最後に、その場面が出てくる。半七捕物帳には色々なパターンがあるが、典型的なのは、最初と最後に、半七老人が私に語っている場面が出てくるがいくつか例外もある。この話はその例外のひとつだろう。

 さて、の方だが、田町に住む鋳掛屋庄五郎が川崎の厄除大師へ参詣するのだが、同行者は、鋳掛職の平七と、建具屋の藤次郎。タイトルの「3つの声」とは、庄五郎の家人が、この3人が〇〇はどうしたかと言う声を聞いたというもの。3人は大木戸のところで待ち合わせをしていたが、誰も他の者が来なかったらしい。

 ところが、夕方になって、鋳掛屋庄五郎の死体が芝浦の沖に浮きあがったのだ。果たして犯人は誰か?

 ところで、こういったものには、話を盛り上げる役として、迷探偵が出てくるのが普通だ。この話にも、高輪の伊豆屋弥平の子分で妻吉という迷探偵が出てくる。どれだけ迷探偵かというと、誤認逮捕で、無実の人間をふん縛るくらいだ。江戸時代は、いくら誤認逮捕しても、特に問題はなかったのだろうか? もっとも、史実によれば、岡っ引きにさえ逮捕権はなかったということだから、ましてや下っ引きが、勝手に人をふん縛れるわけはない。

 このように真面目に見れば、ツッコミどころは多いが、それでもちょっとした伏線が話の中に潜んでいるのでこれを見つけるのも面白いと思う。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 071 平次屠蘇機嫌

2021-10-14 10:40:51 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

この話は、平次の新年を描いた作品です。年始廻りを終えた、平次と子分の八五郎。その帰り、平次は、「さざなみ」という新しくできた料理屋の前でこう言います。

「旦那方の前ぢや、呑んだ酒も身につかねえ。ちょうど腹具合も北山だらう、一杯身につけようぢやないか」



 これを聞いて八五郎は喜びながらも不思議がります。

ツヒぞ 斯んな事を言ったことのない親分の平次が、與力笹野新三郎の役宅で、屠蘇を祝ったばかりの帰りに、飲み直そうという量見が解りません。



 平次、与力の笹野のところで振舞われた屠蘇が効いたのか、完全な酔っ払いです。例えばこんな具合です。

散々呑んだ足許が狂って、見事膳を蹴上げると、障子を一枚背負ったまゝ、縁側へ転げ出したのです。

そして帰りに、店が落とし玉として配っている手ぬぐいを、白地のやつではなく浅黄のやつをよこせと言い張ります。

 ところが、神田が近くなると、急に平次がしゃんとします。

「俺は三猪口とは呑んぢやいねえ」



 実は平次は、「さざなみ」の変な所に気が付き、一芝居うったのでした。もちろん八五郎は気づいていません。ちょっとした異変に気付く、これが名探偵の条件なのでしょう。これが、大捕物に繋がります。でも平次に欲はなく、この事件を自分の手柄にはしませんでした。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 096 忍術指南

2021-10-10 08:41:17 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 なんと、平次と子分の八五郎が忍者に弟子入りした。弟子入り策は左内坂の浪人成瀬九十郎。忍術にも流派は色々あるが、平次が弟子入りしたのは、伊賀でも甲賀でもない霞流という珍しい忍術。成瀬九十郎には、お加奈という娘がおり、寂しい感じだが、なかなかの美人。八五郎は、いつものようにこの娘にご執心。八五郎に言わせれば、お加奈は夕顔の花のようだということらしい。二人は、次平と五郎八と言う偽名で忍術道場に入門する。(ものすごく安直な偽名の付け方のような気がするが)

 一方そのころ、江戸では山脇玄内という泥坊が世間を騒がせていた。主に、高家大名や大町人を襲い、奪った金を貧乏人にばらまくのだから世間から喝さいを受けていた。

 平次が忍術道場に入門したのは、奉行所から、謀反むほんの企てがあって大変なので、中に入って探るように命じられたからだ。そのうち、平次は、成瀬九十郎こそ山脇玄内ではないかと思うようになるのだが、事件は意外な方向に動く。

 銭形平次の物語には、平次のライバル?として、名探偵ならぬ迷探偵が出て来て、話を盛り上げている。有名なのは、三ノ輪の万七だが、この話ではなんと八五郎がその役目を引き受けている。なにしろ無実の成瀬九十郎とお加奈をふん縛っているのだから。

「お加奈は泣いていましたぜ、可哀想に」
「俺はただ泣かせただけだが、お前は縛ったじゃないか。いずれにしても夕顔の花とは縁がないよ、諦めるがいい」



 まだまだ八五郎には、春は来ないようで・・・

 しかし、すっかり銭形平次に嵌ってしまったようだ。1話あたりが短くすぐ読めるのもいい。時代考証的には、少々変な点もあるのだが、フィクションとして読めば、なかなか面白い。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 210 飛ぶ女

2021-10-06 10:53:02 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

「親分、お早やうございます。今日も暑くなりさうですね」
 御馴染の八五郎、神妙に格子を開けて、見透しの六疊に所在なさの煙草にしてゐる錢形平次に聲を掛けました。
「大層丁寧な口をきくぢやないか。さう改まつて物を申されると、借金取りが來たやうで氣味がよくねえ。矢つ張り八五郎は格子を蹴飛ばして大變をけし込むか、庭木戸の上へ長んがい顎を載つけなくちや、恰好が付かないね」



とこのように、物語は平次親分と、子分の八五郎の掛け合いで始まる。二人の掛け合いは、話の中でもいたるところでみられるが、これらも銭形平次の魅力の一つだろう。

 さて事件の方だが、藥研堀に住む旗本の石崎丹後の紛失物を探し出せば、褒美の金が百両もらえるというのだ。八五郎の叔母が世話になっている大家が、石崎家の用人と眤懇だったことから、この話が、平次に回ってきたという訳だ。

百兩といふ金があれば、半歳溜めた家賃を拂つて、女房のお靜に氣のきいた袷を着せて、好きな國府の飛切りを、尻から煙が出るほどふかしても請け合ひ九十七八兩は殘る勘定だつたのです。惡いことを大眼に見て袖の下かなんかを取るのと違つて、チヨイと物を搜さがしてやつて、百兩の褒美を貰ふのは、良心に恥ぢるほどの仕事ではないやうに、八五郎の太い神經では感じたのです。



 つまり、平次は貧乏だということ。江戸時代の岡っ引きは、奉行所に雇われているという訳ではなく、奉行所に勤める同心などの役人から私的に雇われた存在である。だから奉行所から給料は支払われなかったので、役人から小遣いをもらっていたが、その金額は驚くほど安かった。当然それだけでは生活が出来ないので、女房に店をやらせているのが常だったが、平次のおかみさんのお静さんには、これまで読んだ限りではそんな記述は見当たらなかったので、平次の無精さとも相まって、かなりの貧乏暮らしをしていたんだろうと推察される。

 さて、百両の探し物には心を動かされなかった平次だが、無報酬の玉川一座の事件の方には心惹かれる。玉川一座の花形・燕女が「殺されるかもしれない」というのだ。

 それから二三日、こんどは富澤町の和泉屋のところに泥棒が入り、番頭が殺される。和泉屋というのは、金貸しで繁盛した家だ。

 この三つの事件、石崎丹後の事件、玉川燕女の事件、和泉屋の事件がやがて一つに絡まり、平次の推理が冴える。そして最後に残るのは、八五郎の失恋。それにしても八五郎、惚れっぽいね(笑)

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 100 ガラツ八祝言

2021-09-29 08:34:27 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 なんと、平次の子分のガラツ八こと八五郎が大店の酒屋・多賀屋に婿入りするという。もちろんそんな訳はない。お福という多賀屋の娘が、婿をとるというので、ガラツ八がある事情から途中まで本当の婿・錦太郎の身代わりになったのである。

 このお福、金沢町小町と言われる美人だが、評判の蓮っ葉娘。ちなみに蓮っ葉娘と言う言い方は、意味は見当がつくものの、最近はあまり使わないので、一応調べてみた。

 蓮っ葉娘とは、下品な娘、浮気娘だという意味だそうである。前の方の意味もあるのかもしれないが、おそらく後ろの方の意味が強いだろう。

 ところで、お福が匕首で切られ、錦太郎も脇差を投げつけられて怪我をする。出口は20人もの下っ引きで固められているので、怪しい人間は外に出られなかったはず。いったい犯人は誰なのか?

 この祝言には大きな裏があった。平次は、傷害を負わせた人間を捕縛せず、その原因となった連中に脅しをかける。

 もちろん事件の方は解決しているのだが、そこから一歩踏み込んで、裏の事情の方も解決する。これが平次の魅力の一つだろう。そう言えば、この話では、平次、銭を投げなかったなあ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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半七捕物帳 64 廻り灯籠

2021-09-24 10:27:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この作品もいつものように、半七老人が岡っ引き時代の思い出話を作者に語るという形式のものだ。

 この話は、半七老人が「おかしい話」と前置きして語るのだが、確かにおかしい。

 半七老人の言によると、

石が流れりゃ木の葉が沈むと云うが、まあ、そんなお話ですよ。泥坊をつかまえる岡っ引が泥坊に追っかけられたのだからおかしい。泥坊が追っかける、岡っ引が逃げまわる。どう考えても、物が逆さまでしょう。そうなると、すべてのことが又いろいろに間違って来るものです。(後略)



 おまけに、半七が他の岡っ引きの子分にふん縛られるのである。

 今回の事件の中心となるのは二代目三河屋甚五郎(通称は三甚)。芝口の岡っ引きのようである。事件は、この三甚が本石町無宿の金蔵を捕まえたことに端を発する。酔わせて三甚は金蔵を捕まえたのだが、逆恨みされ、こんなことを言っていたらしい。

こんな駈け出しの青二才の手柄にされちゃあ、おれは死んでも浮かばれねえ。こん畜生、おぼえていろ。おれが生きていればきっと仕返しをする、死ねば化けて出る、どっちにしても唯は置かねえから覚悟しろと、おそろしい顔をして散々に呶鳴ったそうです。



 ところが、この金蔵が仲間と一緒に破浪する。つまり、追いかけるのが金蔵で、逃げ回るのが二代目三甚というわけである。

 半七は先代の三甚に世話になったことから、二代目三甚の保護を引き受ける。これを半七に依頼したのは、神明前でさつきと言う小料理屋をやっているお力。お力の娘お浜と二代目三甚はいい仲なのだ。

 ところが、二代目三甚の行き先を追っているうち、戸塚の市蔵と言う岡っ引きの子分に半七は金蔵と間違われふん縛られてしまう。どうも、金蔵の人相書が、見方次第で半七に似ていたらしい。半七の顔を知っている市蔵や古参の子分が留守だったのもあったようだ。もちろん帰ってきた市蔵は大恐縮。あわてて縄を解くように子分を叱りつけた。

 金蔵の方にも、いろいろあったようだ。半七は最後にこう言っている。

人間万事廻り燈籠というのは、こんな理窟かも知れませんね
☆☆☆☆
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銭形平次捕物控 051 迷子札

2021-09-20 11:14:04 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 最近、伝七捕物帳をよく読んでいるが、これは捕物帳では伝七と双璧を成す銭形平次の捕物帳。この話は、平次が子分のガラッ八こと八五郎と旗本のお家騒動に挑む話だ。

 話は八五郎が平次の家にやってくるところから始まる。

「親分、お願ひがあるんだが」



 平次は、また八五郎が小遣いをねだるものと思ったが、八五郎はそうじゃないという。

「親分、冗談ぢやない。又お静さんの着物なんか剥いぢや殺生だ。――あわてちやいけねえ、今日は金が欲しくて来たんぢやありませんよ。(以下略) 」



 しかし、平次どれだけ貧乏なんだ。まあ、あれだけお金を投げていれば貧乏になるよな。それにしても平次の恋女房のお静さん、結構苦労してたんだね。

 さて事件の方だが、左官の伊之助親方の息子乙松が行方不明になる。この事件を伊之助の娘お北の頼みで平次たちが調べ始めるという訳だ。ところが今度は、伊之助が殺される。事件の後ろにあったのは、大身の旗本のお家騒動。

 最初に、平次が御家騒動に挑むと書いたが、解決まではしていない。事件の謎解きをしただけである。この結末は、当時の身分制度から仕方が無いかもしれない。平次としてはその中で最適解を求めたという感じだ。

「親分、敵は討ったんですか」


むくれる八五郎に平次は、苦笑してこう答える。

「討ちかねたよ。見事に返り討さ、武家は苦手だ。町方の岡っ引なんか手を出すものぢやねえ」

☆☆☆

 

 

 

 

 

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