シリーズ6作目、これで既刊は全部読んだ。まだ解決してない事件があるしアサドの過去も少しずつしか明らかになってない。話は続くしかないので楽しみに待っている。
映画化されているというので、ビデオを借りに行った。8月3日に並んだばかりで、あまり残っていなかった。1話の 一檻の中の女一 が目当てだったが全部貸し出し中で、二話の 一キジ殺し一 しかなかった。
貸し出して残ってないと言うのはQのファンが多いのかなと密かに嬉しかったが、
「ミレニアム」のスタッフ製作ということで、隣り合うスエーデンとデンマーク、同じ様な色調の海や森の匂いがした。
映画になるとやはり「ミレニアム臭」というのか、原作にあるチームの雰囲気作りか猟奇的で、グロテスクで、暴力的なシーンが多い、これが見せる技術かもしれないが。
原作もそういった犯罪がテーマなので、ストーリーを損なってはいない。読んでいるときよりも映像で見ると生々しく、原作はこういうことだったのかな、違うのではないか、自分は作者の意図をただ辿っっただけで謎解きやチームの働きに付いてきただけだったのか、などと映像から受けたショックが大きく考えてしまった。映画の出来は悪くなく面白かったが、それでも改めて心地よい文字の世界を見直してしまった。
ただ漠然と想像していた、カール・マーク、アサド。ローセが俳優であっても実体として感じられ、見る目的それでよかった。特にアサドは、削ったような細身のアラブ人で、ラクダの例えもぴったりな人だった。
観光客もよく訪れるという、今回は風光明媚な史跡も多いボーンホルム島が舞台だった。山道で美しい少女が木から逆さ吊りになった形で死んでいた。事件は20年近く前で地元警察でもすでに捜査の手は離れていた。カールのところにボーンホルム警察の警官から電話がかかる。「私が捜査してきた件をぜひ特捜部Qに引き継いで欲しい」そういってきた警官ハーバーザードは、マークに断られたこともあり、退官式当日に職場の上司やわずかな列席者の前で拳銃自殺をした。彼は今までコツコツと調べていて、済んだ事にしたい仲間からが爪弾きにされていた。
「放って置くのですか」腰の重いカールをいつものようにアサドとローセが立ち上がらせる。
未解決事件を扱う特捜部Qは、常に過去に遡ってわずかな手がかりから出発しなくてはならない。推理して、調べて動かぬ証拠を見つけ出さないといけない。だが調べる価値があるのだろうか。「警官が命をかけたんですよ」
まず自殺した警官が集めに集めたガラクタやメモの箱を地下室まで運び入れる、地下にある特捜部Qの部屋に入れると身動きがとれないくらいの量があった。
しかし、アサドとローセ、それに押し付けられてきた新米のゴードンの手で、殺された少女とその頃関わりがあった人たちなどが次第に浮き彫りになって来る。だが時間がたっている、少年は大人になり。大人は初老になり、手掛かりは消えかかっていた。
ひき逃げ事件だった。そうとなれば誰が犯人でどういう経緯だったか。やる気のなかったカールは少女殺人事件と決まり俄然やる気が出てきた。「罪もない少女を無残に吊るしたのは誰だ」そして、複雑な背後に群がる人々の中に入っていく。
当時少女がいたフォルケフォイスコーレというのは成人教育機関で、そこの同窓生、岬に固まっていた反戦ヒッピーたち、時間がたってヒーリング団体から一種の宗教団体になった一団とその教祖。自殺した警官の息子と一時付き合っていた男性などがいた。睡眠療法の医者も挙がってくる。カールとアサドは新興宗教の教義を知るために天文学者の話を聞く。この説はとても面白い。
古代から全ての宗教の始まりは太陽と天のめぐりだという、そこになんらかの手がかりは無いか。
一人の男が浮かぶ、今は教祖になり自然と一体になれば平和で安らかな境地に達することが出来る。それを瞑想と祈りで日々実践する団体を作っている。若い頃はハンサムで目に強い魅力があり女に不自由しなかった、死んだ少女と関わりもあった。
捜査はこの男性を目指して進んでいく。証拠はないもののカールは何らかの繋がりがあると思い、行方を捜し求める。
教団はヨーロッパでも信者を増やし続けていた。名もそれらしく変え、彼は世界の宗教を一つにしたいと大望を抱いていた。
彼の現在の名前がやっと分かる、しかし事件は複雑に絡んで、カールとアサドは命をかけて縺れを解こうとする。
ますます重くて長くなったポケミス620ぺージの終わりに来て、単純そうに見えた事件は、実はねじれにねじれていてカールとアサドを駆け回らせ、やがてこれまでの幕切れのように、2人は負傷しつつ犯人を追い詰める。ねじれて絡んだ人間関係がミソ、予想外な部分は、書けないけれどあっと驚く。
新興宗教が、それなりに古代の信仰といかに結びついているか、人間の生命が宇宙のめぐりにどんなに関わりがあるか、複雑さはハンパではない。
学者に教わり、医師に訊き、Qの三人は睡眠療法の患者になり三日ほど後まで宙にさまようような副作用に悩まされたりする。
どの作品も社会に関わる現代生活を描いてきている。
多くを占める作者の宗教についての語りを読むことは、ミステリの要素として、深い動機を抜きには語れないけれど、この作品を読むと、他の作品にもあるように北ヨーロッパでも例外なく人は悩み、やはり宗教に救いを求めているのかと感じる。宗教活動か、金集めか、1歩間違えば詐欺か、危ない境界で起きた事件は、執拗な調査とチームの活躍で死んだ警官が関わった人々とともに悲劇的な幕を下ろした。
アサドのラクダのたとえが、真面目に真剣に思いやりがあるだけに聞いたときは噴き出してしまう。
書き出しおこうかと思ったが余り多くて書ききれなくなった。
ユッシ・エーズラ・オールスンさんは、大きな賞を受け欧米だけでなくアジアでも大ベストセラーになり、勲章もうけたそうだ。お忙しいでしょうが次を早くを待っている。ラクダの数は多ければ多いほどいい。
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