空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「特捜部Q -キジ殺し-」 ユッシ・エーズラ・オールソン 早川書房 ポケミス1853

2012-11-28 | 読書


2011年11月発行だから、話も新しい。それでも490ページは長いので、話は相当多岐に亘る、登場人物も多いのかと思ったが、まったく見当はずれで読みやすかった。

読みにくい名前に慣れたということもある。

* * *

ミレーデ・ルンゴー事件を解決して、特捜部Qのカール警部補は名前を知られるようになっている。

ノルウェーから視察団がくるということで、地下の部屋を整えるのに大童、そこに新人のパンク頭の女性ロースが配属されてくる。一癖ある彼女もカールにとって悩みの種になりそうだった。が、なぜかアサドとは気が合い、カールの課題も軽くこなす。なかなか有能なところがあった。

今回の特捜部Qは、富裕な家庭の師弟が通う寄宿学校で20年前に起きた事件を調べる。

犯人は10年前に自首して収監されている。しかしカールの机の上にはどこからか来たのか分厚い事件関連ファイルがあり、犯人にもいささか疑問がある。
この事件は根が深いように感じられた。


20年前に兄妹が殺され、家庭は崩壊した。妹のボーイフレンドは警察官になっていた。

当時の家を訪れたカールは廃屋を調べ、事件から手を引こうとした。犯人は自首しているのだ、アサドは言った「理解できません。」「だって被害者のために何か出来るのはわたしたちだけではありませんか。」

寄宿学校の卒業生たちは、それぞれ事業で成功し、親から譲られた以上の名声を得、社会の上層部に大きな影響力を持つようになっていた。
現在でも、当時の事件に関わった5人が集まって、余暇は広大な土地に建つ別荘で過ごし、株取引で成功したウルレクが、世界規模で集めた猛獣や鳥などを放して狩り、そこでさまざまな犯罪隠匿の相談をしていた。

彼らは寄宿生時代から、弱者を見つけて殴打し死に切れないものには大金を渡して口を封じ、死んだものは密かに処分していた。

寄宿生仲間にキミーという女性がいた。彼女はグループの中でおとりになって被害者をおびき寄せ、罪の意識なく最後には死ぬほどの暴行を加える役だった。
しかし、仲間に犯され妊娠する、子供に愛情が芽生え始めたころに、妊娠を封じたい仲間に暴行を受け流産する。その後、その恨みから身を隠し、仲間を狙い始める。

使いきれない財産を犯罪に使い、異常な性癖を満足させてきたグループをカールたちは追う。
キミーも狙っている。

カールは類似の事件から手がかりをつかむ。

邪魔者は仲間でも殺す犯人たち。犯罪捜査は徐々に絞られ、「Q]とキミーは命の危険を感じつつ最後の戦いに臨む。

* * *

文中に交互に現れる犯罪者たちの現在と、カールたち特捜部の捜査。

社会では学閥になっている、寄宿生たちのかばいあう関係は、警察の中まで及んでいて妨害に会い、捜査は難航する。

猟奇的なおぞましい話が延々と続き、このシリーズを読み始めたのは選択ミスではないかと思うほどだった。

今回はこの点で少し私的な評価が下がる。でもあと一作出ている。やはり締めとして読んでおこうかなと思っている。


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繋ぐ

2012-11-27 | 日日是好日



陸と陸とを 繋ぐ
汗と汗とを 繋ぐ

写す人と写される人
若者と若者
今日と明日

人が集まり
生きていることを 繋ぐ



垂水港 よさこいフェスティヴァル



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「リオノーラの肖像」 ロバート・ゴダード 文春文庫 加地美知子訳

2012-11-26 | 読書



2011年の読書から

ゴダードの文庫本を見るたびに、この分厚くて、上下に分かれている本を読んでみたいと思っていた。読もうというより、そのうち最後までめげずに読んでみたい、と思っていた、ずいぶん前から。

さぁ、と思って5作品を買ってきた。初めて読むなら面白くなければ、といつかどこかで聞いていた「リオノーラの肖像」から読み始めた。

面白くてやめられず、夜更けまでかかり、読み終わったら目が疲れてバタンと寝てしまった。ストーリーは余り入り組んでいるので長く長く書いてしまいそうだし、さすがにうまく要約されている、訳者のあとがきを参考に写させてもらった。

* * *

ここに紹介する「リオノーラの肖像」はゴダードの二作目の作品。長い複雑な筋のミステリで、物語は、リオノーラ・ギャロウェイという七十歳の女性が、その人生のほとんどをついやして解き明かした秘密を娘に語り聞かせる形式をとっている。



ハンプシャーのミアンゲイトという貴族の館で、意地の悪い義理の祖母、レディ・パワーストックに苛められながら不幸な生い立ちをしたリオノーラは、幼いころから多くの疑問を抱え込んでいた。

彼女が生まれる前に第一次大戦の激戦地ソンムで戦死したという父親のこと、父の墓はどこにあるのかさえわからない。
彼女を生んですぐに亡くなったという母親のこと。

彼女が生まれる前の第一次大戦中にミアンゲイトでおこったという殺人事件。

彼女自身の出生をめぐる謎や、ミアンゲイトにたちこめるミステリの影。

が、そうした疑問や謎にたいする答えは決して彼女に明かされることはなかった。

思いもかけず幸福な結婚のチャンスに回り逢い、一人の子供に恵まれたリオノーラは、そうした疑問もふくめ、不幸な過去のいっさいを記憶から消しさろうとつとめる。

ところが、義理の祖母の死後ひょっこり訪ねてきた父親の戦友と名乗る男から、リオノーラはそれらすべての疑問に答えるという長い物語を聞かされる。

それでもなお解き明かされない謎や、あらたに生じた疑問が彼女に残った、だがそのあとの何十年ものあいだに折にふれて、秘められた真実が少しずつ姿をあらわし、七十歳になった彼女のまえに、ついに全貌が明らかになる。

* * *

あらすじは訳者の加地さんに助けてもらっても長い。

舞台で言うなら上手にリオノーラと娘のペネロピが話している、そこにスポットが当たったまま、舞台には厚い歴史の緞帳が幾重にも重なっていて、開いていく。
それにつ背景が変わり、それが謎を解く話につながっている、という入り組んだストーリになっている。
しかし、それが意表を衝かれるできごとであったり、運命の導きのようであったり、人の善意が作り出した謎や、利己的な欲から生まれたものだったり、あきない重厚な話が続いていく、最後はそれが全てつながって、感動的に幕が閉じる。

長いがとても面白かった。

続いて「闇に浮かぶ絵」上下。「千尋の闇」上下。「石に刻まれた時間」を読んだ、
「惜別の賦」は積んである。早く読まないといけないが、なにしろこれも5百ページを越す。


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「雲の墓標」 阿川弘之  新潮文庫

2012-11-25 | 読書



最近読んだのに記録がない。フォルダーの整理をかねて探してみたら、見つかった。
昨年一昨年は疲れてメモする気力がなかったので、読みっぱなしの本が多い。記録しようとは思って書き始めても、書き終わってないものが10冊近くあった。これは途中まででも別のホルダーに入れておけばかすかに記憶は残るだろう。
半分は未完もひどい状態なので削除した。再読して書くことがあるかどうか。
最近読んだ気がしていたのに、日付が昨年や一昨年になっている、日が過ぎるのは早い、まさに矢の如し。

「雲の墓標は昨年読んだ。紛れて無くなる前に載せておこう。




昭和31年4月 新潮社発行 
平成12年2月 69刷 新潮文庫



「永遠の0」を読んだので思い出して読んでみた。

若い頃に読んだときは、感傷的な読み方で、主人公の吉野が次第に死を肯定して特攻機に乗る、友人の藤倉は批判的でありながら、事故死をする。学府から離れた若い死に胸が詰まった記憶がある。

戦後も遠くなったといわれ、自由を謳歌できる世代が育っている今、読んでみるとまた違った感慨がある。

戦争の経過や、戦況は「永遠の0」でも少しは理解できるが、海軍予備学生は、兵学校卒には軽く見られ、命を兵器にする。

学生生活(学問)に心を残しながら、次第に感化されていく様子が痛ましい。

渦中にあればこのように、自ら命を捨てることを次第に肯定するようになるのだろう、一種のマインドコントロール状態で、敵機に向かって突っ込んで、命を捨て未来を絶つことも厭わなくなるのだろう。

こういった気持ちは、平和になった今やっと気づくものなのだろう。

人権・自由が保障されている今、放縦ともいえる生き方さえ許されている。
たまにこういう本を読むことで、改めて自分を考える時間を持つことになった。

薄い文庫だが、読むことで記憶も薄れ掛けた、戦争があった事実を振り返ってみる。
楽しみのための読書にも、こんな短い時間があってもいいと思った。


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「キングの死」 ジョン・ハート  ハヤカワ文庫 

2012-11-24 | 読書


これが、ハートの話題になったデビュー作。
やはりじっくり読ませて厚みがある。

ジョン・ハートは1965年生まれ。
この本は2006年発刊 当然パソコンも携帯電話も出てくる。海外のミステリは、過去の名作、というのを最近読んでいるので、一気に今の世界に戻った。

分厚い文庫で600数ページ


* * *


ワークは弁護士の父が持つビルの中に、自分も事務所を持つ弁護士だった。
父親は極貧から身を起こして、今では町で知らないものはない最も裕福で、有能な成功者だと見られていた。
だが、家庭では低俗な見栄っ張りで、傲慢な専制君主だった。

ある夜、不幸な結婚から自殺未遂を繰り返す妹(ジーン)が、療養施設時代に知り合った女性と、同棲していることを知った父がそれをとがめて争っていた。とめようとして入った母に、横に振った父の腕が当たり、母は階段から落ちて死んでしまった。

父は事故だったといいくるめ、家族もそれに同意した。

亡くなった母は病院に送り、妹はその後すぐ自分の家に、ワークは幼馴染の愛人の元に行き早朝自宅に帰った。
父は電話がかかり、出て行ったまま帰らなかった。

そしてそのまま父が失踪し、一年半が過ぎた。

仕事で法廷に入ろうとしたワークに、父が見つかったという知らせが入る。

父は胸と頭を撃たれて殺されていた。


事件の夜、ワークは自宅に帰り、朝まで一緒にいたという妻の証言も、彼を犯人でないとする根拠にはならなかった。
父の弁護士から聞いたところ遺産は莫大な金額であることがわかる。
父の遺言は当然それまで知らなかった。しかし仕事柄もあり、それは通らない話だと思われた。

ワークは自分が犯人ではないと断言できる。
そうなれば考えられるのは、不幸な星の元に生まれた妹のジーンだろう。
この妹だけは命に代えても救わなくてはいけない。

彼は、自分の無実を信じない(同業者を含め興味本位で情け容赦のない)人々の中で、数少ない協力者を頼りに捜査を始めるが、次第に追い詰められていく。


* * *


ハートの作風は、人物の行動の裏に、その心理がにじみ出るような設定(町の様子や細かいしぐさ)を書くことでより感覚を増幅させる。情感豊かな筆致で物語りに引き込まれる。

ストーリーは家庭の暗部で、他人に知られたくない部分を描き出す。主人公の父親の傲慢な生き方に縛られる家族の苦しみや、自分を見失いたくないというそれぞれの葛藤が、事件の解決に向かうにつれ、露わになり闇が深まっていく。

ワークは成長過程で味わい続けてきた、不合理な父の縛から逃れ、妹とともに自立していく、家庭、家族の中のミステリでありながら、考えさせられる部分も多い。

他の登場人物も、重要な場面で心温まる役割をこなし、話を盛り上げ、解決に導いていく、とても面白く一気に読んでしまった。


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「蜩ノ記」 葉室 麟  祥伝社

2012-11-22 | 読書


「すぐ読んで返してください」と書いてある本の順番が来たので素直にすぐ読んだ。
いつも、私の読む本は、面白いよ~と話しても、回りはあまり受けてくれない。
ところがこの本の話はよく聞いた。逆に、おもしろいよ~~と男女ともに言う。
『「蝉しぐれ」版、直木賞よ』、ということでなんだかOK。

* * *

戸田秋谷は、将軍家側室(お由の方)との不義密通の罪で十年後に切腹という沙汰が下る。その間 向山村に幽閉され、三浦家の家譜編纂を命じられる。

限りある命を感じながら、自然に恵まれた静かな地で日々を送っていた。

秋谷は以前、豊後、羽根藩の郡奉行を務めていた。この村を検分し、副業に莚を編むことを奨励し、無欲で清廉な勤めぶりで、村の行き方についてよく指導し、村人に慕われていた。幽閉中であったが何事か起きると村の相談役にもなっていた。

壇野庄三郎は、奥祐筆であったが、文机で書き物をしていたとき筆の墨が飛んだ。隣にいた親友の信吾の顔にかかり裃の「拝領紋」を汚した。怒った信吾と争いになり、その末に庄三郎の居合いで放った脇差で信吾の足が切れ、彼は歩くのが不自由になった。庄三郎は切腹のはずが許され、秋谷の下に赴くことになる。事実上は三年後の秋谷の切腹までの監視役であった。
庄三郎は秋谷の書いている日記「蜩ノ記」を見せられる。そこには家譜の進捗状況と簡単な秋谷の日常の覚書だった。
秋谷の死に向かう潔さと、私利私欲を離れた静かな生き方を見ていると、あの事件はもしかして冤罪では有るまいか、という考えが浮かぶ。

郡奉行の悪辣さ、飢饉の年の年貢の取立てなど、秋谷に持ち込まれる相談事も多い。

また秋谷の罪の源になった側室のお由の方は、昔、秋谷の実家で働いていた。

正室お美代の方側との、お家騒動に巻き込まれお由の方は毒を飲まされた。秋谷は危ういところで助け、秋谷は逃げた先で護衛をして一夜をともにし、それを不義と誤解されたのだった。だがそれを逍遥として受け入れている。

お家騒動の源は家老、中根の策謀だった。彼はお美代の方を正室にしたが、これには曰くがあり、その経緯の解明はお美代の方の「御由緒書」を見ることであった。
これを巡っての命がけの攻防戦がある。

郡奉行に殺された、親友の百姓のために、秋谷の息子郁太郎は庄三郎を供にして家老に直談判に行く。そこで捕らえられ牢につながれる。

秋谷は「御由緒書」と引き換えに二人を助け出す。

秋谷は家譜の原本を懇意な名刹の和尚に渡す。

* * *

百姓、郡奉行などの殺人事件の犯人は誰か。
秋谷の罪の真相は。
「御由緒書」の行方とその内容、過去の使い途は
秋谷とお由(出家して松吟尼)とのかかわりは
10年目のその日が来たとき、秋谷は、庄三郎は、家族は

ミステリの要素もあり家族愛、お家騒動、権力争いに関わる策謀有り、なかなか盛りだくさんの内容だった。

郁太郎が家老宅に入るときなどは、「蝉しくれ」で明かりを消して船で逃げるシーンのような緊迫感がある。
ただ、完成度で言えば「蝉しぐれ」に一歩譲る。

お家騒動と家老の成功譚と一族の系譜などは少し煩雑で、将軍の来歴もあまり関心を持てなかった。

家老も最後の場面ではなぜかいい人になる。
親友の信吾との確執も解けて、信吾は協力者になっていく。

秋谷の人となりもすぐに分かるし、私淑していく庄三郎の心境も感動的だった。

限られた命を生きる心意気に、武士というものの潔さ、雄雄しさや剛さを感じ、さわやかな読後感で読んでよかった本だった。


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「水滸伝 - 輪舞の章」 北方謙三 集英社文庫

2012-11-20 | 読書

 

 


ますます面白い、と読むたびに、最後まで言うかもしれない(笑)
梁山泊の中枢人物が、やや詳しく登場する。
闘いの駆け引きも面白く、並みでない鍛え方(調練)の過酷さも窺えて、志があれば超えられるものかと思い、肉体は精神の器だと感じる。

* * *

前巻までの梗概】より
楊志は山賊に破壊された村から孤児を拾い、楊令と名づける、そして、魯智深と組んで山賊の根城・二竜山を奪い、梁山泊と絆を深めた。魯俊義の闇塩の道を清蓮寺が潰そうと画策。そこで致死軍が動き、清蓮寺の間者を殲滅させた。魯智深は少華山を訪ね、史進に危ういものを感じて王進に預ける。宋清は、柴進の密偵・礼華と知り合い、惹かれあう。宋江は形だけ礼華を妾にする。閻婆惜が嫉妬して礼華を殺し、宋清が閻婆惜を殺す。宋江は自分が殺したことにして、武松とともに放浪の旅に出る。



まずは、賄賂を掠め取った楊志の悩み。大儀のためだと思いながら、軍令に反したということを悩み続けていた。
そこに、残虐な事件がおき楊志は親しくなった魯智深とともに闘い二竜山に入る。連れ帰った孤児を「楊令」と名づけ済仁美にあずけ仮の両親になる。

魯智深は史進を見て、彼の今は強さにだけ頼ったものだと見抜く。彼を子午山の王進にあずけ、そこから武松をつれて出る。

同行の武松は鄆城の宋江に預けた。
魯智深は不穏な北の遼、契丹を尋ね、内部を探ることにする。

二竜山では食料が乏しくなり、楊志は官軍の輜重隊を襲う計画を練る、激戦の末、桃花山からの援軍も加わり、食料だけでなく二両分の銀も手に入った。帰っていく桃花山の援軍にも分けて与える、桃花山では孔明が兵の訓練に当たることになる。

清蓮寺の李富は視察の旅に出ていた。ウラの塩の道を探るのが目的だったが、目に余る役人の不正や横暴ぶりを糺すために青洲の影の軍団を使って粛清をする。
二竜山や桃花山の賊徒の仕業に見せかけるが花栄がそれを遮った。

宋江の家では妾の閻婆惜が礼華を刺し殺していた。礼華が宋江の新しい相手だと誤解し嫉妬したのだった。礼華は宋江の弟宋清と将来の約束をしていた。礼華の死で宋清は生気をなくし、宋江は閻婆惜の心情を汲めなかったことを悔いていた。

宋清を武松が打ち据え、吾に返った宋清はわずかに生きる力を取り戻す。

宋江は武松と旅立ち、朱仝は宋清と旅に出る。

* * *

遠からず粛清が必要だろう、それは開封府へもどってから、民生担当の何恭と話し合えばいい。何恭は役人を五分の一だけ減らすことを主張していた。その五分の一は全て首を打つのである。
 過激すぎる、と李富は思っていたが、つぶさに腐った役人を見ると、何恭の焦りがなんであるか、ようやく理解できた。
 開封府は栄え、豊かさの中で、果実が腐るように熟れて腐りはじめた。しかし地方は、貧しいまま腐っている。青い果実が腐っているようなものだ。


人が面白いように動く。作者は読ませるなぁと思いながら夢中になる。
関連のある本が沢山出ているのも納得。少しずつ読んで行くことにしたい。

 


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大阪駅で

2012-11-19 | 日日是好日
大阪駅で


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「月と詐欺師」 赤井三尋 講談社

2012-11-18 | 読書



とても愉快で、爽快なコンゲーム、そして復讐劇。

毒を以て毒を制す作戦、一夜で読了。面白かった。

考えなくても絵が浮かび、終章まで一気に読める、久々に感じた読む楽しみだった。

* * *

時は、戦後の混乱期。

何とか財閥の末席に名を連ねている灘尾儀一朗は、米穀商の娘に目をつけた。娘を自分のものにするために悪辣な仕手戦を仕掛けた。

世間にも認められるほど手堅い商法で財を築いていた米穀商は、破産し、灘尾に囲われた娘は自殺した。

一高に通っていた長男の瀬戸俊介は、両親の死後退学し東北の寺に入ったが、姉の遺書が届いたとき、彼は復讐を決意して還俗し、大阪に戻ってくる。
そこで、父の唯一の遺品を古物商に売る。

知恵を貸したのは、偶然知り合った春日という自動車修理業の男だった。
丸山応挙の軸が一万円の値で売れた、それを元手に春日の元に身を寄せる。

春日は、詐欺師というウラの顔を持っていた。仲間は個性的な面々で、表立っては皆、修理工だった。
春日に打ち明けて、必要な資金を提供して灘尾破滅作戦が始まる。

声帯模写のミミック、情報屋のインテリ、結婚詐欺師のジゴロ、事務と料理担当の智恵。個性的な人物が活躍する。
仲間の特技を生かし、大掛かりな仕掛けで灘尾をはめることになる。

財閥の中でも末席にいる灘尾はどうにかして、政府と手を結び関西の大手財閥にのし上がりたいと思っている。

電気事業で、新しい開発をし、軍需面で遅れている政府に繋がり、受注を受けて事業を成功させたいと思っている。
そこを狙って春日達が動く。

いくら緻密に計画しても偶然の隙は出来る。

予想しなかった出来事にもであう。


* * *


計画が成功するかどうか、実行間際のスリルは、読んでいても緊張した。
最初から、寺を離れるところから、すでになにか仕掛けが有ったらしい、話の展開も予想しなかっただけに、終わりの部分では思わず手を打った。

ストーリーの進行だけに終わらない味付けがまたいい。


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秋を彩る野菊 (宇治植物園)

2012-11-18 | 山野草
秋を彩る野菊 (宇治植物園)





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能登の旅

2012-11-17 | 日日是好日
初秋の能登を訪ねました




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「裁きの街」キース・ピータースン 東京創元社

2012-11-16 | 読書


記者ウエルズ・シリーズの4作目、これで取りあえずシリーズが終わる。

構成で見ると、粋な書き出しで、話の導入部としては、とても面白い。

先の情報屋の一件で編集長が変わり、アイビーリーグ出身の、元気のいい気の強い女性がやってくる。

体制が変わると、浮かぶ人も沈む人もあるという好例(笑)

仲間のランシングやマッケイも大喜び。

* * *

肺がんで死を前にした元警官が、ウェルズに告白をする。

15年前にチンピラを殺して、工事中だった校庭に生き埋めにしたのは、ヤクザ仲間ではなく二人の警官だという。
そのうちの一人は以前、無実のウェルズが一方的に容疑者にされた時(二作目 幻の終わり)取調べで暴力を振るわれた相手だった。

ウェルズはそのときの復讐心もあり、悪徳警官の殺人事件を明らかにしようとした矢先、部屋に押し入った暴漢ともめ、突き上げたこぶしで殺してしまう。

ウェルズは罪の意識に悩む。

悪徳警官ワッツは自己防衛とウェルズに対する憎悪のために彼を殺人罪で逮捕しようとする。
大きな警察機構の波が押し寄せる中で、行き詰ったウェルズは捨て身でt調査を始める。

* * *

今までの、もの柔らかさは、ハードボイルドに姿を変えて、彼はどうなるのか、随分ハラハラさせられる。

途中には、最終回にふさわしいちょっといい話もあって、このスリルとサスペンスがてんこ盛りの話も、一区切りが付く、これでいいかなと、落ち着いた。


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「すべてがFになる」 森博嗣 講談社 KODANSYA NOVELS

2012-11-14 | 読書



「F」というキーワードはITシステムに関わる技術系の人なら意味(謎)は簡単に解けるかもしれない。

この作品に1996年第一刷が発行された当時のインターネットシステム事情が絡まっていると知っていたら、そういう心構えで読んだだろう。

末端は使えるが、プログラミングの特殊言語や、システムの構成などはよく分からない。

それでも、パソコンを使う上で興味のある話題も多く、そういった面ではとても面白かった。

ショッキングな殺人事件は、孤島にある閉鎖的な研究所の建物の中で起き、現場は出入りをモニターするカメラでガードされているという、三重の密室で起きた。
推理小説らしい本格的な舞台設定に惹かれて選んだ。

作者も初めてだった、本の題名はよく見かけていたが、作品を読み始めた時はすでに遅く、森博嗣さんは作家活動の停止宣言をしていた。

* * *

N大の犀川工学部助教授のゼミは、恒例の夏休みの親睦会で三河湾にある孤島でキャンプをした。
この島には、真賀田四季の研究所があった、この島でのキャンプは西之園萌絵の人脈で許可されたのだった。

真賀田四季は天才少女と呼ばれていたが、14歳のとき研究所内で両親が殺され、一時彼女が容疑者として取り調べられた。
その後、容疑は晴れたが、人との接触を嫌った彼女は島の研究所に閉じ籠って、15年が経つ。

研究所は、彼女の構築したレッドマジックというオリジナルシステムで全てが動いていた。それさえあればセキュりティも万全で、日常生活も支障がなかった。
サブシステムの「エボラ」が研究員の命令を感知して働いていた。
所員は割り当てられた部屋にこもって、さまざまな研究をしていたが、他人との接触がなくても一向にかまわない、いわばオタク人間の集まりだった。

犀川と萌絵は真賀田博士に会いたいと思った。研究所では博士は一週間前から不在だった。しかし期間が過ぎても交信が出来ないのはおかしい、博士の部屋に入ろうとしたとき、博士の部屋のドアが勝手に開きそこから、運搬用のロボットに乗った、ウエディング姿の死体がゆっくりと現れた。

両手両足が切断された真賀田四季殺人事件の発生だった。

所内のシステムが止まった。一部所内で使っている外部交信用のUNIXシステムは稼動しているはずだった、がそれもダウンしていた。

メールも電話も通じなくなってしまった島の研究所は、翌日来る連絡船が頼みだった。

やっときた船で学生たちは帰り、犀川と萌絵は残り、研究員はシステムのまさかのトラブルを復旧させるために右往左往していた。

真賀田博士の部屋は常に監視され、モニターの映像は全て記録されていた。ここはパソコンで処理されていて、そのシステムは研究所からは独立していた、荷物の搬入はポストから、ドアは中からは開かなくなっていた。

レッドマジックシステムのエラーでドアが開き犀川や萌絵は中に入ってみたが、もちろん博士の姿はなく、部屋は完璧に掃除されて、手がかりになるようなものはなかった。

モニターには「すべてがFになる」という文字が点滅していた。

そこには生活の手伝いをするロボットの、ミチルが残っているだけだった。

事件当時、不在者のもう一人、所長の乗ったヘリが屋上に降りた。所長は真賀田四季の妹の「未来」がアメリカから帰ってくるのを迎えにいったのだった。だが屋上に行った人たちは、背中を指されて死んでいる所長を見つける。

内側からは開かない部屋で殺された博士、ヘリのコックピット席で殺された所長。

犀川と萌絵は考え、所員たちは みんなで作り上げたセキュリティの完璧なレッドマジックバージョン4をUNIXに切り替えることにする。かってのバージョン3は四季が作ったものだった。
リセットが成功してUNIXが稼動し、外部との連絡が取れた。警察がきて捜査を始めた。


副所長の「山根」が消えた。そして、「未来」も消えた。

山根は自分の部屋のバスルームで殺されていた、だが未来は消えてしまった。

犀川はレッドマジックのソースから上書きされたプログラムを見つける。それは同じ時間のファイルがが二つあったということだった。
それをひとつに編集している。時間表示のマジクに気がつく。

そして、レッドマジックの時間プログラミングの中では言語の二進法が16進法を使うことにも気がつく、二進法では表せない10以上の数字はアルファベットを使っていた。
彼は種明かしを始める。

「レッドマジックはトロイの木馬だ」

彼は四季のプログラムから事件の深層に行き着いた。

* * *

ストーリーは専門用語には深入りしないでも、分かりやすくて面白かった。

天才は生きにくい。

しかし真賀田四季は過酷な運命の中で天才と呼ばれる頭脳を使ってシステムを動かした。

犀川の変人具合もなかなか味があるし、萌絵の世間知らずぶりも無邪気でいい。

ストーリーに無駄がない。小説の要素はそれなりにあるし、人物の絡みもうまい具合に配置されている。
久々に推理小説の原点のような本を読んだ。

しかし、、四季の多重人格って?




余談だけれど、本の扉に引用されている文も味わい深い。

対象世界をシミュレートする脳の働きが、信号に対する回路が多いために喩えるものと喩えられるものが生まれ、代替が起こり、シミュレートを試みる。かくして、この余剰が比喩となり、抽象化を生みオブジュクト指向の考え方に綯ったのである。
(青木淳/『オブジェクト指向システム分析設計入門』)

子引き孫引きかも。(^∇^)

この言葉で難解といわれる現代詩がいかに共感しがたいものか、詩感を共有しがたいものかが少し理解できた。

個人的には、気が合うという一般的な言葉がこの比喩の尻尾には繋がっているようだ。そして科学・工学システムにも。

数年前に篠島で泊まってきた。三河湾に点在する島も、フェリーも身近に感じられて楽しかった。



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「夏の稲妻」キース・ピータースン 創元推理文庫

2012-11-14 | 読書


ウェルズ記者シリーズの三作目。

ウェルズの記者魂に触れる。

* * *

使っている情報屋のケンドリックから、上院戦に立候補中の議員のSM写真を買わないかと連絡がきた。しかしウェルズは議員のプライバシーに興味はないというので、拒否をした。

写真はライバル紙の「タイムズ」に使われて、スクープになる。

ケンドリックが殺された。

スクープを取れる写真を買わなかったのは「スター」社のウェルズだったらしいと世間に知れ渡る。

編集長は社会面より、売れるゴシップ記事を読ませる「身近な新聞」を目指していて、ウェルズとは相容れない間柄だった。

彼は仕事に対する信念とそれに絡まって起きた事件の間で、進退窮まり、殺人犯を突き止めるために動き出す。

まず、ウェルズは行方の知れなくなった、写真の女。女優の卵から探し始める。

調べを進めているうちに、スターになるために田舎から出てきて、上流階級の紳士たちの夜のために提供された、と思われる女優志望の女が見つかる。
過去、その女の田舎で、一時の気まぐれに付き合ったことで、それが婚約の儀式だったと思い込んだ牧師見習いの男も見つかる。

それは今回の事件とどう繋がっているのか。絡まった糸が少しずつほどけてくる。

* * *

背景の暑い夏が読むだけで汗ばみそうな季節である。
選挙がらみではあるが、底辺に生きる人間の、希望や悲しみをにじませたストーリーになっている。
ゴシップ記事を売ろうとする上司にあくまで硬派を貫こうとするウェルズの姿勢が考えさせられる。

これはMWA優秀ペイパーバック賞を受けているが、私は二作目の方がいいように感じた。好みだけれど。



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 「幻の終わり」 キース・ピータースン 創元推理文庫

2012-11-13 | 読書


ジョン・ ウエルズ シリーズの二冊目、近所で探してもなくて、そのうちネットででも買おうと思っていたら、通りかかった大阪駅の本屋で聞くと早速検索してくれた。

友人に待ってもらって買って帰り、旅の疲れもそのまま一気に読んだが、一作目を凌ぐ面白さだった。

* * * 

マンハッタンは大雪だったそして、それは初雪の夕方だった。

若い女性が虎に腕を食われた事件も一息ついて、ウェルズたちは雪の中を「プレスクラブ」に行き、編集長をサカナに一杯飲んでいた。
そこに顔馴染みがいた、その中にいた見知らない一人は海外通信員だった。だがコルトという名前の通信員とはウマが合ったのか、最後まで付き合い、ついに彼のホテルでまた飲み、酔いつぶれて泊まってしまう。

朝になって気が付いたときにはすでにコルトはセンスのいい服装で身じまいを済ませていた、そこにノックの音がして、朝食を運んできたベルボーイだと思ったコルトがドアを開け、チップを払おうとして刺されてしまう。彼は最後に「エレノア」とつぶやいて死んだ。

目撃してしまったために殺し屋に襲われ、九死に一生を得たウェルズは、この「エレノア」という名前を調べるためにコルトの過去を辿り始める。

かってアフリカにあった「セントゥー」という国の政変に巻き込まれた記者たちは今ではニューヨーク新聞界の大物になり、この政変の渦中にいた記者はその記事でピュリツァー賞を受賞していた。
彼らに何があったか、ウェルズを付け狙う殺し屋は何者か。

彼は「エレノア」に執着し魂を奪われる。彼女はセントゥーから生きて出られたのか。

登場してすぐに死んでしまったコルトとエレノアの関係、
二人の歴史が10年後のニューヨークで明らかになり始める。
ウェルズは命を懸けても、調べずにはいられない。

 * * * 

戦場から生き延びてきたコルトや記者たちの過去と現在。

政治背景とともに、展開はハードだがストーリーの面白さは抜群だ。

相変わらずランシングは可愛らしい。



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