空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

池井戸潤 「銀行総務特命」 講談社文庫

2011-04-21 | 読書



個人の恥、家庭の恥、組織の恥、広く国家の恥。
他人の恥は知るほど面白く、家庭の恥は命がけで守ることもある。そしてつまるところ、とかくこの世は生き難い。
となるのかも知れない。

「銀行総務特命」これは銀行という組織の中で起きた不祥事を、外にいもれる前に調査しできるだけ内部処理で済ませよう、銀行の信用を守ろうということで設置された部署である。

総務特命調査の内容ごとに短編にして8編、どれも企業融資に絡めば、現実に起こりうるかもしれない、起きているかもしれない不祥事がテーマになっている。

「漏洩」
融資先の詳細が漏洩した。「評価」「格付け」などの重要事項が記載されている。それを、わずか500万円で買えといってきた男が居た、内部に共犯者が居るのか割り出せ。

「煉瓦のよう」
融資先の建設会社が、会社更生法の適用になるという、抵当は見合ったもので損失はないはずが、再建策が進んでない。使途不明金が10億ほど出てきた、この金はどこへ流れていったのか。ダミー会社も見えてきた。

「官能銀行」
女性行員がAVに出ている、これを足がかりに女優になるといっている。そんな恥さらしは誰だろう。銀行内部が揺れる。

「灰の数だけ」
支店長の妻子が誘拐された。恨みか。醜聞がもれる前に調査しなければならない、妻子は無事で居るのか。

「ストーカー」
女子行員がストーカーの被害者になった、犯人を捕まえたが、その後もその行員が自宅に持ち帰って処理していたパソコンのデータが見られていた気配がある。

「特命体特命」
総務部特命の指宿の調査にクレームがついた、人事部特命は、指宿を排除するために動く。
部下の唐木は短い上下関係に馴染みきれなかった。
人事部からきた彼女の葛藤も。

「延長稟議」
期限ぎりぎりで融資稟議を出した行員はジリジリしながら待っている。決済が長引いている。決済が承認される時間が近づき、倒産を目の前にした社長と融資担当は。

「ペイオフの罠」
遺産と預金で暮らしている老女に、担当の銀行員の男は自行に預金の付け替えをさせた。ペイオフは知らされていなかったのか、1000万を超える金はどうなるのか、不安を感じた老女は、昔世話になった唐木に相談する。




どれも面白いテーマだが、銀行の内部を少し知っていればこのような暗部は当然、眼にし耳にし想像できる。

特命の仕事に新味はないものの、人間関係の面白さがある。
人間の持つ弱さや、社会情勢、金で動く組織での立場が欲望を呼ぶこともある。

昔の自分の仕事を思い出して少し重かった

読書
46作目 「銀行総務特命」★3
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春・・・野の花・木の花

2011-04-20 | 山野草

最近写した花のフォルダーから

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あさのあつこ 「バッテリー」Ⅰ~Ⅵ & 「ラスト・イニング」角川文庫

2011-04-19 | 読書


余りにも人気があったこの本は、一二度、ドラマで見た。

熱血少年野球の話だろうと思っていたが。読み始めて人気のわけがわかった。

面白かった。

「原田巧」という6年生の少年が、父親の転勤で、母の故郷に帰ってくるところから始まる。

彼は、140キロを越す速球と球筋が正確で重い、13歳とも思えない威力のある球を投げる天才だった。
岡山の少年野球の大会でもベスト4に残る実績を持っていた。

彼が住むことになった岡山の山間の盆地には、同じ歳の野球少年の「豪」がいた。
彼は岡山で「巧」の球を見て試合を追っかけるほど憧れ、巧が同じ中学に入ることを知って震えるほどの喜びを感じた。

二人は横手二中の野球部に入り、バッテリーを組むことになる。
「巧」は「豪」のミットを信頼して自分の球を捕るために居ると感じ、豪は自分だけが天才巧、の球を受けることができると信じた。

だが巧という少年は、豪のミットを心から信頼して投げてはいるが、自分以外には興味の無い、余りにも個性的な生き方をしている少年だった。

自分の球が打ち返されることはないという硬い自負心で、いつも握り締めているボールの感触を楽しんでいるような子供だった。

中学に入ると、野球部のナインは個性的で、特にキャプテン「海音寺」は理知的で、包容力と統率力があった。彼はチームをよくまとめ、横手二中は徐々に力をつけていく。

巧が入ったことで、リリーフ投手もでき、豪と組ませば負けることは無いのではないかと思う。
監督の「戸村」(オトムライ)は巧の祖父の監督の下でプレーをしたことがあった。彼も巧という特異な少年の力を信じていた。

隣の新田東中には天才スラッガーで知られる「門脇」が居た。彼は噂を聞いて「巧」の球を打ちたいと思う。
そして個人的な対戦が実現する。

「巧」は平静を失う素振りもなく、力の限り投げ込む爽快感を待っている。
門脇は自分を信じながら多少の怖れを持っていた。


こうして、両中学のナインの練習風景や、生徒規律に縛られる中学生らしい日常、バッテリの悩みやチームのあり方、力比べの対抗試合に読みながら引き込まれていく。

門脇を迎えても動じない、巧のど真ん中のストレート、上下、内外と正確に投げ分ける威力、彼の現実とはいささか遊離した性格、それでいて野球がただ好きだという、投げることへの一途な喜びが伝わってくる。

キャッチャーの豪は、御しきれないほどの球を捕る喜びとともに、巧みの並外れた感性、自己中心的にも見える性格に悩む。

そういったなか、隣り合った町で、いつか拮抗する力をつけた横手二中と強豪新田東は宿敵になる。

三年生は卒業したが、その春休みに、対抗試合で決着をつけることになる。


名ショートがキャプテンになっている。バッテリーのいささか誇張した心理を書いていながらショートには、まさにかっこいい役を当てている(笑)

練習始めのキャッチボールから始まる柔軟体操、シートノック、二部に分かれて紅白試合。
雨の降り始めの土ぼこりの匂い、勉強との両立、など軟式野球の中学生の話だと思いながら、つい夢中になった。





「ラスト・イニング」は結果が語られなかったシリーズの後日談で、対抗試合の結果や 卒業後のナインの話が収められてる。
馴染みになった選手、可愛い巧の弟の「清波」も出てくる。

推薦入学を蹴って地元に残り、巧との対戦を待っている門脇はいいやつだ。ちょっといやみで頭のいい瑞垣も母校の監督をすることになるそうな、これも明るい、いい話。

44作目「バッテリー」★4.5
45作目「ラスト・イニング」★4


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海津大崎の桜

2011-04-16 | 山野草


快晴の一日、琵琶湖の北、海津大崎を歩いてきました。

桜は見事に花が咲いてトンネルになり、湖の水はキラキラ輝いていました。




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あさのあつこ 「木練柿」 光文社

2011-04-10 | 読書




お昼から、投票のついでに、図書館に予約していたこの本をとりに行った。
次に待っている人があるので早く返してくださいと言われていたので、借りていた本をみんな返してほっとした。


最近、あさのさんの本が面白いので、買ってきた「バッテリー」をⅡまで読んだ、こんな面白くて新しい本を105円で買ってもいいのかなと、嬉しいような気の毒なような。
図書館の本棚に続きの三冊があったのでそれも借りてきた。



「木練柿」はシリーズの核になる三人を巡る、4編の短編から成っている。

「楓葉の客」
「遠野屋」でかんざしを盗んだ娘を、手代の信三が見つける。彼女は糸屋「春日屋」の一人娘で、親にすすめられた縁談がいやで、歩いているうちについふらふらと店に来て手が出たのだという。一方若い男が殺される。それがまた、女中の知り合だった。
これらが「遠野屋」に起きた事件の発端だった。

「海石榴」の道
「遠野屋」で清之介が始めようとした、今で言う着物から草履、小物までのコーディネイトをするという企画が、「黒田屋」の殺人騒ぎで中止になっていた。もう一度始めてはどうかというときに、仲間に入るはずだった「三郷屋」が殺人犯としてつかまってしまう。言い訳のできない状況だったが、信次郎はあまりの出来過ぎた状況に不信感を持つ。

「宵いに咲く花」
伊佐治の息子の嫁には、夕顔を見ると不可解な不安と恐怖を覚るという悩みがあった。
だが夫婦仲はよく、良く働く気立てのいい嫁で幸せだった。
ある日買い物に出て遅くなって帰る途中、暗がりで襲われる。
ひねくれものの信次郎は、相変わらずいやみな男だったが、勘は冴えていた。

「木練柿」
清之介が刀を捨てたのは、亡くなったおりんに出会って「遠野屋」の婿に入るときだった。生き方に迷っていた彼に、両刀を預かりながらおりんは「お覚悟を」といった。この言葉は今でも彼の中で生きていた。
平穏な日々の中で養子にして、可愛さが増してきた赤ん坊のおこまが散歩の途中で誘拐される。
平身低頭して助けを頼む清之介を前に、信次郎は「おこまは生きている」と断言する。



「宵に咲く花」「木練柿」が特に情感にあふれ、三人の、今、過去につながる話に事件が絡んで面白い。


読書
37作目 「木練柿」★4.5
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あさのあつこ 「夜叉桜」  光文社

2011-04-10 | 読書




「弥勒の月」が面白かったので、二作目を予約してみたら、すぐに来た。

「音もなく少女」が気になっていたので先に読み、続けてこの本を読んだ。

文庫470ページほどにぎっしり詰まった本の後では、「夜叉桜」は読みやすく、すぐに終わってあっけなかった。

このシリーズは三作目があるという。検索して見つけた「小暮柿」を早速予約した。



これは前作を凌ぐ出来だと思った。

信次郎は相変わらず、不可解な気質で、その気が無くても周りを振り回し、わざと言葉を使って他人の弱みをちくちくと刺し、生きることに倦み疲れたように、掴みどころが無い。
だが、なぜか清之介の店に拘り頻繁に現れる。

伊佐治は彼を好きになれないでいるが、怜悧な切れ味を持つ信次郎の推理を認めて、心底では憎めないでいる。

そして清之介は「遠野屋」を大店に育て上げ、店は繁盛して活気がある。

そこに女郎の連続殺人が起きる。

最初に殺された女は、「遠野屋」の手代、信三の幼馴染だった。

清之介は、彼を過去から開放してくれた兄に遭った。そして今、兄も逆境の中にいた。
清之介の過去はまだ彼を追っていた。

殺された女郎たちを調べていくうちに、「遠野屋」とのかかわりが浮かび上がる。

因縁の過去が尾を引く、物悲しい話になっている。

何か世間を越えた空間に住み、すね者のような信次郎と、過去に縛られ、受けた恩義の重さでも自分を縛っているような清之介が、人間らしさを垣間見せる。

「あさのあつこ」さんは、こうなるのだろうかと言う期待にこたえてくれることもある。
こうなるの?と言う疑問には明らかに新しい展開で驚かす。
うまい。
そしてとうとう、いったいそれでどうなるの?と終わりまで読ませる。

43作目「夜叉桜」★5
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ボストン・テラン 「音もなく少女は」  田口俊樹訳 文春文庫

2011-04-10 | 読書


長く待っていたので図書館から連絡があってすぐに走っていって一気読み。さすがに面白かった。


ブルックリンの極貧家庭に生まれた、耳の不自由な少女イヴが勇気のある女たちに守られ成長していく物語。

母のクラリッサは、耳が聞こえないという障害を持つイヴを、将来味わうだろう人生の荒廃から救うために、教育を受けさせようとする。
そこで教会で顔見知りになっただけのフランに相談する。

イヴを育てることでクラリッサとフランは親友になる。

フランには過酷な過去があった。

彼女の愛した青年も耳が不自由だった。

フランの両親は傷害のある子供たちを教育する私立学校を経営していた。そこに彼は入学していた。

家系に障害のある子供がいると、優生保護のために断種手術を受けなくてはならなかった。
彼女は青年と逃げるが、子宮を摘出され、恋人は射殺された。
その後、彼女は一人小さな店を持って暮らしていた。

三人の女性が、運命と卑劣な男たちに翻弄されながら勇気を持って生き抜くものがたり。

文章は繊細でダイナミック、時には詩的で、上質な文学的な香りを持っている。

彼女たちが、過酷な出来事に打ちのめされながらも、立ち上がるたびに、読んでいても何度か胸が一杯になった。

評判どおり読み甲斐のあるいい本だった。

42作目 「音もなく少女は」★5
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あさのあつこ 「弥勒の月」 光文社文庫 & 「天国までの100マイル」

2011-04-07 | 読書



「あさのあつこ」さんを読んでみたいと思っていた。
ちょっと見た「バッテリー」のドラマが面白そうだったし。
短編も少し読んだあと、図書館に予約していた。

時代小説だが面白かった、江戸の町を背景に、少し台詞などに現代感覚の残るところも馴染みやすく読みやすかった。


同心の信次郎と岡っ引きの伊佐治のコンビが事件担当で面白い

信次郎は父が亡くなった後、役目を引き継いではいるが、年相応の鬱屈した思いがある。
伊佐治は生一本で世話好きで頼りがいのある人物だが、一人で、勝手に生きているような信次郎をもて余すこともあり、理解ができない部分がある。
しかし信次郎の勘の鋭さと変人ぶりに辟易しながらも、世話を焼かずにはいられない。


最近結婚したばかりで、気立てのいい、小間物屋「遠野屋」のおかみが橋から飛びおりた。
入り婿の清之介は、先代に見込まれ、眼鏡どおりに身代を守り、以前にもまして繁盛させてきた。

なぜ、その妻が死ななければならなかったのか。
夫の清之介にも見当がつかないと言う。しかし、彼の物腰には何か油断のできない、ある殺気のような緊張感を信次郎は感じた。

信次郎と清之介のもっている、形は違ってもどうにも折り合いのつかない、重たい心の荷物がうまく書き込まれている。

妻の死を悲しみ、大金を出してまで捜索を頼むのは清之介の本心か。

夜が来ると、袈裟がけの見事な一刀で次々に人が死んでいく。

清之介と信次郎、伊佐治のキャラクターが際立っている。

続きの「夜叉桜」も読んでみよう。

読書
 
40作目 「弥勒の月」あさのあつこ ★4

41作目 「天国までの100マイル」 浅田次郎 朝日文庫

     心臓病の母を100マイル先の、心臓外科の
     名医のところまでライトバンで運ぶ話。
     兄弟中でいちばん出来損ないと思われている、
     失業中の三男の安男、離婚もしている。
     彼が懸命に母を運んでいく。
     主治医の誠意、野人のような天才担当医。
     別かれた妻の優しさ。身勝手な兄弟たち、
     が母の病気をどんな風に見守っていったか。
     心温まる物語。
     ★5


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身近な春の花たち

2011-04-05 | 日日是好日

ぽかぽか陽気に誘われて、出かけましたが、空模様が冬型に変って風が冷たく、
花も戸惑っているようでした。



身近な春の花たち
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野の花

2011-04-02 | 山野草
近くの里山を散歩して、野の花を写してきました。


野の花
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