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「オロロ畑でつかまえて」 荻原浩 集英社文庫

2016-08-05 | 読書



荻原さんを読むなら、受賞作「海の見える理髪店」なのだが、日々うかうかと暮らして読書もなんとなく選んできていると、こうしてすれ違いが生じる。

少し前に読んだ「母恋旅烏」も荻原さんだったと今頃知った。文庫本の中でひときわ変な題名で「タビドリってなに?」「タビガラスでしょう」と突っ込まれ、あぁ~…と読んでみただけですっかり忘れていた。
生活に行き詰った父親が擬似家族が要る人に、自分の家族を貸し出すというのが始まりだったような。(レビューがないとこうなる)
それが、立ち読みをしてみて、コミカルな文章がすっかり気に入って買った中の一冊がこれ。
後に「仲良し小鳩組」が残っている。

さて、この本にかける期待は、三浦しをんさんの素晴らしい青春小説「神去りなあなあ日常」が源で(ただ表紙の雰囲気で)田舎のほのぼの、わくわく話しだろうと見当をつけた。

ところが主役は、東京の広告代理店で、資金繰りに切羽詰って、東北の奥の奥にある村おこしをするという話だった。
社長とは名ばかりの総勢4人の会社で、一人はアルバイト。みんな一癖あるがコピーライターの杉山だけがややまとも(過去はあるが)

そこで現地を見に行くと。着くまでに一日かかり、過疎地らしく青年団も8人だけ。

「たった八人で祭りはどうすべ。」「おはよう野球が塩梅悪ぃだな、ライトさカカシでも立たせっか」

言葉には通訳が必要だ。そこに東京で4年間大学に行ってUターンした慎一がいた。気のいい人たちにほだされてと言うか、現金に目がくらんで引き受けてしまう。
何の当てもないところで、偶然見つけた湖で閃いた、恐竜見つかる!!でいこう。
カメラも入らない道を、村人だけが知っている場所から望遠レンズで写した。それでマスコミが湧いた。

村は大騒ぎ、巫女さんも、鎮守さんも、首が折れてちょっと傾いた狛犬も、崖から転げ落ちそうだった家も、旅館も、人がどよめいて押しかけ、地場野菜の筆頭「おろろ豆」も売れ出した。アンテナショップを作って野菜を売ろうか、通販はどうか。小躍りどころか祭のみこしも踊りまくった。
世間は飽きやすい。そうなっても素朴な村人は、めげない。
ささやかなハッピーーエンドもあり、それが夢の後に来た夢でも、前向きにやる気は失せない素朴さに少し涙。

風刺が効いたうえに、また作家がコピーライターだったとかで、ユーモア満開で、楽しかった。
冒頭では、ちょっと会社紹介。
ゴム会社のコピーを考え、プレゼンでは…、読んでいておなかの皮がよじれる。いい滑りだしだ。


だが「神去り~」に比べると、ここぞという盛り上がりが弱い。なんか聞いたような話で、人々が善良で心地よい分、内容にアクやクセがうすく、読みやすいがもの足りない。
でもユニーバーサル広告社の中で特異なイラストレーターの村崎が気になって、続編でも彼に会えるなら読んでみようかなと思う。ミーハー魂だけが残った。


余談
「オロロ畑でつかまえて」を検索したら「ライ麦畑でつかまえて」も出た。
さすが「ライ麦」「オロロ豆」より強し。




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