池井戸さんの作品は「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」を最近読んだ。
「鉄の骨」のドラマが面白かったが、この作者だとは知らなかった。
「空飛ぶタイヤ」は先に書いたので。
「下町ロケット」
莫大な予算をかけた国のロケット打ち上げが失敗した。
引責退任した、「佃」は親の後を継いでエンジンを作る会社の社長になる。
再度打ち上げられるロケットは、大企業が製作を請け負っていた。
だが燃料混合バルブの特許だけは「佃」が先に取得していることがわかる。
一流企業の圧力と、銀行の融資の締め付けで、背水の陣を敷いた「佃」の社長と社員の熱い戦いを描く。
胸が熱くなる小説。
「黒百合」
戦前の父親の時代と、戦後なって少し落ち着いた時代の、彼らの子供達が出会った出来事が交差して、進んでいく。
宝急電鉄と東京電の会長をかねていた小芝翁の、随行秘書で海外視察に同行した浅木(私)と寺元。
ナチスの軍人が闊歩するドイツで、会田真千子という若い女性に出会う。一行はなぞめいた彼女に興味を持っていたが、偶然、再会して彼女の窮状を救う。
彼らは帰国してそれぞれ大阪と東京にある職場に着いていた。
昭和16年の夏休み、寺元の息子(私)は浅木の持っている六甲山の別荘へ行く。
そこには同い年の浅木の息子、一彦がいた。
二人は、香という少女に会い、ひと夏をすごす。
過去になった子供時代を振り返り、その時代に起きた事件の真相は、作者の端正な文章で淡々と綴られる。中にはミスリードされそうな迷路もあるが面白かった。
52作目 「下町ロケット」池井戸潤 東京創元社 ★5
53作目 「黒百合」 多島斗志之 東京創元社 ★4