空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「追撃の森」 ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫

2013-01-27 | 読書


緊迫した生き残りゲームがほとんどのページを占めている。
保安官補の女性と殺人犯の知恵比べのサバイバルが読みどころかな。
偶然二人組みになった逃げる側と追う側、見方を変えれば、逮捕する側とされる側、警官と殺人犯、という組み合わせ、時間とともに理解が少し深まって二人の関係が次第に変化していく、このところはありかもしれないが、一夜の出来事にしても、暗い森の長い追跡は少し飽きる。

* * *

人里はなれた森林の中の別荘で夫婦が殺される。保安官補のブリンは現地に行き、生き残った女(ミッシェル)と出会う。
二人組みの犯人が追跡してくるが、二人は湖岸の森を抜けて逃げていく。
連れて逃げていく女優崩れの女は足手まといになるし、何かとぐずり続ける。
やっとたどり着いた窪地に止まったキャンピングカーは、ほっとする隙もなく、麻薬製造の一味だった。この一味にも狙われる。
そこで追いつかれた犯人たちの銃撃で一味は殺され、ブリンは生き残った少女を保護する。
隙を見て逃げるが、今度は子ども連れの難行。
ブリンはありえないほどの困難の中で、さまざまな智恵で犯人をまくが、この智恵比べが読みどころ。

* * *

一気に読めばそれなりに面白いが、少し時間が空くと、まだ逃げているのかと思うほど、悪条件が次々に降りかかり、追いつ追われつの果てしない物語に思える。
ただ、そこは実力派というか、ブリン組の人物像、ブリンの家庭や仕事場の事情、犯人達の目的などもあって、興味をひく部分もある。
被害者の夫婦はなぜ殺されなくてはならなかったのか。
ブリンとともに逃げることになった女の真の顔が見えてくるところなど面白い。
だが今回はあまり魅力は感じなかった。
こういう、少しゲームっぽい筋書きは長いと緊迫感が少し薄くなる。

娘はまだ確信がなさそうにしていた。ブリンは罪悪感には複雑なDNAがあることを知っている。毒性を持つものにかならずしも純粋種である必要はない。しかしミシェルは、ブリンの言葉に多少の慰めを見出したようだった。「時計の針を巻き戻せたらいいのに」
 それって毎日の祈りじゃないの、とブリンは思った。


こういうところは好きな部分で、つい次の作品に手を出す。

「逃げる」ということで、面白かった映画を思い出したが題名を忘れた。ただ逃げる、どんどん逃げる映画だったが、なぜか面白かった。
ついでに「ジェリー」という映画も思い出した。
砂漠に入った二人の若者が道に迷い、歩き続けていく、二人がついに独りになってしまっても歩く、ただそれだけで、恐怖や孤独感が、すばらしい風景の映像とともに伝わってきた。

事件や出来事の経過を伝えるだけでなく、何か響くものがあってほしい。この作品を読みながら、ストーリーをたどるだけでは面白みがないという感じがした。

★しばらく(一ヶ月ほど)留守にします。その間に読んだ本は帰ってからメモ書きします。またよろしくお願いいたします★

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「激流」 上下 柴田よしき 徳間文庫

2013-01-25 | 読書




図書館の予約は10冊出来る。予備カートに30冊入る。
予約した中から準備が出来るとメールが来る。
「激流」は人気作だと思っていたが、すぐに来て驚いた。
2009年初刷の文庫だから早かったのだろう。話題になった本も最近は回転が速い、次々に読み捨てられ消えて行くようだ。

* * *

七人の中学生の二十年後の話。
中学の修学旅行でふっといなくなった冬葉はその後も行方が分からなかった。
七人は同じ班で、冬葉の失踪当時は、騒がしい取調べもあり周囲の話題になったが、進学や就職で進路も別れ、20年後はほとんどの班員はその出来事を思い出すこともなくなっていた。

ところが、

私を憶えていますか? 冬葉

というメールが次々に来て、残った6人の周りに、変化が訪れる。

冬葉は生きているのか、班別の自由行動の途中、バスから降りるところを確認できなかった6人は、メールを見てこころが騒ぐ。

三隅圭子(サンクマ)・・・編集者になっていたが、夫婦それぞれの不倫で離婚調停中。
秋芳美弥(ミヤ)・・・歌手でもあり小説も書く。麻薬使用で有罪になり、一時芸能界から消えかけたが、才能があり、再出発しようとしている。
鯖島豊(サバ)・・・優等生、進学校から東大卒。就職先は大手企業ではあるが出世コースからはずされている
萩野耕司(ハギコー)・・・警視庁の刑事になっていた。
御堂原貴子(オタカ)・・・美少女、成人してからもぐんを抜く美貌が目立っている。平凡な男の妻になり、夫はリストラで求職中。
長門悠樹(ナガチ)・・・高校中退で住所不明。

この6人、一人ひとりの20年間、お互いの人生は交わらずにきたが、冬葉からのメールで、急遽再会することになる。
彼女は生きていたのだろうか。
それぞれの暮らしが明らかになっていく、日常の仕事ぶりや苦しみを、中学生の時代から遠く過ぎてしまった今になって振り返る。
再会すると、忘れていた些細な出来事、中学生活の一齣を振り返ることになった。
今になって交差する時、冬葉の失踪に関心が深まり、刑事になったハギコーの捜査する殺人事件に遠いかかわりを持ってきたりする。
冬葉は生きているのだろうか。
6人の胸の中の疑問は、情報を交換して、当時の日々を煮詰め、それを語ることで少しずつ、見えてくるものがある。

* * *

20年前の中学時代の出来事が6人の中で甦ってくる。
一人ひとりの生活がえががれる。接点のあることもないことも20年の歴史だった。
その中から、冬葉につながる情報が少しずつ浮かんでくる。
確かに面白い話になっていて流れに沿って読み進める。

しかし、盛り上がりに乏しい。
ページ数が多い大部の中には、説明や冗長な部分が多い。
貴子の頭抜けた美人振りが何度も繰り返され、彼女が子供のころから、顔の美しさだけをほめられることに罪悪感を持ってしまうくだりは分からないでもないが、だから今の生活はそうなるのかという疑問をもつ。
メンバーをイメージでつかむと、仕事や出来事の繰り返しは読んでいてだれる。
読み通すことに抵抗がないくらい読みやすく、終わり方にも問題はないが、全体的に、冬葉はどうなのかという結末以外には、忍耐のいる作品だった。




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「リンカーン弁護士」 上下 マイクル・コナリー 講談社文庫

2013-01-21 | 読書


やっと、文句なしの面白い本に会えた。最近面白いなぁと思ったものは多いが、全編を通して、息継ぎがないくらいに読み通したのは久々で、評判どおりだった。

リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所にして仕事をする、弁護士のマイクル(ミッキー)・ハラー。

儲からない貧乏仕事ばかりで、別れた妻の元にいる子どもへの養育費も含めて経費の支払いに汲々としている。計算高いが、人間味もある、勝つためには裏技も使う、知的戦力に優れ、法廷の弁論合戦も計算された演技力を駆使する。
面白く読み応えがあった。
いくつかの小さな担当事件が挿入されているが、これがメインの事件につながるところもあり、こういったわずかな報酬の仕事で作り上げた人脈が、後に幸いするのも、人柄だろう。

* * *

売春婦の殴打暴行事件の犯人ルイス・ルーレイは、犯行直後に、隣人二人に捕まえられた。拘留中のルイスから弁護を依頼されたマイクには、この富豪の息子の弁護は、やっと運が向いてきた萌しだと思えた。彼はルーレイを一目見て、内向的で無垢な笑顔に、冤罪を感じた。
だが、状況は全てに不利だった。直感に従えば、無罪の犯人を弁護する難しさを実感する。


「(父は)弁護士が担当する依頼人のなかでもっともまれなのは、無実の依頼人である。と語っていた。もし弁護士がへまをして、無実の依頼人が刑務所にいくようなことがあればそのことが生涯、弁護士を悩ませるだろうと。」
「親父さんは文字通りそんなことを言っているのか?」
「そういう趣旨の発言をしている無実の依頼人には(略)妥協するな、ひとつの評決あるのみ。スコアボードにNGをつけなばならない。無罪ノットギルティ以外の評決はない」



一方、使っている調査員ラウルの報告は次第に、ルーレイの素顔に迫っていく。
事件の真相は、警察の捜査が進むにつれて、ミッキー・ハラーの中でも被告人の罪状に対する印象が二転三転し、そのたびに無邪気に見えたルーレイの顔つきも変化していく。

頼りにし親しくしていた、捜査員のラウル・レヴンが殺された。使われた銃は、ハラーが父から遺贈されたものだった。しまいこんでいたクローゼットの箱の中身が消えていた。ラウルは手がかりをつかんだと最後の電話で伝えてきていた。

ハラーは犯人の弁護と、身の潔白を明かさなければならないという羽目になる。

ラウルのつかんだ証拠が犯人に不利になるのを知っていた、だれが銃を持ち出したかもほぼ見当がついた。
ラウルの最後の言葉は不明ながら、真実に近いものだと分かっていた、しかし彼は弁護を続ける。
検察に追い詰められれば証拠について反証されることも承知の上だ。
が、彼は次第に犯人の意図が見えてくる。無罪を勝ち取るためにジレンマを抑え弁護を展開する。

ルーレイは仮釈放から追尾アンクレットをつけていた、彼の動きはパソコンに記録され、大きなアリバイになっていた。

また、ハラーの持つ数々の証拠から、検察側の証拠を粉砕する論拠は確実になった、相手の新人検察官は追い詰められ、ついに有利な答弁取引を提案した。しかし、これを聞き入れれば、ルーレイの罪を認め、彼は短いながらも拘留され、犯罪歴が残る。実績を残すには、彼は無罪でなくてはならない。

ハラーは監察官の取引をはねつける、そのとき自分の勝ちを実感した。

* * *

日常のハラーは、抜け目のないところが小粒な収入であっても彼の仕事を続かせている。
街の薬物中毒者は、麻薬密売の現行犯からハマーの弁護で厚生施設送りに減刑されてもまた罪をくりかえす、いいお客さん(リピート客)だが、そのつどハラーは全力で弁護してきた。
カード詐欺、売春、麻薬取引、下町の犯罪を弁護する話は、読んで楽しく興味深い。

第一部の「刑事調停」はハラーの家族や彼の世界と、法律のあり方や犯人との絡みが面白く、
第二部の「真実のない世界」というのは、その後のハラーの生き方のさまざまな象徴とも言える。


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「ロードサイド・クロス」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋

2013-01-18 | 読書



読み始めてすぐ、おっとこれは! と思い出した。うっすらと・・。
はっきりと覚えているのは始めと終わり。途中はおぼろ、でもミステリや犯人探しで、最後を覚えているなんて最悪。
だけれど、メモをしてないとこういう失敗は多い。記録しなかった理由がみつかるかも知れないし。
いろいろ読むが、また読むことはないと思うとメモしないものもある。でもまぁこの作家なら再読というのも、悪くないかもしれない。
昨年10月の出版だから読んだのはあまり前ではないのに、あ~あ。

* * *

手抜きで「訳者あとがき」から。


前作「スリーピング・ドール」の事件から数週間。カリフォルニアの風光明媚で平和なモンテレー半島に、新たな恐怖が襲いかかる。
 きっかけは、ある人気ブログに掲載された一本の記事だった。
 二週間ほど前、ハイウェイのガードレールのない区間で自動車が道路を外れて斜面に転落し、乗っていた四人の高校生のうち二人が死亡するという痛ましい事故が起きた。しかしこれまでのところ運転手は逮捕されておらず、州運輸局の道路管理責任を追及する声も上がっていない。記事は”誰一人として事故の責任を取っていない”ことを疑問視していた。
 ブログ主は、警察は運転手を逮捕すべきだと主張したわけではない。また、運転手が高校生であることから、氏名も伏せていた。それにもかかわらず、記事には運転手を知っているという地元の若者からのコメントがたちまち殺到した。オタク、キモい、ヘンタイ、ネトゲ中毒・・・若者たちは独特のネット用語を駆使して、学校でも浮きがちな存在だった少年を容赦なく中傷し始める。
 その後も、やはり同じ記事にコメントを投稿した人々が命を狙われる事件が立て続けに発生、ついには死者も出た。事件とブログが密接に結びついていると断定はできなかったが、事故車を運転していた少年がふいに姿を消したことなどから、連続殺傷事件の犯人は運転手の少年である可能性が一気に高まった。
 インターネットという仮想の世界で”いじめ”に遭った少年が”いじめっ子”たちに現実の世界で仕返しを始めたということなのか。仮想世界でのトラブルが、境界線を越えて現実世界にはみ出してきたのか。
 捜査を任された”歩く嘘発見器”キャサリン・ダンスは、持ち前の尋問スキルを駆使して少年の周囲の人々から真実を引き出しながら、事件の意外な深層に迫っていく。


書いているうちにますますはっきり思い出した。

* * *

というのが大まかな始まりと、捜査官の紹介文で、そこには、ちらりちらりと挿入される伏線があり、キャサリンのお母さんに降りかかった災難あり、コンピュター専門の大学教授の助けがいつの間にか、気持ちの微妙なふれあいになるところもある。

いつも行動を共にする保安官事務所の刑事に対する心の揺れなどソフトなストーリーも添えてある。

そういえば面白かったとは思いながら、メモしておかなかったのは、わずかに簡潔にまとまってしまう、終盤の部分に納得できなかったからかもしれない。

こういうなかで、一応、どんでん返しが効果的に続いて、力量はさすがである、面白い、がそれにしても、終わり方はあまりに安直ではなかったろうか。

悪人は悪人として裁かれ、無実の人間はそれが自然に証明されるハッピーな結末はいい。解決への糸口がやはり、ほかからの連絡や告発などだというのはよくある話で、空を見てピンと来たり、夢を見てハッと真相に気づいたりする常套の探偵小説に似ている。

今でも人気のある、RPGなど、ゲームの中の仮想世界が出てくる。実写に近いほどよく出来た画像の中で、怪物や敵を倒しアイテムを集め、役割を決めてチームを作って助け合う、そこでは友達も出来る、家(部屋)を持ち傷を癒すb場所も作れる。こういうゲームを覗いていると、仮想世界にのめりこんでいく気持ちも分からないではない。だが作者の意図はやはり、現代のこの様な現実に対していささかの警告を含んでいるようだ。

ゲームやブログなど、コンピューター世界に入りこんでいく子どもたちの現実が、活写されて事件解決の手引きになっていく。
面白く、よく出来た話でも再読すると、作者の意図があからさまに分かって、また別な楽しみ方が出来た。
ジェフリー・ディーヴァーはまだ読んでない作品を探そうと思っている。



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「かなたの子」  角田光代  文藝春秋

2013-01-15 | 読書


最近、長編の読残しを片付けようと思って探していたので、予約したこの本が短編集だったので少し気落ちした。
短編はすぐに読めるし、よく似た長編を読むと印象が紛れてしまって忘れそうになる。
でもこの本は、テーマも、スタイルも工夫があって、とても面白かった。

* * *

・おみちゆき

 おみちゆき という土俗的な風習のある村での話。和尚さんが即身成仏するために穴に入った。持ち回りであるが、母の代わりに様子を見に行くことになった。
夜のあやしげな音の中を穴まで行き、地下に伸びた竹を伝わってくる気配に耳を澄ます。
和尚がなくなって久しく、子どもたちと帰省したお祭り小屋で、遺骸と再会する。宗教的な話ではなく仏門に入った人の最後が、子どものころの妖しい思い出になっている。


・同窓会

小学校の同窓会だけは、毎年行われて、世話役は律儀に連絡をよこす。そのころ仲がよかったメンバーは、どうしても集まらなくてはならない秘密があった、みんな小学生だったころのあのことが胸の中にしこりになっていた。

・闇の梯子

静かで近所付き合いの煩わしさもない、うっそうと茂った木に囲まれた家に移った。妻と二人の暮らし。仕事を終え家の近くまで来たとき何かの黒い群れが家にぞろぞろと入っていくのを見た。

・道理

付き合った女は、話を全て「道理」という言葉ではかっていた。生きる柱は道理にかなったものでなくては、という。
結婚した妻もいつの間にか「道理」を説くようになった。ある日散歩の途中でガーデンパーティーのような集会に入ると、そこは道理で話し、それで仕切られたひとびとが集まっていた。自分は・・・。


・前世

前世を見るという女に会う。何度も夢見る母との夢。
私はとついで子を生んだ、飢饉の年だった、子が泣くと外に出される、吐く息は白く冷たい。手を引いて川のほうに歩いて丸い石をさがす、夢のように。

・わたしとわたしではない女

いつもその女は私の傍にいた。私だけに見える女は、私が子を産むときも傍にいた。

・かなたの子

死んだ子に名前をつけてはいけない。死んだ子は鬼に食べられる。そういわれていた。だが文江は死んだ子に如月という名前をつけた。如月はかわいらしく育っていった。次に身ごもった文江に、如月は「海べりのくけどにいる」といった。文江は電車を乗り継ぎ、淋しい海べにある「くけど」まで如月を探しに行く。

・巡る

私はパーワースポット巡りに参加して山の頂めざして上っている。倒れて頭を打ったが、みんなで介抱をしてくれて、上り続けている。
私は結婚をして浮気をされて離婚をして、シングルマザーで子育てをしてきた。今子どもはいない、どうしたのか、頭を打ったせいかはっきりしないことばかり。
頂上に着いた、白い朝の光に包まれていく。

* * *

SFでもないホラーというのでもない。日常の中にある、現実と非現実の境、もやのような、こころの中の不明瞭な部分が人を覆い隠してくる。覆われた人、蝕まれてしまった人はそれを日常だと錯覚するのだろうか。
不思議な生と死の境目やそれらが重なる部分を味のある表現で書いた面白い作品で、どれもこころのうちにある異常さがうっすらと滲んで少しずつ生き方が逸れて来る。角田さんはこういうのをうまく書く人だと思う。



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「硝子のハンマー」 貴志裕介  角川文庫

2013-01-11 | 読書




気がつけば、貴志さんの本は、読んだ数が多い。

まず「黒い家」は不気味さが半端でなく面白く、テーマにも入り込んだ。次は「天使の囀り」で、これらは貴志さんのマイベストに入る。それから読み続け「新世界から」「悪の経典」などなどと続いたが、この「硝子のハンマー」と「狐火の家」を忘れていた。

* * *


日曜日の昼下がり、株式上場を控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には防弾ガラス、オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて・・・
弁護士青砥純子と防犯コンサルタント、榎本径のコンビが難攻不落の密室の謎に挑む。
日本推理作家協会賞受賞作




という本格的な密室殺人事件。

エレベーターで12階に行くには暗証番号でしか動かせない。そこに介護サービス会社の社長室、副社長室、専務室、各秘書の待機室があった。社長室、副社長室、専務室は鍵のないドアで繋がっていた。

以前、社長室が狙撃され、被害はなかったが、社長の強い意向で、前面の硝子は厚みのある防弾硝子に張り替えられていた。

また、要所には監視カメラが設置され、入るには、管理人がチェックもした。

日曜日、管理人はテレビの有馬記念に釘付け。落し物入れに馬券の入った封筒がおいてあったのを見つけたのだ。
しかしテレビと監視カメラのモニターは視野範囲内に設置されていて不審者を見逃すこともない。

社長の死体は、ゴンドラに乗って窓拭きをしていた清掃員が発見した。

社内にある、介護システム開発課では、介護用の猿を訓練し、介護ロボットも作り上げて、デモを行って見せていた。

専務が逮捕された、彼は犯行時間は眠りこけていたが密室状態の12階で、副社長は不在だった、専務の話は問題にされなかった。

弁護依頼を受けたのは青砥純子だった。
彼女は紹介された犯罪コンサルタントという男、榎本径とともに、密室の怪を解くことにする。

逮捕された専務に夢遊病に似た睡眠障害はなかったか。

監視カメラは正常に動いていたか、何も映らないマジックのような方法はないか。

榎本は職業柄、セキュリティーの知識は豊富な上に解錠の腕も抜群だった。

彼は、調査のために夜を選んで忍び込み、犯罪の痕跡を探す。

介護猿やロボットを使わなかったか。

さまざまな疑惑が生まれ、さらに混迷の度は深まっていく。

中ほどから、犯人の生い立ちなど倒叙法ミステリに移行する。

犯人と青砥、榎本の最後のやり取りは、榎本の面目躍如、冴えた推理が犯人の智恵に迫る。

犯人の巧緻を極める計画をついに突き崩す、このコンビは続きがあるらしい。

* * *

貴志さんと法月倫太郎氏の対談がある。そこで、面白い話が展開し、作家の苦心談とともに、ひそかな楽しみのようなものが見える。
解錠に関して現実のセキュリティー事情など、深い専門知識が披露されている。

犯人の話の始まりで、ミスリードを狙ったということなど、私も、ひょっとしたらとうすうす思い、狙い通りそちら方面に行きそうなった(;^-^;)




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TVドラマ 『ダブルフェイス「偽装警察編」』

2013-01-10 | 映画



ダブルフェイスが「インファナル・アフェア」のリメイクだと知っていたら1作目の「潜入捜査編」も見たのに、残念。


少し前になるが、香港ノワールの「男たちの挽歌」三部作にしびれた(笑)弟役のレスリー・チャンは若くして亡くなったが、兄役のチョウ・ユンファはハリウッドまで出る俳優になった。このころから、香港の映画は面白いと思ってきた、あの監督はジョン・ウーだったし。

そして何年か前に「インファナル・アフェア」三部作を見た。どういうわけか、DVDも含めて三度も見てしまったが、見るたびに緊張感、、東洋的な死生観、何かしら漂ううら寂しさがすばらしかった。

リメイク版のハリウッド映画「ディパーテッド」もレオナルド・ディカプリオ,マット・デイモン,ジャック・ニコルソンなど錚々たる俳優陣だったが、やはりアメリカ的な露悪さ、警官、ヤクザともに下品で、言葉も汚く、アカデミー賞を受けたことが不思議だった。話の設定の面白さ、運命の悲哀は判っても、現在も東洋文化の底にある思想はアメリカでは理解できないのかもしれないと感じた。


さて肝心の日本版『ダブルフェイス「偽装警察編」』、面白かった。先の「潜入捜査編」はそのうち探して見よう。

「潜入捜査編」のダイジェスト版があったので、「インファナル・アフェア」にとても忠実に作られているとわかった。

モールス信号で麻薬取引場所を内通する、オープンすぐの緊張する見せ場も、劇場内で情報交換する名場面も落とさずに見せてくれていた。

そして「偽装警察編」では、長い潜入生活で、自分の生きる場所(スタンス)が曖昧になりはじめ、少し精神を病んできているヤクザ(西島秀俊)、警察に潜入して、順調に昇進している警官(香川照之)、ただ一人、潜入を知っている警視の死で、身分を回復をする機会が見失われそうな、生きる目的の瀬戸際に追い詰められたヤクザ。今回は、ヤクザ組織に潜入した警官(西島秀俊)にスポットを当て、闇の中から這い出そうとする姿を描く。
警官(香川照之)の強い精神力を前にして、多少人間的な弱さを見せるヤクザの、対象的な二人の姿が、緊張感のある、実にいいドラマになっていた。最後のシーンは、尾を引く。

私にしては珍しくよく覚えていて、精神科医のキャラクターの違いも気づいたが、ヤクザとの絡み方は少し違ってあくがなくあっさりしていただけに、和久井映見、蒼井優、らのさわやかさもよかった。また


西島秀俊の作品は「あすなろ白書、あの時は死んでしまったけれど(笑)「DOLLS」「大奥」など随分沢山ドラマや映画を見た。ミニシアター系もよかった。最近の「ストローベリーナイト」で幾分痩せて線が細い気がしたが、今回の「ダブルフェイス」では筋肉質のヤクザッポイ体形で、熱演だった。

香川照之についてはもう名優の域に入るので、言葉がないが、今公演中の歌舞伎に行くのかと思ったら、まだ映画にも出るようでこれからも厚みのあるいい作品が見られることだろう。
もし三部が作られるなら今度はヤクザの身分で警官に成りすましている自分との戦い、善と悪の狭間で悩む難しい役になる。

香港版では三部作だったが、この後の日本版は出来るのだろうか。
警官役はアンディ・ラウで、個人的にはなんだか少し違和感があったが(トニー・レオンのファンなので)それでも印象に残るような壮絶な演技だった。

日本版にも期待したい。

久しぶりに骨太のいいドラマを見た。内容を知らないのでオンタイムでなく録画で見たのはなんだか気が付けばしまった、チェって感じだけど(^^)




過去に書いていた映画の感想を後日編集したものです。
「インファナル・アフエア」
http://www.sora-m.jp/mteiga/cat23/




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「メモリー・キーパーの娘」 キム・エドワーズ  日本放送出版協会

2013-01-09 | 読書



久しぶりに「物語」らしい本を読んだ。時間とともに流れていく、家庭や周りの人々の暮らし、人と人との繋がり、喜び苦しみが次第に過去の歴史になっていくところ。
こういうジャンルがあり、最近まで、長くこういう読書の楽しみ方をしてきたのだったと思いながら、落ち着いた時間の中で、登場人物たちの喜怒哀楽とともに過ごした。
大きく言えば「人間愛」の物語であり、そして、有名な言葉を引くまでもなく、不幸は自分だけの思い込みにすぎない「愛の形」で作られているのだ、ということが今更のように実感される。生きるということの本質は、愛なのかエゴなのか、酷なことに、時はそれを鮮明にする前に流れ去ることである。

* * *

裏表紙より
1964年のある大雪の夜。医師デイヴィッドと妻ノラは男女の双子に恵まれるが、女児はダウン症だった。デイヴィッドは妻を悲しませたくないがために、とっさに娘を人手に渡し、妻には死産だったと偽るのだったが・・・・。
一見裕福で幸せそうな夫婦、娘を預かった孤独な女、別々に育てられる兄妹----たった一つの嘘によって、それぞれの人生がもつれた糸のように複雑に絡み合っていく。



デヴィッドは整形外科医だったが、雪のため産科医が事故に遭い、切羽詰った妻の出産に彼が子どもを取り上げることになった。最初に生まれたのは元気な男児だった、しかしあとの子どもは女の子で、一見してすぐにダウン症の明確な兆候を確認した。さまざまな思いが錯綜する中で、仕事場で、付き添いの看護師の好意を感じていた、それを利用した形で、そのまま施設に預けに行くように頼む。
そこから話が始まる。

看護師は離れた施設に車を飛ばすが、中に入った途端、冷え冷えとした空気、放置されたような荒れた建物におびえた。彼女はついに自分の手にか弱い娘を抱きしめて帰宅し、育てることにする。

一方デヴィッドはやはり罪の意識と、妻のなくした子に対する愛情の板ばさみになり、辛い日常から逃れるために苦しんでいた。
妻も息子の成長に癒されながらも、顔を見ることも出来ずに亡くした娘の面影を思い続けていた。
夫婦の間は子どもの話が始まるたびに次第に冷えていった。

そんな中でも,なにも知らない子どもは、這い歩き、学校に通い、成長していった。

男の子(ポール)は才能を認められ、好きなギタリストになることに決めていたが、デヴィッドは堅実な仕事について欲しかった。

彼には貧しく育った過去があり、今の生活を受け入れて、彼にも理解して欲しかった。

だが、ポールはジュリアードに入り自分の道を進むようになる。

看護師(キャロライン)に育てられた娘フィービも成長した。
ダウン症から来る心臓疾患も、平均して見られる短命という症例も彼女は無事に潜り抜けてきた。
キャロラインたちのダウン症の子を持つ人々の輪は、一般教育を受ける権利を獲得し、フィービは多少緩慢ではあるが不自由なく話し書くことが出来た。

デイヴィッドもまたダウン症の姉を持っていたが早くに亡くなっていた。その当時の家族写真は過去を思い、記憶をとどめる大切な一枚だった。
彼は写真にのめりこみ、いつか世間からも評価されるようになった。

キャロラインはフィービの写真を入れた手紙をデイヴィッドに送り続けていたが。
彼は一度もフィービに会うことはなかった。

妻ノラは妹と興した旅行会社で成功し、忙しい毎日を送るようになった。

デイヴィッドは退職して、診療所を開き貧富を超えて多くの人々の病を診ていた。

* * *

母性愛と、社会を背負った父親の、相容れない部分が深い溝を作っていく。
そして二人の成長と、25年という年月がいつの間にか全てのものを巻き込んで物語の世界に連れて行く。

ただ、私は、話題になった「八月の蝉」という本が好きではなかった。読みかけてはみるが、多少理解できないところもあって途中で読むのを止めてしまったが。どこか似たような雰囲気も感じた。

この「メモリー・キーパーの娘」のようなテーマは読む人全てに受け入れられるものなのだろうか。大きなお世話かもしれないがそんな名作は稀だろう。
この本のような母性愛、父性の表し方の違いも全ての人に当てはまるとは限らず、昨今、主夫という言葉も出来たことを思った。
だが、子どもを持つこと育てること、登場人物の哀しい背景とも相まって、出来れば読んでみてとお勧めする、悲しく暖かい、後味のいい、よく出来た作品だった。




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「延長戦に入りました」  奥田秀朗  幻冬社文庫

2013-01-05 | 読書



奥田さんはシリアスなものもいいけれど、読んでいて、微笑・爆笑という作品は、当たりかまわず笑ってしまうので、傍目に注意。
勿論 伊良部先生のシリーズはどれもこれも手放しで面白い。最近作は読んでないか、ミステリの滓がたまったときに残りを読もうと思っている。

これは、デビュー前に雑誌に連載していたエッセイだそうで、今読むと、少しデータがずれるが、少しくらいの過去は、まだすぐそこだと感じる年なので、おぅおぅそういうことがあったなと思い出す。

連載時は「スポーツ万華鏡」という題名だったそうで、テーマは各種スポーツを取り上げている。

一応体育の時間は、遊び時間だと思っていたくらい運動好きだったので、それぞれおかしくてつぼにはまった。


* * *

日常の真実と目の行きどころ

そうそう、選手やゲームの動きより、バックネット裏や升席の観客が気になることは多い。
ボールボーイが走り回っていると、あれになるにはどうしたらいいのか、と羨んだ事がある。ナイターでは時間が遅いので子どもは使わないんだってと聞いた、それでどうなったのかは知らないけど。勿論野球を見るときはバックネット裏や、甲子園の放送席の脇などに座りたい。



トップバッターの資質と学校の出席簿

またこれが面白い。例にもある「相川君」が高校時代にもいた。彼は常に入学式も卒業式も一番先だった、私も旧姓は「イ」だったので、授業の指名率が断然高かった、幸い「イ」が二名いたのだが、前の彼女は要領がよく、「荒城の月」の詩を歌えということになり、「今風邪で」と逃げたので、二番手の私が恥をしのんで歌った、彼女は私を親友と呼ぶが今でも私にとってはただの知り合い、同級生だ。


スポーツのがに股と女子選手の葛藤


これも思い出話になるが、体育測定が年に一度有った。私はまじめに50メートルを全力疾走して、体育祭では記録順にクラス対抗選手に選ばれた。
ところが、運動部の足自慢が出てない、適度に手を抜いて、特に奥田さんが言う大また開きの走り高跳びは早々にバーを引っ掛けて降りたらしい。何だよ!と気が付いたのは誰かの話に出たからで、まじめは、要領がいい人に負けるのだと気がついた。何事も要領が悪いと労多くして功少ないのというのが大人の智恵。


不良高校生の顔色とハンドボールの真実

これも、体育祭の思い出だが、クラス対抗になっていて、ハンドボールも種目に入っていた。ソフトボール部で肩が強いといわれて選手になったが、あまり馴染みのないものだった。ルールは、サッカーは足だけだがハンドボールは手だけ使え、といわれた。
同じようにゴールキパーがいてそこにボールをシュートするのだが、サッカーと比べて、防御に腕が使えるというのは見ていて綺麗なものではないなぁと感じた。今はあまり聞かないが、どこかでは行われているのだろうか。


* * *

感想ではなく、読んでいると、そのとおりと感じながら、つい自分を振り返ってしまう。

そういう見方もあると、斜めから観戦、うちから考察。いやどの項目も、笑って読める。言われてみれはおかしい、思えば実に変なことを見過ごしているものだ。

「どちらともいえません」というエッセイもあるようでそのうち読んでみたい。



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「どこかの街の片隅で」 赤井三尋  講談社

2013-01-03 | 読書



前に読んだ赤井さんの「月と詐欺師」が面白かったので、借りた。
お正月には時間が出来たので、いろいろ読んだが、新年早々あまり衝撃的な内容は避けたいので、そこそこ無難なものを選んだ。
ほのぼのと笑えるような内容のものなど、一年の幕開けにふさわしいものを読んだりした。
図書館でも、書架の前に立つと、題名が気になるようになった。
今日、ぶらっと寄った本屋さんで、パトリシア・コーンウェルの「血霧」というのを見た。スカーペッタさんとはご無沙汰だなぁと思ってぱらぱらと読んでみたが、題名もいつものごとく、まがまがしくてなんとなく遠慮してしまった。はじめの10作くらいは一気に読んだが、当時は気力もあったし、検屍官という職業がものめずらしかったかも知れない。
横山 秀夫さんの「64」も評判がよくて面白そうだったが、文庫になるまで待ったほうがよさそうだった。
よく自分にご褒美などというが、自分にお年玉というので買いだめも悪くないかも、と何冊も手が出そうになったが、まぁ年の始めくらいは堅実に、借りたのを読んでしまってからにする、と。

ミステリ仕立ての短編集。作家という人はいつもこういうちょっとしたアイデアやヒントを膨らましているのだろうか。短編でも落ちがあって、形になっているのが面白い。テーマに味があって、短かくても出来上がっているのがいい。

* * *

老猿の改心

金庫破りをした老猿が、足音に驚いて隠れた金庫が閉まってしまった。その金庫がゆさぶられ、その行き着いた先には。
読後は、うふふ、なかなかいい。


遊園地の一齣

銀行強盗の上前をはねようと思った青年の話。これはまぁまぁかな。


クリーン・スタッフの憧憬

テレビ局の清掃員のバイトをしている結花は、出て行った父も戻り家庭は少し安定した。美術学校に行くために働いていたが、テレビ局の小物置き場で、高価な古伊万里のつぼを割ってしまう。そこで、、、
ちょっといい話。


紙ヒコーキの一齣

紙ヒコーキを取ろうとして子どもが4階のベランダから転落、幸いかすり傷ですんだが、5階に監禁されていた私はその紙ヒコーキを作って助けを求めたのだ、、落ちた子どもを助けようと駆けつけた警官に私も助けられた。
これは短いながら面白かった。


三十年後

若いころは、遊び仲間と贋金を作ったり、ビンゴゲームにはまった時期もあった、その頃キョーダイさんという名前の兄貴がいた、京大に在学中という遊び人だったが、上京して警視庁の警部になったという。
三十年後、そのキョーダイさんとカジノでめぐり合ったときなどは、まともには生きられず業務上横領で手配されていたのだった。警部になったキョーダイさんにみつかり、腕にかちりと手錠をかけられた。
これはすばらしく面白かった。


アリバイの一齣

お人よしのかっての同級生鈴木に、アリバイ工作をさせるつもりが、、、
アイデアが面白い。


青の告白

私は結婚寸前で心変わりした佐奈江を殺した、佐奈江の新しい交際相手が犯人になるようにたくみに細工をした。
その細工は稚拙だったが、面白い。


善意の一齣

赤いスポーツカーを盗んだ二人は、赤ん坊が乗っているのでびっくり仰天。お人よしの泥棒が捕まるまで。


花曇り

梅雨のある日、本因坊戦で勝ちを譲ってくれたN八段が亡くなった。その時のN八段のお陰で事故にあった妻の最後に間に合って言葉を交わすことが出来た。同乗していた娘は足が少し不自由になったが、結婚することになった。
N八段は、勝ちを譲ったあとは、勝負に見放されたのか寂しい生涯だった。
娘が嫁ぐ日になった。

しみじみとした余韻の漂ういい作品で、ひそかな隠し手まである。


誘拐の一齣

娘が誘拐された。部屋には刑事が張り込み、パソコンまで用意してきた。それで一億円の札のナンバーを控えている。
あとは犯人からの電話を待つばかり。
それで・・・・
アララ と笑って読めるオチが用意されている。

* * *

短編は読みやすい、出来のいい作品がそろっていて、新年にふさわしい充実した読後感が残った。
あまりひねりすぎではないし、ふさわしいと思えるテーマの多様さも一興で、力のある人だと思える。

文庫版は「花曇り」と改題。




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新年明けましておめでとうございます

2013-01-01 | その外のあれこれ

快晴の元日です。

皆様にとって、良いお年でありますよう。

今年もよろしくお願いいたします。
 
                2013.1.1.  misako













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