緊迫した生き残りゲームがほとんどのページを占めている。
保安官補の女性と殺人犯の知恵比べのサバイバルが読みどころかな。
偶然二人組みになった逃げる側と追う側、見方を変えれば、逮捕する側とされる側、警官と殺人犯、という組み合わせ、時間とともに理解が少し深まって二人の関係が次第に変化していく、このところはありかもしれないが、一夜の出来事にしても、暗い森の長い追跡は少し飽きる。
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人里はなれた森林の中の別荘で夫婦が殺される。保安官補のブリンは現地に行き、生き残った女(ミッシェル)と出会う。
二人組みの犯人が追跡してくるが、二人は湖岸の森を抜けて逃げていく。
連れて逃げていく女優崩れの女は足手まといになるし、何かとぐずり続ける。
やっとたどり着いた窪地に止まったキャンピングカーは、ほっとする隙もなく、麻薬製造の一味だった。この一味にも狙われる。
そこで追いつかれた犯人たちの銃撃で一味は殺され、ブリンは生き残った少女を保護する。
隙を見て逃げるが、今度は子ども連れの難行。
ブリンはありえないほどの困難の中で、さまざまな智恵で犯人をまくが、この智恵比べが読みどころ。
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一気に読めばそれなりに面白いが、少し時間が空くと、まだ逃げているのかと思うほど、悪条件が次々に降りかかり、追いつ追われつの果てしない物語に思える。
ただ、そこは実力派というか、ブリン組の人物像、ブリンの家庭や仕事場の事情、犯人達の目的などもあって、興味をひく部分もある。
被害者の夫婦はなぜ殺されなくてはならなかったのか。
ブリンとともに逃げることになった女の真の顔が見えてくるところなど面白い。
だが今回はあまり魅力は感じなかった。
こういう、少しゲームっぽい筋書きは長いと緊迫感が少し薄くなる。
娘はまだ確信がなさそうにしていた。ブリンは罪悪感には複雑なDNAがあることを知っている。毒性を持つものにかならずしも純粋種である必要はない。しかしミシェルは、ブリンの言葉に多少の慰めを見出したようだった。「時計の針を巻き戻せたらいいのに」
それって毎日の祈りじゃないの、とブリンは思った。
こういうところは好きな部分で、つい次の作品に手を出す。
「逃げる」ということで、面白かった映画を思い出したが題名を忘れた。ただ逃げる、どんどん逃げる映画だったが、なぜか面白かった。
ついでに「ジェリー」という映画も思い出した。
砂漠に入った二人の若者が道に迷い、歩き続けていく、二人がついに独りになってしまっても歩く、ただそれだけで、恐怖や孤独感が、すばらしい風景の映像とともに伝わってきた。
事件や出来事の経過を伝えるだけでなく、何か響くものがあってほしい。この作品を読みながら、ストーリーをたどるだけでは面白みがないという感じがした。
★しばらく(一ヶ月ほど)留守にします。その間に読んだ本は帰ってからメモ書きします。またよろしくお願いいたします★