空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「クーデター」楡周平 角川文庫

2012-09-30 | 読書

「朝倉恭介」×「川瀬雅彦」
これは「川瀬雅彦」の章にあたる。

* * *


CIAに、銃器を積んだロシア船「ナデージダ」について情報が入る。オーダーしたのは日本人。
「あの国に、なぜこのような武器がいるのだろう、しかしまだ我が国に不利な影響はないだろう」


荒れ狂う日本海の嵐の中で、日本の二隻の救命ボートに武器が積み替えられた。受け取った「武上」は胸に手を当て守護神に役目の成功を感謝した。武上は教団「龍陽教」の奨学金で教育を受け陸上自衛隊では、武器の訓練成績も優秀だった。


彼らは親の代からの「龍陽教」の信者だった。子供の頃から「龍陽教」の教育を受けた子供たち成人して、自衛隊をはじめ各方面に散らばっている。
教団70年の歴史とともに信者の数も増え、二代目を継いだ教祖は信者にとってついに神と呼ばれる。
教祖は、この腐敗した国を立て直すことを使命だと思い始める、息子とともに、各界に手配してある信者の情報を集め、潤沢な資金で海外の武器を密輸入して武装し、実行に移すことにする。

報道写真家の「川瀬雅彦」は、命を削るような戦乱の取材地から帰還する。日本ではニュースキャスターとして活躍する恋人の「由紀」が待っていた。結婚の約束をして彼女は福井にある原発の取材に出発する。

貨物船「ナデージダ」はベトナムに向けて、次の航海に出た、ドラム缶には「元山」で下す炸薬が入っているが、それはCIAの偵察衛星の写真で鮮明にキャッチされていた。「北朝鮮の暴走を止めるにはあれを撃沈するしかない」
原子力潜水艦「ラ・ホーヤ」に指令が下る。潜水艦は日本海にでていく。


「元山」に寄港する「ナデージダ」は北朝鮮の領海の、僅かに外の地域に当たる国際海峡にいた。「ラ・ホーヤ」のソナーに位置反応があり、「ナデージタ」の真下にいることが分る。まさに今、魚雷発射の合図をするというとき、「ナデージタ」には異変が起こっていた、積荷の折の粗雑な扱いで炸薬がもれていた、そこに見回りの乗組員の安全靴の火花が引火して爆発、「ラ・ホーヤ」もろとも鉄の破片になった。

(緊迫感が盛り上がる読みどころ^^)

 

そのとき「龍陽教」では、この船の爆発に乗じて、計画を実行する指令を出す。爆発が北朝鮮の襲撃だと思わせるのは好都合だった。これは福井原発を襲うと見せかけて、自衛隊を誘い出す作戦だった。一方では警視庁の駐車場やアメリカ大使館にも爆弾が仕掛けられ、建物の一部が爆破される。そうして「龍陽教」の思惑通りに事が進んでいった。

アメリカ軍の空軍へリが打ち落とされ、駆けつけた自衛隊も壊滅的な攻撃を受ける。ライトを浴びながら報道現場からレポートを始めた由紀が、カメラの前で打たれて即死する。

さまざまな情報が入り乱れる中、由紀の死を知る、茫然自失のまま川瀬は能登に向かって出発する。そこには「龍陽教」の攻撃隊が待機していた。

駐留しているアメリカ軍、緊急出動する自衛隊、マスコミ、「龍陽教」の兵士たち、政府閣僚。日本の危機は空想の舞台としては、随分現実味を帯びて伝わってくる。

* * *

一気に読んでしまったが、クーデターという一種の英雄的に見える行為が、反面多くの犠牲を強いるものであることも当然考えられる。
10年ほど前の作品のようだが、さまざまな内情が盛り込まれ現実感がある。

川瀬雅彦と由紀の悲運など、ストーリーには柔らかい部分もある、
彼は時間をかけて立ち直り、次作の「クラッシュ」で活躍するらしい。

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「Cの福音」 楡 周平 角川文庫

2012-09-28 | 読書



ミステリの背景はさまざまだが、これはアクションと言うかなかなかハードボイルドしている。
主人公の朝倉恭介は悪または罪(社会の裏側)の世界で生きて行くという変わった人生の選択をする。

* * *

総合商社勤めの父の転勤でにニューヨークに渡り、そこで中学を卒業してミリタリースクールにはいった。大学入試も決まったとき、卒業式のために、ニューヨークから来る両親の乗った飛行機が、着陸に失敗して爆発、彼は孤児になり、深い孤独感を味わった。
父が勤めていた会社は、息子の卒業式に出るというような私用で、事故に遭ったのだから、というので退職金と僅かな見舞金しか出さなかった。

さいわい彼は航空会社からの莫大な補償金で大学を卒業した。ミリタリースクール時代に訓練を受けて体を鍛え武器の扱いにも精通した。 通っていた武道訓練の道場からの帰り、二人の暴漢に襲われ、正当防衛としても、殺してしまう。
会社・企業というものに属することは、すでに見限ってしまってはいたが、このことで汚点を残し、就職という意味での企業活動は行く手から閉ざされた上に、その後、支えであった親友も事故で失ってしまう。

一人息子の死で悲嘆にくれる親友の父は、財界で成功した大富豪だった。亡くなった息子の代わりにと請われて、彼に仕えることにする。経済大国になった日本は彼の事業にとっては将来の大きな標的でもあった。

次第に恭介は、親友の父がニュヨークの闇の部分を牛耳っているという、もう一つの顔に気がついていく。恭介はその時から、彼(親友の父)の仕事(ニューヨークマフィア)とともに生きるという将来を選択をする。

明晰な頭脳と強靭な肉体を使って、巧妙なドラッグ(コカイン)のネット取引を始めることにする。周到な計画が全てうまくいき、帰国してからも日本市場で大きな成功を収めていく。輸入法もドラッグの捌く方法も非の打ち所が無かったのだが。

日本のやくざとの抗争もある。目には目を、悪には悪を。ドライな裏の生き方が見もので、それは一面むごく苦しいかに思えるが、彼はその中で縛られず自由な生き方を享受する。人間の持つ悪しき心の一面(罪の意識なく)だけで軽々と生きていくニューヒーローと言える。

彼の考えた密輸の方法や販売の方法は、非常に冷酷巧妙でそのシステムはどんな犠牲もいとわない、違った意識世界を垣間見る。

これはこれから始まる朝倉恭介シリーズの序章。
次を読んでみないとわからないのだが、巻末には朝倉恭介に対して善なるヒーローが生まれるそうだ。
続きを読むのがいいのか、そしたらまたシリーズ本の罠に嵌るのではないか、とちょっと重たい心構えがいる。

* * *

以前、香港マフィアを主人公にした「インファナル・アフェア」という映画を見た。ハリウッドで「ディパーテッド」と言う題名でリメイクされたが、身分を交換して(されて)警察内部のスパイになったマフィアと、マフィアに入り込んだ警官の、心の戦いや苦しみがよく描かれている、脚本も優れた、香港ノワールの名作だと思っているが、東洋的善悪の心の葛藤を持たない、アメリカナイズされた、朝倉恭介という主人公の生き方が珍しい一冊だった、面白かった。このシリーズでは最初に読んだ本なのにアップするのを忘れていた。



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「眠れぬ夜に読む本」 遠藤周作 光文社文庫 (1)

2012-09-26 | 読書


随分前に、このことにちょっと触れた。
眠れないので「眠れぬ夜に読む本」と言うのを読んでいたが、余計眠れなくなってしまった。
というようなことを書いた。

とうに亡くなられてしまったが、著書はほとんど読んで、読み返すたびに、もう先がないのだ、これで終わりだと思う。
それでも完璧でない自分は、全集なら、きっと半分も読んでないだろうということがわかっている。
宿題かもしれない。

「この眠れぬ夜に読む本」は270ページの薄い文庫で、同じシリーズに「私にとって神とは」「死について考える」と言う二冊があがっている。この二冊も、まだ未読なので、私のほとんども当てにならない。
後の二冊は、読んでいないのでわからないが、題名から、もう少し先で考えてもいいだろうと残してある。

眠れないときは何を考えるか、
1 生と死について考える
2 東京について考える
3 自分と他人と動物について考える
4 趣味と興味について考える

という目次に続いて、少し詳細に題名が並んでいる。

名作「沈黙」があるように、狐狸庵先生はキリスト教徒だったけれど、難しい宗教の話や、心理学や、医学の話ではない。

好奇心の赴くままに、過去や、現代や未来を考え、そこにあるべきもの、あったもの、出会うものなどを、ユーモアをこめて、語っている。
不思議な現象を科学に照らしてみたり、人とは何なのかと、遺伝学を紐解いたり、軽い話題の中でも、死後の世界を考えたりしている。
昼間には、生活があり、合理的で、実際的で、複雑な時間が繰り返されていく、だが周囲から離れて自分ひとりになった夜の思考は、混じりけのないむき出しの心と対面できる時でもある。

そんな時、生きていることや亡くなった人や、自然や、伝聞であっても不思議な現象や、気にかかっていながら訪ねたことのない土地への思いに浸ることが出来る。

「眠れぬ夜に読む本」はいつも私の傍にある。難しい言葉もなく理解できない不思議もなく、その世界を共有できるところにこの本の魅力がある。

「地獄の思想」とともに、現実を超えた、人の心の深い底の流れに誘われる本である。

いつか目次に沿って思うことを書いていきたい、とりあえず(1)にした。



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TVドラマ 「ミディアム」霊能捜査官 アリソン・デュボア

2012-09-25 | 日日是好日

アメリカのドラマは面白い。
特に「アリソン」がいい。

彼女は何か事件が起きると、それに関した夢を見る。予知夢のときもある。
夢だから、夜中や寝てすぐや、明け方にも見る、たいていどこか知らない場所で知らない人が、殺されたり誘拐されて「たすけて~~」と叫んでいたり、すでに手遅れだったり、一場面だったり、すこし長いいきさつも見る。
アリソンはそのたびにベッドかから飛び起きる。声に出して叫ぶこともある。
隣で夫のジョーがぐっすり眠っているが、そのたびに目が覚めて、寝ぼけ声で「なに~~ どうしたの?大丈夫?」と聞く。
夫の側に電話台があって、体越しに電話を取り上げて、捜査官に電話する。夫が取って渡してくれることもある。
自分の側に置いたらよさそうなものだが、慣れたもので夫婦の連係プレーである。ジョーがアリソンの半身を乗せられて電話を取っても、何も愚痴らない「どうした?、大丈夫」(^∇^)

事件の発端になる夢を見ると、捜査官にこうして連絡がいく。
そんなこんなで複雑な事件が解決するのだが、いつも珍しい強盗事件や、家族のごたごたから起きる事件や、夫婦喧嘩や、複雑な選挙や法律がらみの出来事が、アリソンの夢どおりつじつまがあって、うまく解決する、話も面白い。

それよりも、アリソンのちょっと薄いブルーの目と美しい顔立ち、めずらしく豊満な体、邪魔なくらい大きな胸。服を着るとそんなに醜いほどではなく親しみを感じるが。賢い女の子三人をあしらうのはあの体形でないとね、と思う。
ベッドでは太目の腕をジョーに回したり、ジョーが落ち込んでいると枕にするのにちょうどいい。

ジョーは科学者だが、会社にピストル強盗が入り同僚が死んだ、そのトラウマで休業中、なので、正式な捜査員ではないアリソンの収入と休業手当(が出ているらしい)で家計は苦しい。ジョーも、がんばって職を探しているが能力に見合うところになかなか出会えないで居る。

そこで三人の娘の朝ごはんを作り、学校に送る。まぁそれもアリソンができるときはやっているが、ピザだったりテイクアウトの何かだったり、それなりに家事も手伝っている。


たまの夫婦喧嘩が特に面白い。娘たちが心配するので怒鳴りはしないが、お互い原因は思い当たるし,娘たちだって気がついている、二人とも見栄を張らないと立場がない、気の利いたジョークをジャブで出す、駄目なら「だめ」と一言。

だがこの間はさすがのジョーもすねた、儲かりそうな発明をしたのに出資者がない、子供たちの大学の学費を使いたい、アリソンは頑として譲らず、ジョーは怒ると口を利かなくなる。乏しい小遣いでバーに行ったりして顔を合わさなくなる。(ジョーってそうなんだ^^)お酒が飲めるとこういうときいいなぁ。

親の残した娘たちの学資を使っていいのか、普通はいけないでしょう。でもジョーは仕事を休んでいるし、わかってはいてもそこのところがちょっと弱いのだ。
それなりにうまく解決するが、普通の家庭らしい雰囲気がいつもよく出来ている。

特にジョーは家に居るときはパンツだけで歩き回り。ぶかぶかぶかしたボクサーパンツでうろうろしている。
家族も見慣れたものらしい。


これを見ていると、うちのパンツ男に何か上に着て、と言えなくなる。
「そのパンツが部屋着なら、ばりばりブランドのでも買ってきてあげようか」と言ったら
「安くてもいい、きれいなのが沢山あるほうがいい」そうな。
きれいってデザインのことか、清潔にはしてるでしょう?フン
冬になっても毎年この姿で、まぁジョーだってそうだからとこのごろは点が甘い。
でもいつかリビングで友人と鉢合わせしたときはさすがにきまりが悪かったらしい。パンツ姿だって忘れていたようで( ̄ー ̄)ニヤリッ

楽しみなアリソン・デュボア、
吹き替えあるなしにかかわらず録画するので、一日に同じものを二度見ることがある。あれ~~声が違う(吹きかえてないだけ)焦る(゜▽゜;)

今webで見たら実話だって
わ~お 微妙に複雑な気分




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「鍵のない夢を見る」 辻村深月 文芸春秋

2012-09-20 | 読書

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直木賞受賞作作者が若いので(1980年生)ちょっと感覚的なずれを感じるところがあって、あまり読みたいと思わなかった。だが、(なぜか今度も短編集だったが)予約の取り消しを忘れていて読んでみた、これが実に面白く、作者の実力を感じた。何かの受賞作が、賞に見合うものばかりではないと思うことがおおい、人気作という評判が先になっているものもあるが、若さを感じさせながらも、いい作品を書く作家だと改めて思った。

「仁志野町の泥棒」

中学生のころ、友人の母親は泥棒だった、小さな被害にあった人たちも多かったが、まわりはそんなに騒ぎもしなかった、どこに住んでもしばらくすると引越しをして出ていく、でも住処は近隣から離れる様なこともはなかった。出かけていて帰ってきたとこころに、彼女が盗みに入って居るのに出くわした。顔を真っ赤にして震えながら帰っていったことが記憶に残っている成人して出会ったとき、彼女は名前を思いだすのに手間がかかった。訝るようにしながらやっと思い出したが、些細な影にしても彼女のこころに残っていなかったのか。特異な心理を陰影深く書き出している



「石蕗南地区の放火」

もてない、縁談を進められてもその気にはなれないようなタイプの男が、うまく書かれている。好みということもあるが、えてしてこういうタイプは、多くは自信家で己を振り返らず、外見にも気を使わない。主人公の心理が手に取るようにわかる。事件も、ありそうな結末で、新味はないがその分納得できる展開だ。




「美弥谷団地の逃亡者」

ミステリとして成功している。心理描写もストーリーテクニックもいい。若い男女の行動は言葉も行動も文字通り隔世の感じがするが、これは年齢を超えて同化する部分がある。



「芹葉大学の夢と殺人」

題名がすべてをあらわす。大学生の、自己中心で、甘えた一途な夢を持つ男と、それに寄り添ってきた女の話。男は顔立ちも女好みで次第に惹かれていくが、男は自分の進路を一直線に描いて、周りを見回す感性を持っていない。女はやわらかい生き方、育ち方のために、すべてを理解した上でも、離れられない。不運にも交わってしまった、違った質を持つ二人のはなし。この男のような(もしかしたら精神科では何か病名をつけるかもしれないような)タイプもこの女のようなタイプも読んでいるうちに、少しなら思い当たる節が誰にでもあるだろう。すぐ身近の現実ではないにしても。男の身勝手にはすべて理解しながら引きずられていく女、自分とは重ならないまでも、優れた心理描写に引き込まれる。



「君本家の誘拐」

子育ての光と影というか、まるで寄生されているような妊娠中から産後の嬰児との生活、少し育ったころ、やっと自分にかえる一瞬。母性の中にある育てるがわの自分との葛藤が面白い。これに、偶然バネ指が登場してびっくりした。

また面白い本を読んだ。特に「芹葉大学の夢と殺人」は賞に恥じない、これだけでもいいくらい、好みに合って面白かった。希望者が多いのですぐに返却してくださ「印」がついていた、これからか返しに行く。




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「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン ハヤカワ・ポケット・ミステリ

2012-09-18 | 読書


 


最近大当たりで面白い本にばかり出会っている。おかげでテレビの録画がたまって、容量が残り少なくなっている。


語り手(ハリー・ブロック)は、ミステリ、ポルノ、ヴァンパイア小説、SFなどを生活のために書いてきた。ジャンルが変われば名前も変えて、やっと糊口をしのいでいる有様。それぞれの本に貼る肖像写真を苦し紛れに作り出すところがおかしい。アルバイトに高校生の家庭教師までしている。この生徒がまたマネージャーができるほどに優秀でハリーは助言を聞き、教える立場ながら教えられることが多い。そこに80日後に死刑になる男から、告白本を書いて欲しいと依頼が来る。迷った末にベストセラー作家を夢見て(結局は折れて)、書くことを引き受け面会に行くが、殺人犯は知的で狡猾だった。訳のせいか、作者のせいかとても読みやすく難解なところはない。それでいて、ハリーが今までに書いた作品の引用や、作者の生き方、思想、文学論もありコレがまた読ませる、面白い。この作者もミステリ好きで(そう書いている)、名の知れた探偵や刑事が織り込まれていて、ひょんなところでお名前にお会いして、と言う具合で、ちょっと嬉しい。


さすがポルノ小説の作家でもあり、露骨なシーンや言葉も出て映画化するならきっと15Rだろう、ただ、ミステリには始めがあって終わりがある。型どおり犯罪が起きて解決する、それはそうだが、そうやすやすと型にはまってはいない(と作者が書いているがそのとおり)こういうところも型破りな、変わったスタイルで面白い。


わかり安い種明かしが中にはであるそうだが、まったく見つからなかった。さすがに意外な展開は多く、スリルがある。ポケミスでも450頁は厚みがあって長い。それを飽きないで一気に読み通すことができる。面白さのエッセンスが詰まっている。アメリカ探偵作家倶楽部賞新人賞候補作、2011年のことだが、それでどうなったの、調べても答えはないけれど。次作はどうなるのだろう。★ また個人的には だ!


 

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「言語小説集」 井上ひさし 新潮社

2012-09-17 | 読書

 

 

今日は笑いたい気分なのに、ユーモアが好きなのに小指にも足りない、と思っているならこれ!すぐに読めてしまうので。
悲しみや憂鬱や気に染まないことが、こころの半分くらいだったら、もう抱腹絶倒間違いなし、ほとんど憂鬱に占められていてもウフフくらいはいける。
作家がほめる、批評家も文句なしに認める言葉の手品師、言語マジック、それは亡き井上ひさしが残してくれた、日本語の美しくも妖しい、まるでそれは言葉ではないかのように、新たな命をもった言葉や記号たちが、新しい目を開かせてくれる。

「括弧の恋」

「 は 」に恋している。「 があれば遠からず(遠くても)」がついていく。二人で寄り添っているべきなのです。という。
記号同士がもめている。!はどこだ。高圧的な●は!に言う。
だが∵が論理的に結論付けようとする、繰り返し記号はそうだそうだと同意する、次には何でもまとめたがる〆がでてくる。
ひとつの壊れかけたワープロの中でこんな騒ぎが起きている。
簡単に抜き出してみたが、こんなものではない、たくさんの記号たちがそれぞれの出番で右往左往する。
これは名作。



「極刑」

文章には法則があり、それで意味が伝達される。
それがまったく文法を無視したせりふを振られたら、役者がどうなるか。
思いもかけない着想がせりふがまた一段と面白く、読んでいても目を白黒する。



「耳鳴り」

耳鳴りは同じヘルツの音を聞いて消すのがいい。治療の確立していない病気に医者の診断も確立してない。
そういわれた患者は、、、。



「言い損ない」

言い損ないってあるある。
でもアルバイト先で「ベーコンエッグです」を「エーコンベッグです」なら許容範囲かもしれない。ところがところが、見合いの席で、あがった彼は言い損ないの連発。よくもこんなに間違えそうな言葉を集めたか、その上意味不明な会話がなんだか危ういピサの斜塔のように、わかるようでわからない、その滑稽さは群を抜いている。



「五十年ぶり」

方言に詳しい男が、五十年前のできごとをおもいだす。
作者の博識と方言についての造詣の深さに驚く。
ストーリーがまた秀逸、場所が風雅な旧式のトイレである。



「見るな」

これも方言に由来した話。東北の方言は作者ならでは。
そこに過去のマレーとの交易の痕跡を見つけ、ちょっといい話。



「言語生活」

これはある言語学者の講演記録ということになっている。
ヒポクラテスに誓って他言しないと、
聴衆の学生たちに釘をやんわりさして(このところも面白い)ある男の病歴を話す。

まじめで信用のある男が言葉に変調をきたして行くその言葉がまた、ありそうでなさそうで、この本の有名なくだり、駅員になった男は
「大便ながらくおまたせしました。間もなく一番線に新宿行き快速が入ってまいります。そのまましらばくれてお待ちください」
聞いた助役は駄洒落だと思った。
だが、つづいて
「一番線に電車が這ってまいります。どなたも拍手でお迎えください」
「車内ではおたがいに席をゆすりあいましょう」と言い
「お年寄りや生活の不自由な方に席をゆずりましょう」
「この先ゆれますので五十円ください」

理由を聞くと
「お前は何をやっているんだ、冗談にも歩道と車道があるぞ・・・とにかく自分をほめて・・・いえせめていたところです」と悲しんでいる。




大幅に割愛しましたが、これは字数の都合でお読みになって笑っていただくほかなく、これに続く部分もすばらしく占めのところは身につまされるところもあり、もう笑わずにはいられない。

★文句なく 5

 
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「陽だまりの偽り」 長岡広樹 双葉社

2012-09-17 | 読書

「傍聞き」より前に書かれた短編集で、読みやすい。

陽だまりの偽り


淡い青のなかは

プレイヤー


写心


重い扉が



どれも最後は暖かく終わる、ミステリ仕立てであるが、思いやりや人情の豊かな土壌に、事件に巻き込まれたときの人間的な心情が、暖かく包まれるのを感じる。
迫力のなさ、長編の持つ厚みにはかけるかもしれないが、こういう読書の楽しみ方もあっていい。肩の凝りがほぐれる。


「陽だまりの偽り」 


地域の名士と自負してきた育造は、自分の痴呆症、アルツハイマーを自覚した。だが人に知られないように密かに隠し、ばれない工夫も怠りなかった。
嫁に頼まれて郵便局に送金にいく、月の一度の仕事は失敗してはならない、しかしふと置いたバッグがなくなった。
彼の涙ぐましい自衛策は裏目裏目に出てしまう。
これは面白かった。

★4

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「燈台守の話」 ジャネット・ウィンダーソン 岸本佐知子訳 白水社

2012-09-16 | 読書

 

私(シルバー)はスコットランの北ソルツの崖に斜めに突き刺さった家で生まれた。なにもかも傾いていて、母親と綱で結び合っていた。
しかし母が、滑って崖から落ちて、繋いでいた綱を切り独りで死んだのでシルバーは生き残り孤児になってしまった。
養父は、1802年に建設が始まり1828年に完成した灯台にすんでいる灯台守(ピユー)だった。

 

光が仕事なのに、わたしたちの暮らしは闇の中だった。光はけっして絶やしてはならなかったけれど、それ以外のものを照らす必要はなかった。あらゆるものに闇がつきまとっていた。時化帽をかぶれば、つばが顔に黒い陰をおとした。ピユーがありあわせのトタンでこしらえてくれた小さな風呂場で、わたしは闇に中で立ったまま体を洗った。引き出しの中に手を入れれば、スプーンよりも先に指に触れるものは闇だった。<強力サムソン>の入った紅茶を取ろうと戸棚を開ければ、茶葉よりも黒々とした穴が口を開けた。

シンボリックな一節だ。


こうして、ピューから聞かされる昔語りは、灯台の歴史であったり、それを作ったダーク一族の100年にわたる物語だっりした。
灯台は要らなくなって火が消えた。

ピューに別れを告げて20年後、シルバーはまた灯台を訪れた。


ストーリーは、灯台の日常、ピューの話されるダークの奇怪な生活のことなどが重なり合い、灯台で暮らしていたあいだシルバーは言葉の中に現れる海に漂っていた。
さまざまな巧みに挿入されたエピーソードにも引き込まれる。

実に奇妙な構成の物語だが、それぞれが齟齬なく重なり合い複合した中から、シルバーの強靭で孤独な生き方が見える。


作者も孤児で各所を転々として育ったそうだ、勉強してハーバードに入り、物語を書いた。
生きることは物語ることで救われる、、、これが彼女を支えてきた。

久しぶりの収穫

彼女の第一作、「オレンジだけが果物じゃない」を予約した。

★5

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今年の紫陽花

2012-09-15 | 日日是好日

暑いので、六甲森林植物園は涼しいかな、紫陽花も綺麗だろうし、と見に行って来ました

花はちょうど見ごろで、珍しい新種もたくさんあってゆっくり楽しめました。

 

気がつきませんでしたが、7月7日のちょうど七夕で、園内のステージで有名な美しい女優さんが、紫陽花や七夕について対談していました。

 

 

 

大きくしてご覧ください<(_ _*)>.

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宇治のハス

2012-09-14 | 山野草

 

雨模様の日でしたが、蓮に似合うようで出かけてみました。

途中で雨になってしまいました。雷雨の予報が出たので切り上げて帰宅しました

 

宇治のハス

大きくしてご覧ください(*^~^*)

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「カラーひよことコーヒー豆」  「100回泣くこと」

2012-09-13 | 読書

   

 

読みやすくて時間がかからなかったので二冊読んだ。


「カラーひよことコーヒー豆」小川洋子 小学館

女性誌の連載エッセイをまとめたもので短く読みやすい。
日常雑感というものがおおいが、最後の書き下ろしの部分がいい。

ふんわりと優しい暖かい話に包まれる。

一番感動した映画は「ソフィーの選択」だそうで、作家志望のスティンゴの苦悩も、同じ作家から見れば、書くことは尊く、作品は美しい祝福に値するという。ソフィーに囚われてこの映画を見た私は、作家はこういう見方もするのかと思った。

「届かなかった手紙」書こう書こうと思いながら時を逸した、とどかなかった手紙は沼に落ちる。消えてしまうのではない。

詳しく書けば字数が足りないが、いつも書かなかった手紙を心の沼に沈め続けている私には福音だった。
日常の出来事が暖かく綴られている。

★3.5


「100回泣くこと」中村航 小学館

最近、書店に並んでいる、読みやすく、昔のジュニア小説の流れのよう作品、これが中村航の青春小説で、この本もそうなのか、と思った。

長く飼っていた愛犬が年老いて死んでいく。
見舞いに行くのに古いバイクを直して同行してくれる彼女とは、一年間の「練習結婚」をすることにする。

そして二つの死を見ることになる。

日常の中で必ず出会わなければならない死がどんなに悲しく、苦しいものか、別かれていく苦しみにどうして耐えるのか。

読めば、胸が詰まる。だが、難しい言葉でなくてもいい、人生の底はもっと深く、道はバイクで走りすぎるものではなく、重い日々を超えていくこと、そんなことを書き込んで欲しかった。

★3

 

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「傍聞き」 長岡弘樹 双葉社

2012-09-08 | 読書

61回 日本推理作家協会短編部門受賞作

文庫になって並んでいたので買おうかと迷っていたら、図書館からメールが来た。やっと読める。

気の利いたミステリだけれど、難しい場面はない短編集。
異常な出来事に会う、そのことの起こりが、まずヒントとともに語られるが、
最後までなかなか本筋が見えない、卓越した面白さが楽しめる。

「迷い箱」


前科かあるために生活ができない人を受け入れる施設を開いている、設楽結子と利用者の一人、碓井の話。
無骨で律儀な碓井の就職が決まらない、いつもの頼みごとに少し気がとがめながら、幼馴染の工場に世話する。
盗癖があり、その上ごみあさりが趣味の佐藤は拾ってきたテレビを碓井の餞別代りにする。
この佐藤、脇役ながらなかなか味がある。
部屋に溜め込んでいるごみに耐えかねて結子は佐藤に言う。
「とにかく、部屋を今すぐ片付けるの」
「分かりましたよ。・・・・でもなぁ」
「何よ」
「いざ捨てるとなると、なんかもったいなくて、決心がつかないんですよね」
すると、いきなり碓井が口を開いた。
「迷い箱」
「迷い箱、この前、社長が言ってた。捨てるの迷ったら、迷い箱に入れる。そしたら五.六日で捨てられる」
碓井は終業時から後に二三日不審な行動をして、川に飛び込んだ。
どこをうろついてなぜ死んだか。彼が服役することになった罪の重みも悲しい。
「迷い箱」という言葉に象徴されるような、碓井の生き方と、結子という名前まで何かを意図したような、
暖かい筆致がいい。

「899」


消防士が恋した女性の家が延焼している。そこには赤ん坊がいたはず。赤ん坊を育てながら働いている彼女は、
子供を家においてあったのか。
相棒の笠間と跳び込んだ育児室には、隅々まで見たが赤ん坊の姿はなかった。どの部屋にも気配がなかった。
が、笠間が思いがけなく、いなかったはずの赤ん坊を救助してくる。
笠間は男の子をなくして、それが大きな心の傷になっていた。彼は炊事当番の日、辛口好きの消防士たちに甘いカレーを作る。
笠間が赤ん坊を救出した経緯、相棒になった恋する消防士の心理や、周りの消防士とのつながりも暖かい、結末はなんだかほろりとする。
よくぞ短編にまとめてくれた、ほっとするような秀逸のミステリ。

「傍聞き」


母子家庭の母、羽角啓子と、娘の葉月との心理戦というか、親子喧嘩がそもそも話しのメインで、面白い。
啓子は刑事である。
仕事から帰る途中だった、なぜか近所のうちが騒がしい。「イアキ」に会ったというのだ。人がいるのに盗みに入るのを「居空き」と言う。
被害にあったのは独り暮らしの老女の家だった。苗字が啓子と同じ羽角フサノだった。
逃げていく男は目の下に大きな傷があったという。まさか自分が手錠をかけた男、横崎か?
近所に居るとしたら、薄気味悪い。
しかしフサノのことも気になる、老人の孤独死の現場に、三,四回は出向いている。
また娘からのはがきが郵便受けに入っていた、親子はまたしてもバトル中。娘は言いたいことをはがきに書いて投函する。
「時間差攻撃よ」 といっている。そして何日か無言のバトルが続く。
同じ苗字のおばあちゃんのところに間違って配達されたことがある。恥さらしである。
「郵便屋さんが悪いのよ」
「悪いのはあんたの字でしょう、番地の9を7みたいに書くから」
娘は小さいころはフサノのうちで世話になった。もっと心配してもいいはず。
通り魔事件も起きて啓子は忙しい。だが横崎が留置されて名指しで面会を求めているという。
彼はそこで重大なことを伝える。それは「漏れ聞かせ」だったのか。
タイミングよくというか僥倖に恵まれ、窃盗犯が逮捕される。

親子はまたもとの生活の戻ったが、まだ葉月のはがきはフサノを介して届いていた。
啓子は思う、娘は「漏れ聞き効果を狙ったのだ」
大雑把に言うとこうなのだけれど。読まなければ味わえない伏線、巧緻に張り巡らされた言葉の網が、「傍聞き」と言うテーマの通りキーワードになって、読者を捕らえる。

「迷走」


救急隊員の蓮川は救急要請で、義父になる予定の室伏隊長と初めで仕事をすることになった。


倒れていたのは副検事の葛井だった。
蓮川の婚約者で室伏の娘を、車椅子生活に追いやった車を運転していた。
受け入れ先はどこも医師が手一杯ですぐには空かず、走り続けている。
葛井は命令口調で一人の医師を呼び出すように言う。
葛井が不起訴になった事故、その事故の担当医師、ここのもつながりがあったのか。
事故報告書に手加減を加えたのか。
しかしその医師も出先のため役に立たず、車は走り続ける。
一度は病院の駐車場に近づきまた付近を走り回る。サイレンをならして。
住民の苦情が届き始める。
隊長はつないだままの携帯を蓮川に渡し、聞き続けるように命令する。
患者の容態は少しずつ悪化している。
病院から受け入れの連絡を受けた後もなぜ車は走り続けるのか。蓮川に音のない携帯を聞かせ続けるのは。


落ちは、すばらしい。
私は表題の「傍聞き」もいいが、この「迷走」を一位にしたい。
読者向けトリックは思いもつかない方法で、新鮮だ。

すべて作品に、初期の段階で手ががりがある。情景描写だったり心理描写だったり、単に話の流れにうまく滑り込ませている。最後まで読んで、そうだったのか、と気持ちよ興奮を感じる。

★5

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「たたかわない生き方」 大内順子 イーストプレス

2012-09-07 | 読書

 

 

 

この夏、生き方に迷うことがあって、自分なりに解決するのに、散歩がてら本屋さんに行ったり、図書館を探したりした。

「判断力を強くする」藤沢 晃治 ブルーバックス

偉そうに、人生は二者択一だ、とか言ったり思ったりで今まで暮らしてきた。
大失敗だと思うことがあっても振り返れば何とかなっているし、どうしようもない月日の流れを取り戻すことはできない。
前向きに考えてみれば、いつものように「必ずすること」「してはいけないこ」「どうでもいいこと」
この三番目が厄介だ、とつくづく思う。
そこで目下の課題をどうするか、「判断力」って、私はどうなんだろう。
この本の14の指針に照らしてみた。そしてまぁいいだろうと選択した方法を採用した。迷いはまだ残っているが、選択は間違ってないと思える。
先も短くなった、優先順位と言う言葉がぐっと来る(^^)


続いて 表題の「たたかわない生き方」

以前は時々見かけた眼鏡の大内さん、私よりすこし先に生まれていた。

私は「たたかわない生き方」にこだわってきた。後味が悪いし、口に出したらもう取り返せない。

昨年のモットーは「即答をしない」だった。私はすぐに「いいよ」「その日は都合がわるいし・・」と答えて来た。それで追い詰められることがあった。

大内さんは
「たたかわない」と言ってもなんにでも妥協するとか、誰にでも同調することではありません。
人を傷つけず、自分も傷つかない、回りも自分もハッピーでいられ、しかも自分の主張や目的を達成する生き方のことです。と前置きがある。

気合を入れて読んだ見出しでは

たたかいのあとに残るもの
「たたかうのをやめた」理由
たたかう強さとたたかわない強さ
たたかわない強さを支えるもの
あなたの笑顔で変えられること
自分との上手な付き合い方
自分らしさを探すには
自分らしさを出す前に
これは不向きかなと思ったとき
角度を変えてもう一度
ライバルをつくらないために
ライバルと共存するには
否定的な言葉を使わずに済ます方法
譲れること譲れないこと
やりたいことを通すために
「一生懸命」の罠
啖呵はきりかたしだい
迷ったときは現点に立ち返る
黒か白かきめつけないこと
「ハリネズミの関係」がベスト
年齢に関係なく仲良くなるには
「相手に合わせる」の落とし穴
たまには変化球を

結びに
「ひがまない、妬まない、不要な競争は避ける」

無理なときは逃げろと書いてある。私は徐々に遠ざかる作戦で来た。

今まで自分はどうなのか、何をしなくてはいけないのか、何が楽しいのかと内向きにばかり気を取られて、幸い人と競争することには気がつかなかった、気がつくとななんだか息苦しいと思うときはに他人のライバル意識と言うものがあった。どうライバルになるの?

あれは、それだったのか「恐ろしや」「ありがたや」と気がつく。

これからは「目立たぬように」「騒がぬように」♪
やりたいこと、楽しいことからやってもいいのだ、
と力を得たp(*゜▽゜*)q

 

 

 

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「花の下にて春死なむ」北森鴻 講談社文庫 2001年

2012-09-04 | 読書

 

 


日本推理作家協会賞 連作短編部門受賞作

「花の下にて春死なむ」

俳句仲間の片岡草魚がなくなった。身寄りがないことがわかり、グループで葬儀は済ませた。が、菩提寺に葬ろうとした時、彼には本籍地もないことがわかる。

一度だけ部屋に呼んだことがある飯島七緒は、俳句や日記を手がかりに、草魚の故郷を探しに出かける。

孤独な部屋で草魚が亡くなったときに咲いていた一輪挿しの桜を「奇跡の花」と呼んで、まだ雪が残っている長い冬だったが、ときならず開いたことを伝えた新聞記事。これにまつわる話も挿入されている。
受賞作にたがわないとても密度の濃い短編。

「家族写真」

駅に設置されている貸し借り自由な本棚の、人気がありそうな時代小説それぞれに、家族写真がはさんであったそうで、ちょっとした町のこぼれ話風のコラムに載っていたという。

行きつけの三軒茶屋駅近くの「香菜里屋」は落ち着いた雰囲気とおいしい料理、マスターが出すぎず控えすぎず、必要な場面では推理が冴えていて結論の方向を指す。
たまたま店に来た客の話で、この写真を手がかりに過去も含めた客の物語が解決する。

「終いの棲み家」

多摩川河畔の写真を撮っていたカメラマンが、草の中に老夫婦の小屋を見つける。彼らは世間から離れたこの小屋でひっそりと暮らしていた。この夫婦を組み写真にしてカメラマンが開いた個展のポスターがことごとく盗まれた。

親しくなった奥さんからもらった「芥子漬け」が手がかりになって事件は解決する、心温まるいい話で、中に出てくるモトクロスグループのヘッドが、一味利いている。

「殺人者の赤い手」
子供たちに流行っている、赤い手の怪人の話にまつわる事件の解決まで、さまざまな人物が面白い役目で登場する、なるほどと納得の一編。

「七皿は多すぎる」

仲間の東山が、回転寿司屋で鮪ばかり7皿食べる男の話をする。
結論は出ないままに、クイズ風に解くもの、暗号からとくものなど意見は展開する

「魚の交わり」

1話につながる話。
後日談だが、これが解決編で、納得できる結末になっている。



どれも気の利いた挿話や謎解きガメインだが、人の交わりが簡潔で情緒もあり、「香菜里屋」のマスターもいい。
山頭火を参考にしたと言う自由律の俳句が面白い。
北森さんの作品を読んだのはこれだけなのでまた機会があればほかのものも読んでみたい。

★ 5

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