空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

ケイトウ

2007-11-02 | 山野草



山の中の家には7人の子供がいた
両親と力を合わせて川に橋を架けた
二本の杉の丸太を渡し、細い横木を敷いて上に土を被せた

庭でケイトウが真っ赤に燃えていた

狭い平地に泥を固めて田んぼを作り稲を植えた
山の麓には陸稲を植えた
やせた土地には蕎麦を蒔いた
作物を金に換え小さな山を買った
三椏を植えて皮を剥ぎ冬は川に晒して売った
雑木で炭を焼き、切り出して馬で曳いていった

手はあれ足はひび割れたが
少しずつ田も増え山も増え笑い声も増えていった

そしてある日一人ずつ戦争に出て行った
二人になった子供は両親と働いていた

戦争が終わっても一人は帰ってこなかった
6人の子供はそれぞれが山の道を手を振りながら出て行った
都会の学校へ、遠い外国へ、新しい大地へ
そして残った両親は開いた田を売り山には木を植えた

子供が尋ねた日は両親の眠る林の蔭に
燃えるケイトウに代わって小さな野菊が揺れていた
田は山に還り、山は山に還り
7人の子供とその親の歴史も埋もれた





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千日紅

2007-11-01 | 山野草



もう日が暮れる 秋の短い日

たった千日の中の一日が暮れる

一日だけの花に比べればこの一生は長いのだから

小さな種を残しただけで
千日も風を受け日差しを浴びてきたことを
今日は喜んでいたい






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