連城さんの名作「戻り川心中」が何かの全集に入っていたのを読んで名作だと思った。その後大衆文学、恋愛小説のジャンルで見かけるようになったので遠ざかっていたが、「幻の名作ベストテン」という名前で復刊され、そこに旧作の短編ミステリが9編が収められていた。
それぞれが、見事なトリックとどんでん返し、二重三重に縺れたストーリー、どれを読んでもこの短い枚数の中に納まっていた。
二つの顔
妻の契子を殺して埋め終わったとき、警察からの電話で、ホテルで妻が死んでいるという、奇妙なアリバイが出来た男の驚愕。
過去からの声
退職した警官が一年後に語る、誘拐事件の真相。
化石の鍵
進入してきた男に、下半身麻痺の少女が襲われた、取り替えたばかりの鍵がなぜ開いたのか。管理人の鍵では開かなかった鍵のからくり。
奇妙な依頼
興信所に勤める俺は夫から妻の調査を依頼された、だが尾行しているうちに妻に気づかれてしまった。ついに夫の意図にも気がついた。
夜よ鼠たちのために
孤児院にいた俺は、寂しさの余りこっそり鼠を飼っていた。信子と言う名前までつけていた。朝行って見ると針金で無残に絞め殺されていた。やったのはダボだ。俺はダボにナイフで切りかかり、右腕にL字型の傷をつけた。半年間、病院に入り矯正教育で二人は変わった。
俺は結婚した妻をそっと信子と呼んだ、だかあっという間に信子が白血病で死んだ。俺は白血病の権威だという主治医を殺すことにした。めぐり会ったダボも一緒に。
二重生活
水商売に出ている牧子とマンションに住んでいる修平は、荻窪に屋敷を持っている上に都内にも不動産があった。屋敷には彫金が趣味の静子が居る。二人の女にはそれぞれ修平が知らない愛人がいた。女たちは修平を殺す事にした、その男たちもそれぞれ協力した。二組の男女は実行に移したが。
代役
紹介された男はアメリカからやってきた、実に全く俺と瓜二つだった。俺は妻と別れたかった。そこで男を利用した。男は妻と愛人に近づいたが、女たちは違いがわからなかった。俺は考えた、男は金さえ払えば後腐れなくアメリカに帰るだろう。
ベイ・シティに死す
当時恭子という女と暮らしていた、弟分の征二も二人の生活に溶け込んでいた。だが縄張り争いで相手の組員を撃ってしまった。二発の弾丸のうち俺が撃ったのは確かに外れていた。だが一発は心臓に命中していた。裁判で恭子と征二は俺が犯人だと証言した。俺は無実の主張を断念した。刑務所から出たとき復讐を誓った。二人を捜し当てて呼び出し征二を撃ったが、後で真実を知った。
開かれた闇
暴走族は、仲間の叔父が持っている夏の別送に来た、そこで一人が殺された。高校の音楽教師である麻沙に別荘から悲鳴に似た声の電話がきた。麻沙はマザーと呼ばれてこの5人組に慕われていた。彼女は仲間の行動を聞き出し、現場を調べ、名探偵振りを発揮する。
だまされた! 謎解きは面白かった! 短編なのに本格の凄さを見た。三十年以上も前の作品だが古さを感じなかった。