ブラームス:ピアノソナタ第3番
2つのラプソディー第2番
ピアノ:ブルーノ・レオナルド・ゲルバー
LP:東芝EMI EAC‐70043
ブルーノ・レオナルド・ゲルバー(1941年生まれ)は、父親がオーストリア人で、21歳の時にアルゼンチンに来て、そのまま居ついたという。一方、母親の方はイタリアとフランスの混血という血筋。15歳でパリに留学し、マルグリット・ロンに入門し、ロン最後の弟子となる。「ロン=ティボー国際コンクール」では第3位に入賞したが、彼こそ優勝にふさわしいと物議を醸したほどの実力の持ち主。ベートーヴェンやブラームスの演奏を得意とし、フランスの音楽雑誌のディアパソン誌により「今世紀最も偉大な100人のピアニスト」の一人に選らばれていることからもこのことが裏付けられよう。1968年以来、度々来日公演を行ってきているので、日本でも御馴染みのピアニストの一人と言っても過言無かろう。2011年には“70歳記念ツアー”を日本全国11か所で開催した。ゲルバーのレコーディングはすべて世界的に高い評価を得ており、「ACCディスク大賞」を2回と「ADFディスク大賞」を受賞している。デンオンに録音したベートーヴェンのソナタのうち、最初のものは、ニューヨーク・タイムズ紙の1989年最優秀録音のひとつに選ばれている。そのブルーノ・レオナルド・ゲルバーが若き日に録音したのがこのLPレコードである。ブラームスのピアノ・ソナタ第3番は、作曲者が20歳の時に完成した全部で5つの楽章からなる曲。第2楽章と第4楽章は1853年の春ごろ、第1楽章、第3楽章、第5楽章はその年の秋に作曲された。公の場での初演は、何故か完成後10年後のこととなるが、ブラームス自身によって行われた。ただ、第2楽章と第3楽章だけは、この作品が完成した翌年にクララ・シューマンによってライプツィヒのゲヴァントハウスにおいて初演されている。全体に若々しく、激しい気概に溢れた曲で、晩年特有の渋みはまだ感じさせない特徴を持ち、ブラームスの初期を代表する作品。一方、2つのラプソディー第2番は、ブラームス36歳の時のピアノ曲で、内容の充実した作品であり、ブラームス特有の晦渋さを内に秘めている。ここでのラプソディーとは、一般に使われるのとは少々異なり、形式にとらわれずに内面的なものを自由に吐露することを指すようだ。このような対照的な2つの曲をゲルバーは、いずれも包容力のある大らかな感覚で演奏しており、時折見せる詩的な感情表現を含めて、全体にリスナーにとって聴きやすいブラームス作品に仕上がっているのはさすがだ。ゲルバーはこの時、既に大家としての顔を覗かせている。(LPC)
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