モーツァルト:交響曲第31番「パリ」K.297
バレエ音楽「レ・プティ・リアン―序曲と13舞曲」K.追加Ⅰ‐10
指揮:フェルナン・ウーブラドゥ
管弦楽:フェルナン・ウーブラドゥ室内管弦楽団
録音:1955年10月~11月
LP:東芝EMI EAC‐30126
これは、「パリのモーツァルト」と題されたシリーズのVOL.7に当たるLPレコード。モーツァルトは、1774年~1778年の、いわいるザルツブルグ時代の4年間には、交響曲を作曲しなかった。この4年間の沈黙の後、新しい創作期の口火を切って、1778年に書かれたのが、「パリ」と名付けられた、この交響曲第31番である。コンセール・スピリチュエルのル・グロの依頼で、1778年5月から6月の間にパリで作曲された。このためこの交響曲は、後に「パリ」という愛称で呼ばれるようになったのである。コンセール・スピリチュエルは、宗教的な声楽曲の演奏を目的に設立されたが、その後は次第に、世俗的なオーケストラ作品も取り上げるようになり、中でも、交響曲と協奏曲の分野に力を注いでいた。パリでテノール歌手として活躍していたル・グロ(1730年―1793年)が、1777年にコンセール・スピリチュエルの指導者として迎え入れられた翌年の1778年3月23日に、モーツァルトはパリに到着する。そこで、ル・グロは、6月18日の聖体の祭日(聖体祭)のコンサートのための新作をモーツァルトに依頼し、モーツァルトは6月12日にこれを完成させた。初演は、予定通り、6月18日のコンサートにおいて、ル・グロの指揮で演奏された。このLPレコードで指揮をしているフェルナン・ウーブラドゥ(1903年―1986年)は、フランスのファゴット奏者兼指揮者。パリ音楽院で学び、パリ音楽院管弦楽団およびパリ・オペラ座管弦楽団の首席ファゴット奏者として活躍。1939年には自ら、フェルナン・ウーブラドゥ室内管弦楽団を結成した。1941年からはパリ音楽院の室内楽科教授として、ジャック・ランスロやピエール・ピエルロらを育成したことでも知られる。このLPレコードでのウーブラドゥの指揮は、明快極まりないもので、若き日のモーツァルトを髣髴とさせるはつらつとした演奏に終始する。この交響曲の持つ華やかで、如何にも聖体祭を祝福するムードを存分に盛り上げるに相応しい演奏内容となっている。次に、モーツァルトは、パリでオペラ座のメートル・ド・バレエ(バレエ・マスター)に就任したノヴェール(1727年―1810年)に会い、バレエ音楽の作曲の依頼を受ける。そして完成したのが、序曲と13の舞曲からなるバレエ音楽「レ・プティ・リアン(些細なものという意味)」である。ここでのウーブラドゥの指揮は、あたかも目前でパリ・オペラ座の踊り子が、バレエを踊っているかのような、華やかで快活な雰囲気に終始する。パリの演奏家たちの、本場もののなせる技が光る。(LPC)
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