★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ニカノール・サバレタの ”ハープ・リサイタル”

2022-03-24 09:43:52 | 器楽曲


バッハ:ハープのための組曲BWV1006a(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番による)
ヘンデル:主題と変奏ト短調
コレルリ:ソナタニ短調
シュポーア:ハープのための変奏曲
フォーレ:塔の内の王妃
アルベニス:ソナタニ長調
     :マラゲーニア(組曲「エスパニア」から)

ハープ:ニカノール・サバレタ

録音:1963年10月28~29日、ハノーファー、ベートーヴェン・ザール

LP:ポリドール(グラモフォンレコード) MGW 5199

 ニカノール・サバレタ(1907年―1993年)は、スペイン出身の偉大なハーピスト。当時は、ハープといえば”サバレタの前にサバレタなし、サバレタの後にサバレタなし”といった感じで、絶大な人気を誇っていた。自分で考案した8つのペダルを持つハープを用いての鮮やかな演奏は、当時の聴衆を完全に魅了したようだが、このことはこのLPレコードでもはっきりと聴き取ることができる。例えば、第1曲目のバッハ:ハープのための組曲BWV1006aを聴いてみると、原曲のヴァイオリンのための作品とは雰囲気がらりと変わり、ハープ特有の柔らかさが前面に打ち出され、新しい曲を聴いているような気分にさせられる。サバレタは、ミヨー、クシェネック、タイユフェール、ヴィラ=ロボスなど著名な作曲家から数多くの作品を献呈されているほか、自ら作曲や編曲を行った。さらに、埋もれていた作品の発掘も熱心に行い、この結果、サバレタは当時、ハープのレパートリーを広げることでも大いに貢献したのだ。このLPレコードでは、サバレタの豊かなその音楽性を存分に味わうことができる。サバレタのハープの奏でる、あたかも天国で弾いているようなその音色を一度でも聴いたら、二度と忘れられなくなる。それほど、サバレタのハープ演奏は、曲の核心をしっかりと掴み、その曲が持つ豊かな音楽の世界をリスナーに存分に伝えてくれる。ハープは、朝聴いても、昼聴いても、さらに夜聴いても、その時々の別な表情を見せてくれる、地味な存在ながら他に変えがたい愛すべき楽器ではある、と思う。ニカノール・サバレタは、スペイン北部のバスク地方のサン・セヴァスティアンで生まれた。マドリード音楽院で学んだ後、パリ音楽院に進む。1925年にパリのサル・エラールでデビューを果たし、たちまちのうちに評判となる。そして、ヨーロッパ各地でリサイタルおよびオーケストラとの共演を行う。1934年からはアメリカを中心とした演奏活動を展開して人気を集める。第二次世界大戦後は、ヨーロッパを中心として世界中で演奏活動を行い、“世界最高のハープ奏者”としてその名が世界に知られるようになる。フランスの伝統的で華麗な奏法を身に着けた上で、自ら考案した8つのペダルを持つハープを駆使して、鮮やかなテクニックと多彩な表現で聴衆を魅了した。スペインに居を定め、欧州各地に演奏旅行に出かけ、1959年から1962年までシエナのキジアーナ音楽院でハープ科を担当した。また、自ら作曲を行ったほかに、編曲や当時埋もれていた作品の発掘にも熱心に取り組んだ。(LPC)


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