ヨハン・シュトラウス:美しき青きドナウ
ウィーンの森の物語
皇帝円舞曲
ウィーンかたぎ
喜歌劇「ジプシー男爵」
喜歌劇「こうもり」序曲
指揮:ブルーノ・ワルター
管弦楽:コロンビア交響楽団
録音:1956年3月22日~23日
発売:1979年
LP:CBS・ソニー 15AC674
このLPレコードノライナーノートに宇野功芳氏(1930年―2016年)は「・・・当時、評論家として世に出てからまだ日の浅かったぼくは早速この新盤を買いに行き、豪華な舞踏会の情景を描いたジャケットを大切に抱えて電車に乗ったのを思い出す。・・・」と書いている。昔は、現在のような消費社会の日本では考えられないくらいLPレコードは貴重な個人の財産で、LPレコード店からお目当てのLPレコードを買って家に持ち帰ったときの幸福感は、他に例えようもないものだった。そしてLPレコードの楽しみの一つは、ジャケットが大きいために、表紙の写真や絵を心置きなく鑑賞できることであった。それが現在では、小さなサイズのCDあるいはダウンロードにとって代わってしまって、そんなささやかな楽しみも無くなってしまった。今回のLPレコードは、巨匠ブルーノ・ワルター(1876年―1962年)が自分の録音のために臨時に編成されたコロンビア交響楽団を指揮したヨハン・シュトラウスの名品集である。ワルターは温厚な人柄とその大らかな演奏スタイルから、何か幸福な人生を歩んだと思われがちだが、指揮者としてウィーン時代からニューヨーク時代の録音を聴くと、何か痛ましい感じがするほどの激変を乗り越えざるを得なかった音楽人生であった。さらに私生活でも不幸に見舞われている。ワルターは、ウィーン国立歌劇場楽長・音楽監督、バイエルン国立歌劇場音楽総監督、ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団楽長、ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督、ベルリン・ドイツ・オペラ音楽監督などを歴任したが、そんなワルターが最後に行き着いた安住の地が、米国でのコロンビア交響楽団との録音である。そしてこのLPレコードでは、自身の音楽人生のスタートとなったウィーンの音楽を指揮している。ここでの演奏は、ウィーン情緒を前面に出すというより、オーケストラの演奏効果を最大限に発揮させた力強い内容になっている。なので、ウィーン情緒を求めてこのLPレコードを聴くと肩透かしを食らうことになる。ワルターは、心不全のため米国カリフォルニア州ビバリーヒルズの自宅で亡くなったが、このヨハン・シュトラウスの録音は、アメリカという新天地を強く意識して、敢えてウィーン情緒を盛り込まかった結果ではなかろうかと私は考えている。ワルターは一度も来日することなくこの世を去ってしまったが、その昔、日本人のリスナーは皆と言っていいほど、ワルターが遺した録音を聴くのが大好きであった。(LPC)
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