モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番/第7番
ヴァイオリン:ダヴィッド・オイストラフ
指揮:ルドルフ・バルシャイ(第3番)
キリル・コンドラシン(第7番)
管弦楽:モスクワ室内管弦楽団(第3番)
モスクワ放送交響楽団(第7番)
発売:1974年
LP:ビクター音楽産業 MK‐1060
モーツァルトは、生涯に8曲のヴァイオリン協奏曲を作曲している。そのうちこのLPレコードには、第3番と第7番の2曲が収められている。ヴァイオリン演奏は、旧ソ連最大のヴァイオリニストであるダヴィッド・オイストラフ(1908年―1974年)、指揮者は、これも旧ソ連を代表する名指揮者であるルドルフ・バルシャイ(1924年―2010年)およびキリル・コンドラシン(1914年―1981年)である。もうこれだけの役者が揃えば名録音は間違いない、と思って聴くと予想通り、愛らしくも、機知に富んだモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の名品が、極上の演奏となって耳に飛び込んでくる。“ザルツブルグ協奏曲”と呼ばれる第1番から第5番のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、1775年4月から12月と短期間に作曲されている。第3番は、如何にもモーツァルトらしい作風である、軽快さ、明るさ、優美さとが織り交ぜられており、美しいメロディーが曲全体に散りばめられ、ヴァイオリンの魅力が余す所なく発揮される。一方、第7番は、第6番とともに自筆原稿が失われているものの、第7番は、草稿の写しが残されており、それには1777年7月16日に作曲されたことが記されている。しかし、ソロ・パートの重音技法や管弦楽法、各楽章の形式など、当時のモーツァルトの様式にそぐわない点が指摘されるなど、現在ではモーツァルト作ではないか、少なくとも他人による加筆があることは間違いない作品とされている。この第7番以後、モーツァルトは、ヴァイオリン協奏曲を作曲していない。今考えると不思議と言えば不思議なことではあるが、当時、ヴァイオリン協奏曲の位置づけは現在考えるほど高いものではなく、このためモーツァルトはヴァイオリン協奏曲に拘らなかったようだ。第7番の完成は、“ザルツブルグ協奏曲”から2年しか経ってないが、内容は一層充実感が増しているように聴こえる。“ザルツブルグ協奏曲”が貴族的な優美さに徹した内容とするなら、第7番は偽作の疑いがある曲とは言いながら、より自由な新しい音楽空間を探り当てたような爽快感を聴いていて感じ取ることができる。曲としてのスケールも一回り大きくなったように感じられる。ダヴィッド・オイストラフは、この2曲を集中力の限りを尽くして弾いている。メリハリの利いたダイナミックな演奏を聴き終えた後は、清々しさだけが残り、改めて名人芸の凄さを感じさせられる演奏となっている。(LPC)
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