★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルのベートーヴェン:交響曲第1番/第4番

2021-12-13 09:57:07 | 交響曲(ベートーヴェン)


ベートーヴェン:交響曲第1番
        交響曲第4番

指揮:ウィルヘルム・フルトヴェングラー

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1952年11月24日&27~28日(交響曲第1番)
   1952年12月1~2日(交響曲第4番)

LP:東芝EMI WF‐60001

 このLPレコードは、不世出の大指揮者であったウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886年―1954年)が、ベートーヴェンの2つの交響曲を録音したもの。交響曲第1番は、1800年の初頭に完成したが、その時ベートーヴェン29歳であった。初演はベートーヴェン自身の指揮で、同年4月2日にウィーンのブルク劇場で行われた。一方、交響曲第4番は、1806年に短期間のうちに書き上げられたと考えられている。この年にベートーヴェンは、後に破談となるテレーゼと婚約しており、幸福感に満たされていた。このため第4交響曲は明るく清々しい気分に全体が覆われている。第3番「英雄」と第5番「運命」の間に挟まれた交響曲として、シューマンは「北欧神話の二人の巨人に挟まれたギリシャの乙女」と評した。フルトヴェングラーは、1886年にベルリンで生まれたが、指揮者としてのデビューは1906年。1922年にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団およびベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任する。さらに、1927年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任し、当時の指揮者として世界の頂点に立つことになる。しかし、第二次世界大戦後に、戦時中のナチ協力を疑われ、演奏禁止処分を受ける。1947年、裁判で無罪判決を受け、楽壇に復帰する。そして、ベルリン・フィルの終身指揮者に就任するなど、戦前の勢いを取り戻すかのような名演を聴かせた。フルトヴェングラーのベートーヴェンの交響曲の指揮は、何か宿命的な出会いを思わせる。ベートーヴェンは、その生涯を通して人間の自由と真の解放を願って作曲したという、それまでの作曲家には見られない類稀な作曲家であった。このようなベートーヴェンの作品を指揮するフルトヴェングラーの指揮ぶりはというと、曲の本質を的確に探り出し、それを情感激しく聴衆にぶつけ、その曲が持つ真価をオーケストラに最大限に発揮させる。つまり、この両者が出遭った時は、1+1が2ではなしに3や4にでもなるような相乗効果をもたらすのである。このLPレコードの交響曲第1番の出だしを聴いただけで、他の指揮者とは異なる、異様な高まりを聴き取ることができる。このLPレコードでのフルトヴェングラーは、第1番ではあくまで若々しく、力強く、しかも軽快な指揮をする一方、第4番の方はというと、後期の交響曲を連想させるようなスケールの大きい、深遠な表現が特に印象に残る。いずれも、この二つの交響曲を代表する録音として、記念碑的意味合いを持つを持つLPレコードといえる。(LPC)

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