ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/夜想曲(雲/祭り)
ラヴェル:スペイン狂詩曲/なき王女のためのパヴァーヌ
指揮:ピエール・モントゥー
管弦楽:ロンドン交響楽団
発売:1980年
LP:キングレコード K15C 8041
ピエール・モントゥー(1875年―1964年)は、フランス、パリ出身の名指揮者。パリ音楽院卒業後、1906年にコロンヌ管弦楽団を指揮しデビューを飾る。ストラヴィンスキーの「春の祭典」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」など、20世紀の名作バレエ音楽の初演を手がけたことでも知られる。1929年にはパリ交響楽団の創立時の常任指揮者を務める。1935年からはサンフランシスコ交響楽団の常任となり、黄金時代を築く。1961年にはロンドン交響楽団の首席指揮者となり(この時実に88歳)、亡くなるまでその地位にあった。静寂さと透明性を堅持しつつ、自然と沸き立つようなロマンの香りが馥郁とするその演奏は、多くのファンの心を掴んで離さなかった。このLPレコードは、ロンドン交響楽団の常任として入れた最初の録音で、しかも、「牧神の午後への前奏曲」と「スペイン狂詩曲」の録音は、意外にもこれが最初という。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は、ドビュッシー30歳の時の作品で、これによりドビュッシーは一躍脚光を浴びることになる。この曲はマラルメの詩「牧神の午後」に付けた管弦楽曲であり、楽器の音色の変化を微妙に描き分け、幻想的な世界を表現することに成功している。ドビュッシーの「夜想曲」は、1899年に作曲された曲。第1曲「雲」、第2曲「祭り」、第3曲「海の精(女声合唱付き)」の3曲からなるが、ここでは第3曲は省かれている。この曲で、ドビュッシーは、印象主義による音楽を、完成域まで高めることに成功した。ラヴェルの「スペイン狂詩曲」は、ラヴェルの最初の管弦楽曲で、1907年32歳の時に作曲された。全体は、「夜への前奏曲」「マラゲーニア」「ハバネラ」「市場」の4つの部分からなり、豊穣なオーケストレーションが印象的で、生き生きとしたリズムと色彩感が溢れた音が見事に調和して、リスナーを飽きさせることはない。ラヴェルの「なき王女のためのパヴァーヌ」は、ラヴェルがパリ音楽院の作曲科で、フォーレに学んでいた時に作曲したピアノ曲「なき王女のためのパヴァーヌ」を、1910年に作曲者自身で管弦楽用に編曲した作品。3部形式で書かれており、パヴァーヌ舞曲は、弦のピチカートを伴奏にして、哀愁を含んだホルンの主題が印象的な曲。このLPレコードでのモントゥーは、曲の隅々まで目の行き届いた指揮ぶりを見せ、静かな中にも曲の生き生きとした表情を巧みに描き切っている。正にフランスきっての名指揮者の面目躍如といったところだ。(LPC)