★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ミュンシュ指揮ボストン交響楽団のチャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」/弦楽セレナード

2020-11-05 09:42:13 | 管弦楽曲

チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」
         弦楽セレナード

指揮:シャルル・ミュンシュ

管弦楽:ボストン交響楽団

発売:1974年

LP:ビクター音楽産業(RCA) RGC‐1148

 フランスの名指揮者のシャルル・ミュンシュ(1891年ー1968年)は、ドイツで生まれ、のちにフランスに帰化する。ゲヴァントハウス管弦楽団でコンサートマスターを務めた後、1929年にパリで指揮者としてデビュー。以後、就任したオーケストラを挙げると次の通りとなる。パリ音楽院管弦楽団首席指揮者(1937年―1946年) 、コンセール・コロンヌ首席指揮者(1956年―1958年)、フランス国立管弦楽団音楽監督(1962年―1968年) 、ボストン交響楽団常任指揮者・音楽監督(1949年―1962年)、パリ管弦楽団首席指揮者(1967年―1968年) 。ミュンシュは、フランスとドイツの両方の国からの影響を受け育ったことから、典型的なフランス系指揮者とは少々異なり、よりインターナショナルな感覚の音楽表現を行い、これが多くのファンの心を掴んだと言えそうである。今回のLPレコードには、ボストン交響楽団とのコンビで、チャイコフスキーの幻想序曲「ロミオとジュリエット」と弦楽セレナードが収められている。チャイコフスキーの音楽というと、ロシアの風土に根差した、ある意味泥臭い演奏が多いが、ここでのシャルル・ミュンシュとボストン交響楽団のコンビの演奏は、ロシアの音楽ということをあまり意識せず、インターナショナルな感覚で演奏されており、その分、素直に音楽に入っていくことができる。特に、幻想序曲「ロミオとジュリエット」の情熱的な演奏が光る。ミュンシュが全力を挙げてオーケストラの持てる力を発揮させようとする意気込みが、このLPレコードを介してリスナーにひしひしと伝わってくる。ボストン交響楽団もそんなミュンシュの期待に応えるかのように、見事な演奏を披露する。もともとボストン交響楽団は、弦と管のバランス感覚が抜群に良いオーケストラなのであるが、ここでの演奏は、そういった特徴を最大限に発揮させ、見事な効果を挙げている。スケールを大きくとって、ダイナミックな表現に徹するその演奏を聴くと、ボストン交響楽団が世界の一流オーケストラとして君臨してきたことが手に取るように分かる。これは、チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」が、独立したオーケストラ作品として魅力満々の作品であることを証明した録音とでも言えよう。これに対して、B面のチャイコフスキー:弦楽セレナードの演奏は、少々常識的な演奏に収まってしまった感がないでもない。エネルギーの発散のどころがいまいち明確でないように思われる。とは言いながら、都会的、現代的なセンスを備わった演奏として、完成度が高い録音であることも事実だ。(LPC)

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