★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヴァイオリンの名手ヘンリック・シェリングのヴァイオリン・リサイタル

2020-02-17 09:44:48 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

~シェリング・ヴァイオリン・リサイタル~

ルクレール:ソナタニ長調
グルック:メロディー
ヴィタリ:シャコンヌ
ロカテルリ:ラビリンス
バルトーク:ルーマニア民族舞曲
ドビュッシー:レントより遅く
ノヴァチェック:常動曲
ブラームス:ハンガリー舞曲第17番
マロキン:メキシコの子守歌
リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行

ヴァイオリン:ヘンリック・シェリング

ピアノ:チャールズ・ライナー

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(PHILIPS) PC‐1518(SR‐90367)
 
 このLPレコードは、“シェリング・ヴァイオリン・リサイタル”と題されたヘンリク・シェリング(1919年―1988年)のヴァイオリン独奏によるアルバムである。ヘンリク・シェリングは、ポーランドの首都ワルシャワで生まれ、同国の世界的ヴァイオリンの大家フーベルマン()1882年―1947年)に見い出され、ベルリンに留学。さらにファランスに渡りフランス音楽をマスターした。これにより、シェリングは、スラヴ系、ドイツ系、さらにはフランス系を一体化した奏法を完成させ、真に国際的感覚を備えたヴァイオリニストであった。1933年にソリストとしてデビュー。第二次世界大戦中は、連合国軍のために慰問活動を行ったが、メキシコシティにおける慰問演奏を行った際に、同地の大学で教職を得ると同時に、1946年にはメキシコ市民権も得た。そして暫くは教育活動に専念したが、1954年、ニューヨークにおけるデビュー演奏が高い評価を得て、それ以後、活発な国際的な演奏活動を展開した。このLPレコードのライナーノートで藁科雅美氏が「ヘンリック・シェリングはヴァイオリンの大家で、現在この人と比べられる名手は、アメリカのアイザック・スターン、チェコのヨゼフ・スーク、ベルギーのアルテュール・グリュミオーぐらいなものです」と書いているように、当時の人気は絶大なものがあった。このLPレコードでは、シェリングは10曲の小品を録音している。ただ、A面の最初の曲、ルクレール:ソナタニ長調だけは小品というにはもったいない本格的ヴァイオリンソナタである。ルクレール(1697年―1764年)は、後期バロックのフランスのヴァイオリニスト兼作曲家。最初は舞踏家としてデビューし、最後は暗殺されるという数奇な人生を送った。作曲家としては、フランスのヴァイオリン音楽に多大な影響を与えたソナタや協奏曲を残している。このニ長調のソナタは、全12曲からなる「通奏低音つき独奏ヴァイオリンのためのソナタ・第4集」(作品9)の中の第3曲で、4つの楽章からなり、終楽章の「タンブーラン」は、しばしばそれだけでも単独で演奏されることがある。このLPレコードでのシェリングの演奏は、実に丁寧に1曲、1曲を愛情をもって弾いていることが、リスナーにひしひしと伝わってくる。シェリングのヴァイオリン演奏の偉大さは、単にスラヴ系、ドイツ系、フランス系という枠を越えて、真摯な態度で真の音楽の追究に身を捧げたことにると思う。これは、そんなシェリングの演奏のエッセンスが、ふんだんに込められたLPレコードなのである。(LPC)

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