ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1953年版)
指揮:オットー・クレンペラー
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団
発売:1956年
LP:東芝音楽工業 AA‐7270
ブルックナーは、全部で11曲の交響曲を書いているが、通常は第1番から、未完成に終わった第9番までの9曲が演奏される。これら9曲の交響曲の中で、ブルックナー自身によりニックネームが付けられた曲が、この第4番の「ロマンティック」なのである。ブルックナーの交響曲は、いずれも重厚感たっぷりで、重々しく長大な曲ばかりであり、そう気軽に聴くことは出来そうもない曲ばかりである。その理由は、ブルックナーが敬虔なカトリック信者であることと切り離しては考えられない。教会音楽、なかんずくオルガンに対するブルックナーの思い入れは強いものがあり、ブルックナーの交響曲の根幹を成すものとなっている。それに加え、ドイツ・オーストラリア系音楽の王道を歩むような堅牢な音楽であり、堂々とした聖堂を仰ぎ見るような迫力に、聴く者は圧倒されてしまう。そんな中にあって、この第4番は、比較的穏やかな表情を持った交響曲として人気が高い。まるで、ドイツの深い森の中に迷い込んだような感じがして、ある意味の爽快感を感じられるところが、人気の源かもしれない。それに、他の交響曲に比べて宗教的な傾倒が少々薄められているようでもあり、気軽に聴けるところがいいのだろう。しかし、そこはブルックナーの交響曲であり、いくら気軽に聴けるといっても、全4楽章を聴き通すと、ほぼ1時間を要する曲であり、通常の交響曲と比べたら、長大で手ごわい曲であることには違いない。このLPレコードで「ロマンティック」交響曲を指揮しているのがドイツ出身の20世紀を代表する巨匠指揮者オットー・クレンペラー(1885年―1973年)である。22歳でマーラーの推挙を受け、プラハのドイツ歌劇場の指揮者になるが、48歳の時(1933年)、ナチス・ドイツ政権樹立に伴い、アメリカへ亡命。そこで、ロサンジェルス・フィルハーモニックやピッツバーグ交響楽団の指揮者として活躍する。しかし、1939年に脳腫瘍に倒れる。復帰後、1954年(69歳)からフィルハーモニア管弦楽団とレコーディングを開始し、EMIから多くのレコードをリリース。このLPレコードは、手兵のフィルハーモニア管弦楽団を指揮した中の1枚。クレンペラーの指揮は、悠然としたテンポの中に、曲の隅々にまで強い緊張感を漂わせたもので、フィルハーモニア管弦楽団の響きも深々としており、ブルックナーの交響曲に相応しい雰囲気を醸し出すことに成功している。(LPC)