嫌な女

2015-11-25 18:09:07 | IGUちゃんとのこと
大阪で、IGUちゃんといろいろな話をした。
彼女の妊娠については、何も話さなかった。
だから、私は今もそのときに彼女が本当に妊娠していたのかどうか知らない。

そのときに、IGUちゃんはある話をした。
一言で言うと、そのときにIGUちゃんがぶち当たっていた「挫折感」についての話だが、
それについては、また話す機会があると思う。
ただ、そのIGUちゃんの考え方は、どこか間違っていると感じたけれど、
私は敢えてそのことについて考えるのをやめようと思った。
そこで考えたら、またIGUちゃんへの想いに引きずり込まれてしまう、
そんな風に感じたからだ。

朝、私は大阪から名古屋の会社へ出勤する。

IGUちゃんはどう思っていたのか知らないが、
私は、もう本当にIGUちゃんとの関係を終わらせるつもりでいた。
「復讐してやる~!!」と思った。
でも、私の復讐とは、とてもかわいらしいもので、
一生、IGUちゃんには、私がIGUちゃんのせいで不幸になったのだと思わせるというものだった。
IGUちゃんと縁を切ったなら、もうIGUちゃんと会うことはほぼ有り得ないというのに、
そんなことできるわけない。
でも、そう思った。

私のそんな決心がわからなかったのか、IGUちゃんはすぐに電話してきた。
私は、ものすごく冷たい言葉で、心にもない言葉で、IGUちゃんに応対した。
IGUちゃんは一言、「嫌な女になったな」と言い、電話を切った。
それきりIGUちゃんから電話がかかってくることはなかった。

「嫌な女になったな」、そう言われた私は、もちろん悲しかった。
でも、それでいいと思った。
19歳の私が、IGUちゃんに言った「悪い男にならなきゃいけないときもある」という言葉。
それを思い出していた。
私は、「嫌な女」になることでしかIGUちゃんを忘れることができなかったんだと思った。
そして、IGUちゃんもそんな私の気持ちをわかってくれていると思った。



修羅場のあと

2015-11-25 17:49:10 | IGUちゃんとのこと
あの修羅場の後も、私とIGUちゃんの関係は変わることはなかった。
IGUちゃんは、何事もなかったかのように電話してきた。多分。
もしかしたら、先に電話したのは私だったのかもしれないが。

でも正直に言って、このころのことはあまりはっきり覚えてはいない。
私は、いつごろまで大阪に通っていたのか?
この年の暮には、今の夫と結納を交わしたはずだから、そんなに長い間ではなかったはずだ。

大阪で一緒にいるときに、IGUちゃんは彼女ができたと言う。
それまで、「彼女」の話をはっきりとしたことはなかった。
「いいぞ。今の彼女は。俺が『お前だけや~』と言ってれば、それを信じて何でもはいはいって言うこと聞いてくれる」
「私だって、IGUちゃんに『お前だけや~』なんて言われたら、何だって言うこと聞くわ!!」
どうしようもない私とIGUちゃんだね?

それからしばらくして、IGUちゃんが電話で言う。
何て言ったんだっけ?はっきりと何を聞かれたのか覚えていない。
「生理はどれくらい遅れるとヤバイのか?」とか、そういう意味のことだった。
要するに、彼女に生理がこなくて心配しているという話。
でも、以前にもそういうことがあって用心していたから、そんなはずはないと。

「そんなこと、私に聞いたってわかるはずないじゃない!?」
何でだろう?私はものすごく動揺して、早々に電話を切った。
多分二度目の嫉妬。

でも、今回はもうだめだと思った。
それまで何度もIGUちゃんのことを諦めよう忘れようと思ってもできなかった。
でも、今回だけはもうこの関係にケリをつけなければ、と思った。

絶望。

別に彼女の妊娠が決定したわけでも、彼女と結婚すると言ったわけでもないのに、
どうしてそんな気持ちになったのか、自分でも全くわからない。
ただ悲しくて悲しくて、その夜はほとんど眠れなかった。
どうしてだかわからないけど、ある男友達に無性に会いたくなった。
その男友達は、別に好きな相手でも何でもない。
でも、なぜか彼に会いたくなって、私は朝を待って彼を呼び出す。
都合よく彼は予定もなく一日私に付き合ってくれて、話を聞いてくれた。
彼が私のことを同情的な目で見ていたのは忘れられない。

夕方になると、今度は溜まり場の仲間に会いたくなる。
そして一人溜まり場に行く。
そこでは、IGUちゃんの話はしなかったように思うけれど、
そこで見ていた女性週刊誌に、松田聖子の妊婦姿の写真が載っていた。
聖子ちゃんのマタニティ姿を見て、ものすごく悲しくなった。
「私もIGUちゃんの子供が産みたかった」そう、その場にいた男友達にもらす。
彼は、「俺だって、俺の子を産んでほしいと思う相手に産んでもらえるわけじゃない」と。

そして、私は考えていた。
仕事を辞めてわずかでも退職金をもらって、車を売ったら、大阪で一人暮らしをする軍資金になるだろうか?
一晩たつと、そんな考えは消えて無くなっていたけれど、
一晩だけ私はそんなことを真剣に考えていた。

そしてIGUちゃんに電話をかける。
「明日、仕事が終わったらそっちへ行くから」
会社で、お姉さまに「決着つけてくる」と宣言して、私は大阪へ行った。