15年前、IGUちゃんがまだ結婚していないと聞いたとき、
ちょっとだけ、
「もう少しがんばれば、IGUちゃんと結婚できたんだろうか?」と思ったのは否めない。
でも、そんなこと考えても仕方のないことだから。
そして先日、当時の日記の封印を解いたとき、
それまでは思いもよらなかったことが、頭に浮かんできた。
私が思っていたIGUちゃんと、本当のIGUちゃんは、
全く違っていたのではないだろうか!?
私は、悲劇のヒロインになっていたのかもしれない。
風化していく記憶の中で、IGUちゃんはどんどん冷たい人になっていた。
当時から ”He is as cool as cucumber.”
なんて思っていたからねぇ…。(スペルも文法も合ってるかな?)
でも、日記の中のIGUちゃんは、
優しいところもあり、楽しくて、時には私のわがままも聞いてくれて…。
IGUちゃんは、一体私のことをどんな風に思っていたのだろう?
私が思っていたよりも、私のことを好きでいてくれたのかもしれない。
思い起こせば、真剣につき合ってくれたという最初のあの時、
IGUちゃんはこんなことを言った。(と思う)
「君のことだけが好きなんじゃない。好きな女の子はたくさんいる。
でも、今は君とつき合いたいと思う。それでもいいなら…」
これがIGUちゃんの真実なのかもしれない。
「好きな女の子はたくさんいる」
別れた後も、私はその「たくさんの好きな女の子」の一人だったんだろう。
そして、後で「遊び半分だった」と言った浪人生のときは、
「俺が京都に行ったら(彼は京大に行く予定だったので)、すぐに新しい男を探せよ」
と言ったあとで、私の手を握りしめて言ったのだという。
「でも、この1年は真剣だよ」
彼はいつもそうだった。
いつも私に「いい男を探せ」と言っていた。
私のことがちょっとだけ好きだったとしても、私との将来なんて考えられなかっただろう。
彼はまだまだ縛られたくなかった、遊んでいたかった。
だから、私が重かったのも事実だと思う。
「いつまでも待ってる」なんて絶対に言ってほしくなかっただろう。
(私、そんなこと言わなかったけどね!)
いつか結婚したくなったとき、その相手の候補の中に、もしかしたら私もいたかもしれない。
でも、そのときまで私を待たせておこうなんて、毛頭考えていなかったと思う。
それよりも、私が待っていて、そのとき自分が他の子を選んだらと、
そんなこと考えるのもいやだったんじゃないかな?
だから、私に早くあきらめさせて、ほっとしたいのも事実だったと思う。
でも、全く私のことが好きじゃなかったら?
だったら、さっさと私との関係を絶っていたと思うよね?
私は当時どう思っていたのか?
IGUちゃんは、私のことなんて、恋愛対象とはこれっぽっちも見ていないと思っていた。
ただの話していて楽しい女友達。
でも、私の方から会いに来るというのなら拒む必要もない、その程度の関係。
一度IGUちゃんに聞いたことがある。
「もう私のことを好きになってくれる可能性はないのかな?」
私は、あっさりと「ない」と言われると思っていた。
でも、「それを言ったら、あんたに悪いから」とIGUちゃんは言った。
私は、最初その言葉を、
「可能性はあるかもしれないけど、期待をもたせるわけにはいかない」というように、
自分に都合よく聞いた。
でも、後から思った。
本当は、「可能性はゼロだけど、自分のしてきたことを思えば、そんな残酷なことは言えない」
という意味だったんだと。
本当はどっちだったのかな?
私は、大阪で最後に会って以来、IGUちゃんの気持ちを考えるのをやめるように努めてきたので、
今となってはさっぱりわからないや。
でもね、もしかしたらね、IGUちゃんは心のどこかで、
「みなみなら、いつまでも待っていてくれる」と思っていたかもしれないよね?
私とのあのわけわからない関係が、心地よかったのかもしれないよね?
だから、裏切ったのは、私のほうだったのかもしれない。
挫折感に打ちのめされているときに、
彼女が妊娠したかもしれないと不安のある中で、
私は冷たい言葉を投げかけた。
そして多分、追い打ちをかけるようなことを言ったのだ。
私もIGUちゃんのことを傷つけたのかもしれない。
私は限界だった。
IGUちゃんのことが大切な自分と、自分のことがかわいい自分と、
そのギャップに苦しむのはもうたくさんだと思った。
IGUちゃんは、私が無理して嫌な女になったことをわかってくれていると思う。
その後、電話をしてこなかったのは、私への最後の思いやりだ。
もちろん、私のことを本当に嫌な女になったと思って話したくもないと思ったのかもしれない。
IGUちゃんが長いこと結婚しなかったのは、
私のことがひっかかっていたからじゃないか?なんて想像してみる。(ちょっと楽しい
)
私のように、自分のことを理解しようと思ってくれる相手に出逢えなかったから。
でも、たとえそうだったとしてもね、あそこで私とIGUちゃんの道は離れてしまった。
私は後悔していない。ぎりぎりまでがんばったもん!
結婚して、倖せになれたもん。
何よりも、子供たちがちゃんと育ったから。
別に今、IGUちゃんと話したいとか思わないけれど、
もし、もう一度話す機会があったとしたら、言ってみたいかも?
「次に産まれてくるときは、一緒に生きたい」って。
でも、多分そんな機会があったとしても、言わないと思うけどね。