「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/02/04
NHK予算委完全中継・政党討論を義務付けよ
第1961号
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NHKは重要な国会審議の模様をすべてテレビ中継するべきである。
また、国会開会中はNHK日曜討論を、最低でも隔週で各党代表者出席の政治
討論とするべきだ。
最高裁は、NHKを
「公共放送事業者としてNHKを設立し、民主的かつ多元的な基盤に基づきつ
つ自律的に運営される事業体として性格付け、これに公共の福祉のための放送
を行わせることとした」
とするが、現状ではNHKは「公共の福祉のための放送を行って」いない。
NHKは日本相撲協会に年間30億円もの中継料を支払っている。
30億円というとピンとこないが、年収300万円の職員の雇用コストに置き
換えれば、なんと1000人もの職員を雇用できる費用である。
とてつもない金額を日本相撲協会に支払っている。
このお金が何にどのように使われているのか不透明である。
また、日本相撲協会が公益財団法人になっており、税制上の優遇策が取られて
いる。
このことは、相撲協会が通常の法人であれば支払わなければならない税金が減
免されていることを意味するわけで、通常の納税を行った相撲協会に国が補助
金を支給しているのと同じことになる。
国民の負担が日本相撲協会にかかっているわけである。
大相撲中継では幕内の取組だけでなく、十両や、場合によっては幕下まで放送
が行われる。
その一方で、NHKは首相が出席して答弁する衆参両院の予算委員会審議すら
完全放送しない。
共謀罪の制定など、国民に関わる重要議案については、委員会審議の模様もテ
レビ放送を行うべきである。
予算委員会の審議を完全放送するべきことは当然だ。
この通常国会では、伊藤詩織さんが傍聴し、山口敬之氏に対する逮捕状執行が
警視庁刑事部長によって取りやめになった事実について野党議員が追及した審
議や、山本太郎参院議員が質問した委員会審議がテレビ中継されなかった。
安倍政権から安倍政権に都合の悪い部分のテレビ中継をしないように圧力がか
かっているとの憶測が生まれておかしくない状況だ。
森友学園に関する疑惑が多く噴出しており、NHKが討論番組を放送するな
ら、国会開会中は、少なくとも2週に1回は政党代表者による討論を放送する
べきである。
出席者は政党要件を満たすすべての政党の代表者とするべきだ。
昨年も国会開会中の政治討論の回数が極めて少なかった。
現在のようなNHKの運営で、国民に受信契約を強要することは基本的人権の
侵害と言わざるを得ない。
しかし、日本の裁判所には、法律を正しく解釈し、これを適用する意思と能力
が存在しない。
1959年に砂川事件で東京地方裁判所の伊達秋雄裁判長が、米軍の駐留につ
いて違憲の判断を下したことに対して、最高裁の田中耕太郎長官は当時の駐日
大使ダグラス・マッカーサー2世と密会し、「伊達判決は全くの誤り」と一審
判決破棄・差し戻しを示唆するとともに、上告審日程やこの結論方針をアメリ
カ側に漏らしていたことが明らかになっている。
検察は一審判決ののち、直ちに最高裁判所へ跳躍上告し、最高裁は同年12月
16日に原判決を破棄し地裁に差し戻した。
裁判所自体が腐敗し、機能不全に陥っている日本では、法の支配も法の正義も
通用しない。
私たちはいま、暗黒社会に身を置いているのである。
NHK放送を視聴できないテレビ機器の開発、販売が急がれる。
テレビを設置した者にNHKとの放送受信契約を強要するというのなら、NH
Kの業務内容の全面的な見直しと縮小が必要である。
NHKが芸能やドラマを取り扱う理由がない。
天変地異などの自然現象、災害、防災に関わる情報提供と国会審議の放映など
にNHK放送を特化するべきだ。
ニュース報道においては、事実関係を伝えることに限定して、NHKの論評を
排除するべきである。
論評を放送するなら、それぞれの事象について、多くの角度から論点を明らか
にすることが必要不可欠である。
2月4日は名護市長選が実施されている。
安倍政権は与党候補者の当選に総力を結集している。
この日にNHKが日曜討論で政治討論を行えば、安倍政権の暗部がクローズ
アップされてしまう。そのために、国会審議中で、多くの問題が国会でも取り
上げられ、NHKが日曜討論で、これらの諸問題を掘り下げなければならない
のに、政治討論を封印している。
このようなNHKはまさに「有害無益」の存在である。
放送法の抜本改正が喫緊の課題である。
NHKのあり方は放送法によって規定されているが、この放送法が政治権力に
よるNHK支配の元凶になっている。
内閣総理大臣が三権分立を理解し、権力の行使に対して自己抑制を働かせる、
行政権の長にふさわしい資質を備えている場合には弊害が生じないが、内閣総
理大臣がその逆である場合には、さまざまな重大問題が生じる。
とりわけ重大であるのが、裁判所とNHKに対する人事権の行使である。
裁判所裁判官の人事権について、日本国憲法は次のように定めている。
第6条 2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命
する。
第79条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の
裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命
する。
第80条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、
内閣でこれを任命する。
最高裁の長官は内閣が指名し天皇が任命する。
最高裁長官以外の最高裁裁判官は内閣が任命する。
下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命す
る。
下級裁判所裁判官人事の実質的な権限を有しているのが最高裁事務総局であ
る。
しかし、下級裁判所裁判官の人事においても最終的な権限を有しているのは内
閣であり、内閣が裁判所裁判官の人事権を握っていることになる。
内閣総理大臣が三権分立を理解し、権力の行使に対して適正な抑止力を働かせ
るならば弊害が生じないが、内閣総理大臣が裁判所裁判官の人事権を恣意的に
活用すれば、裁判所は完全に内閣によって支配されてしまう。
現実に安倍政権の下でこの弊害が顕著に表れている。
他方、放送法はNHKの幹部人事について、次の規定を置いている。
第三節 経営委員会
(委員の任命)
第三一条 委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験
と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命す
る。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他
の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。
第五節 役員及び職員
(役員)
第四九条 協会に、役員として、経営委員会の委員のほか、会長一人、副会長
一人及び理事七人以上十人以内を置く。
(理事会)
第五〇条 会長、副会長及び理事をもつて理事会を構成する。
2 理事会は、定款の定めるところにより、協会の重要業務の執行について審
議する。
第五二条 会長は、経営委員会が任命する。
2 前項の任命に当たつては、経営委員会は、委員九人以上の多数による議決
によらなければならない。
3 副会長及び理事は、経営委員会の同意を得て、会長が任命する。
NHKの最高意思決定機関は経営委員会である。
その経営委員会を構成する委員の人事権を内閣総理大臣が握っている(第三一
条)。
第三一条の条文には、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い
経験と知識を有する者のうちから」任命すること、ならびに、その選任に際し
て「教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表され
ることを考慮しなければならない」と定めている。
内閣総理大臣が、この規定を遵守すれば弊害は生じないが、この規定を無視し
て恣意的な人事権の行使を行うと弊害が生じる。
NHK会長は経営絵委員会が任命し、副会長と理事は、会長が経営委員会の同
意を得て任命する。
そして、会長、副会長及び理事によって構成され理事会が、NHKの重要業務
の執行について審議するのである。
分かりやすく整理すると、内閣総理大臣は経営委員会委員の人事権を濫用する
ことによって、NHKの会長、副会長、理事を恣意的に選任できるのであり、
この会長、副会長、理事がNHKの業務を支配できるから、結局、内閣総理大
臣がNHKを支配できてしまうのである。
議員内閣制では、議会の多数勢力が内閣総理大臣を輩出する。
内閣総理大臣は行政府の長であると同時に、立法府=国会の支配者でもあるの
が普通である。
そして、この内閣総理大臣が権力を濫用すれば、裁判所をも支配できる。
さらに、人事権を濫用することにより、NHKも支配できる。
また、民間放送の許認可権を内閣が有している。
内閣総理大臣は民間放送に対しても支配権を有してしまうことができるのであ
る。
立法、行政、司法を三権と呼び、マスメディアは第四の権力とも言われる。
内閣総理大臣が権力分立の重要性を理解し、権力の行使に対して抑制的を働か
せる人物である場合には弊害が生じないが、そうでない場合には、重大な弊害
が生じる。
現在の安倍政権は、まさにその最悪の実例であると言わざるを得ない。
戦後民主化の過程で、NHKの抜本改革が進展しようとした。
NHKを政治権力から切り離し、選挙で選ばれた放送委員によって構成される
「放送委員会」の支配下にNHKを置くという法律案が作られた。
日本の敗戦直後の占領統治を支配したのはGHQの民生局(GS)であり、い
わゆる「戦後民主化」措置の大半は、民政局主導で実現したものである。
ところが、1947年に米国の対日占領政策の基本方針が大転換した。
いわゆる「逆コース」が始動したのである。
「民主化路線」は「非民主化路線」に転換してしまった。
米国の対日占領政策の基本が「民主化」から「反共化」に転換したのである。
これとともに、NHK改革が消滅した。
「対米隷属の父」と呼べる吉田茂政権の下で電波三法が制定され、現在の放送
法が制定された。
この放送法により、NHKは政治権力の支配下に置かれることになったのであ
る。
この結果、NHKは「公共放送」を担う存在ではなくなり、実質上の「国政放
送」、権力の広報機関としての基本性質を有することになったのである。
この根本問題を解消する必要がある。
まずは、重要な国会審議の完全中継と、2週に1度の政党討論番組の放送をN
HKに義務付けるべきである。
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