曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

○「これでいいのか 日本」顛末記 「日本一新運動」の原点

2014年06月27日 12時42分00秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

日本一新の会 メルマガ配信
━━【日本一新】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                  通巻第219号・2014/6/26
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                     顧問:戸田 邦司
                     発行:平野 貞夫
                     編集:大島 楯臣
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◎「日本一新運動」の原点―219

            日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

○「これでいいのか 日本!」 顛末記

 六月十九日(木)午後六時からの『これでいいのか 日本!』
(シンポジウム)が、憲政記念館で五百余席を満員にして開かれ
た。参加者は初老の人が多かったが、各界各層・左右中道に加え、
わざわざ警視庁公安関係者も参加してくれた。さぞや憲法九条を
護ることに熱心だった元警察著長官の後藤田正晴さんが彼の世で
喜んでいることだろう。
 開会の挨拶は主宰した「躍進日本!春風の会」代表村上正邦元
参議院自民党議員会長で、「いま、世界は歴史的大転換期を迎え
ています」から始まった。要点は安倍政権のTPP問題、特定秘
密保護法、集団的自衛権行使の解釈改憲などを批判し、保守派の
イメージが護憲派に変わった論旨に参加者を驚かせていた。

 発言者のトップは政治評論家の森田実氏で、解釈改憲への批判
がほとんどであった。森田氏の論旨は「安倍首相の判断は米国の
強要による」というもので、「国力が確実に弱くなった米国がこ
れまで通りアジアの支配者であり続けるためだ」とし、「安倍政
権は米国の仕掛けた罠にまんまとはまり、集団的自衛権の行使に
踏み切れば、自衛隊は事実上、米国の先兵となる」と論じていた。
米国についての見方が単純すぎ、むしろ米国自身が、安倍首相の
歴史修正主義を懸念していると私は見ているが、討論会ではない
ので、敢えて批判することを控えた。

 佐高信氏の「マスメディア批判」は、さすが経済評論家だけあ
って面白かった。マスコミが竹中平蔵氏の肩書きを「慶應大学教
授」と報道し、ひと昔であれば「口入れ稼業」に過ぎない「パソ
ナ会長」と報道しないことを怒りをもって抗議していた。大学教
授の肩書きは、一般的に信頼感を与えるが、企業の役員名は利害
関係者の印象が強くなる。新自由主義の竹中氏とともに、推進す
るマスメディアの意図的な姿勢を具体的に説明して、日本が駄目
になった原因のひとつにしていた。

 菅原文太氏の発言は、ご自分の体験から「いのち」の大切さと
「戦争の悲惨」を語っていた。戦争で家族が戦死し、その悲しみ
を超えて生きてきたことをとつとつと話した。集団的自衛権の行
使は戦争への道であり、いまの政治にそれを止める力はない。国
民一人一人に戦争への道を阻止する覚悟ができるか。これから、
「いのちの党」(菅原氏がつくった任意団体)で、命がけで運動
を続ける、と語った。

 さて私の話だが、このところ、集団的自衛権のメルマガばかり
なので、なるべく重複を避けて要点を整理しておく。
1)集団的自衛権問題の本質 戦時中に「東条首相によって陸軍
刑務所に投獄された吉田茂」と、「東条内閣の閣僚として戦争に
協力した岸信介」との因縁の戦いである。

2)因縁の内容 吉田的思考は「二度と戦前の軍国主義国家にし
てはならない」こと。岸的思考は「強い日本をつくるため、憲法
を改正し、再軍備をして、自衛のために核兵器をもつ」ことだ。

3)吉田的思考の行方 昭和二十九年に「集団的自衛権の行使は
憲法上許されない」との政府見解を置き土産に退陣。それを昭和
四十七年の日中国交回復直後の田中角栄内閣がより整備。昭和五
十六年に鈴木善幸内閣が各国に誤解を与えないため、統一見解と
して明確にした。以後、政権交代があってもこの見解が守られて
きた。

4)岸的思考の行方 岸信介首相は就任三ヶ月後の昭和三十二年
五月「憲法は自衛のための核兵器保有を禁じていない」と発言し
た直後、「国防の基本方針」を決定。吉田時代の日米安保条約を
改定することを決めた。
 昭和三十五年六月に新安保条約を批准発効させ、適用範囲を、
「極東」に拡大したりして、集団的自衛権の事実上の行使を目論
んだが、強引な政治運営の批判を受け退陣し挫折。四十一年後の
平成十三年以降になり岸信介の政治的DNAをもつ小泉―安部体
制が政権に就くや、集団的自衛権行使への動きを活発化させ今日
に至った。

5)これからどうなるか もし、安倍首相が集団的自衛権の行使
を、解釈改憲として閣議決定すれば、東アジアの緊張が高まり、
五年以内に日本は戦時体制となり核武装を図るだろう。十年内に
国家破綻の「いつか来た道」を歩む可能性がある。

6)どうすればよいか 「軍国主義への戦前回帰の政治」をやめ
させる国民的結集を図ること。安倍首相は「国民の命を守るのが
首相の責任」と強弁するが、厚木市で発見された五歳の子供の白
骨死体を何と考えるか。

○ 歴史を偽造し憲法を骨抜きにした「安保法制懇報告書」

 安倍首相の集団的自衛権行使へ進む教科書である「安保法制懇
報告書」に歴史の改竄があると私が指摘し、『これでいいのか 
日本!』では「さまざまなメディアに情報提供したが、採り上げ
てくれたのは『日刊ゲンダイ』だけだ」と発言したところ、場内
から現在のマスコミのあり方を象徴する問題だと、ため息と同時
に笑いが起きた。

 実は数日前に北海道新聞記者から電話取材をうけていた。原点
―二一五号(「安保法制懇報告書」は戦後歴史への冒涜!)を読
んでいて、日本が国連加盟の時、憲法九条に関連して「留保」し
ていたとの西村熊雄元条約局長の発言資料が欲しいとのことだっ
た。珍しいことで誠実に対応した。

 六月二十一日(土)の夕刊に掲載され、『憲法って何?Ⅱ』と
題する連載記事だった。見出しは〝安保法制懇報告書「留保」に
事実誤認か〟とあり、私のコメントとともに、阪口規純東京国際
大学教授のコメントも掲載されていた。記事は「歴史の改竄か、
見解の相違か。集団的自衛権の行使を安倍晋三首相に提言した首
相の私的諮問機関、安全保障の法的整備の再構築に関する懇談会
(安保法制懇)の報告書をめぐり、事実誤認ではないかとの論議
が起きている」で始まり、問題になっている点について、報告書
が「一九五六年九月、日本が国連に加盟した際、国連の集団的安
全保障や、加盟国の集団的、個別的自衛権について何ら留保をつ
けなかった」としたことについて、加盟の九月が、十二月である
ミスは別とし、加盟申請の文書「加盟国としての義務を、その有
するすべての手段をもって履行することを約束する」の読み方に
ついて、よく知られているのは後藤田正晴元内閣官房長官が、
「憲法九条の範囲内での協力を留保条件として明記したもの」と
解釈していたことを紹介。

 加盟申請書を作った西村熊雄・元条約局長が政府の憲法調査会
で述べたことは「申請書には最初『国連憲章の義務を果たす。し
かし九条に対し注意を喚起する』と留保をつけた。GHQに感想
を求めたら『九条と直接的に書かず、間接的にしたほうがよい』
という。そこで間接に変えた。日本政府はその有するあらゆる手
段で国連の義務を遵守するが、日本のディスポーザルにない手段
を必要とする義務は負担しないことをはっきりさせ、提出しまし
た」であるとし、ディスポーザルの部分は「自由に使える手段の
意。自由に使えない手段の義務は留保したととれる、と解説して
いた。

 ところが九〇年の湾岸戦争の時、海部首相が「留保はなかった
と考える」と国会答弁。二〇〇一年の国会審議で福田内閣官房長
官が、同じ見解を述べたと説明。今回、安保法制懇の事務局だっ
た内閣府は「加盟申請書のどこにも留保と書いていない。報告書
は正しい」という。外務省も同意見だ。どう見るか有識者に尋ね
た、として二人のコメントを掲載している。

平野貞夫元参議院議員の話 消しゴムです。歴史の真実を消し、
偽造する人たちがいる。許し難い。私は衆議院事務局員だったこ
ろ、憲法調査会を担当した。六〇年安保闘争の直後で、西村さん
の証言を覚えている。
 岸首相は憲法をどんどん骨抜きにしていった。西村さんは平和
憲法をどう生かすか苦労した人で、証言の最後を「(留保を)こ
の点は忘れられておりますけれど、この機会に報告しておきます」
と警告しています。国会もしっかりすべきだ。メディアの責任も
大きい(要旨)。

阪口規純東京国際大学教授の話 申請当時、外務省が憲法を根拠
に、国連への兵力提供はできないと考えていたのは国会答弁など
で明らかだ。国連に対しそれを意思表示したのは事実上、一定の
留保をしたといえる。ただ、厳密に国際法上の留保か否かは明確
ではなく、政治的宣言とみることもできる。この厳密な解釈を前
面に出し「留保はない」と外務省は軌道修正を図る。それが九〇
年代以降だ(要旨)。

 先の衆参議員選挙で、積年のねじれが解消された第一八六回国
会(常会)は閉じ、法案の成立率は九七・五%という。国会は、
「野党側は論戦で見せ場をつくれず、自民党の『一強多弱』を裏
付ける形となった」(産経)と評される始末だ。その傍らで国連
加盟で留保した憲法九条の解釈改憲をすることは、法治国家に非
ずして無血クーデターである。政府は休会中にも解釈改憲を閣議
決定するという。このようなことで、本当に国民の平和と安穏が
保たれるのか、今こそ、私たち一人一人の覚悟が問われているの
ではないだろうか。                 (了)

 

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