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憲法は誰が守るべきか【立憲主義・法の支配・法治主義】政治権力が守るべき

2015年06月07日 12時19分00秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                 

憲法は誰が守るべきか【立憲主義・法の支配・法治主義】

 
法のピラミッド
上のような法のピラミッドを教科書などで見たことのある方、「憲法は国の最高法規」であることを知ってる方は多いかと思います。そして、国民は法律だけでなく憲法も守らなければならないと考えてる人ももしかしたらいるかもしれません。しかし、国民は「憲法」を守る必要はありません。憲法は国民に対するものではないからです。
では憲法は誰が守るべき法か・立憲主義とは何か・法の支配とは何かを続きに書いていきます。

憲法は誰が守るべきものか

結論から言えば、憲法は国家権力(公務員)が守るべき法です。憲法第99条にはこう書いてあります。
日本国憲法 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
この条文は、誰が憲法を守るべきか(憲法尊重擁護義務)を書いているものですが、ここに国民は含まれていません。なぜなら、憲法は国民による国家権力に対しての法だからです。つまり、憲法によって国家権力は縛られています。国民が国家を縛るとはどういう意図があるのでしょうか。

権力腐敗と立憲主義

「権力は腐敗する、専制的権力は徹底的に腐敗する」 ~ Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely - ジョン・アクトン

歴史を見ると、国家権力というものは度々暴走し、個人の権利や自由を侵害してきました。権力が腐敗する原因や条件は心理学の実験などで調べられていますが、権力が腐敗しやすいという事は、現代においても周りを見渡せば理解するのは容易です。
そのため、憲法は個人の自由が国家権力に侵されないよう国家権力を制限しています。権力は腐敗しやすいため、憲法により権力を制限し個人の自由を守るという考え方を立憲主義と言います。
では、国家権力は憲法により何を制限されているのでしょうか。それを考えるにあたって「法の支配」という言葉の意味とその内容を考える必要があります。

法の支配とは何か

法の支配とは、「正しい法」によって権力を拘束する原理です。「正しい法」とは日本においては「憲法」を指します。つまり、立憲主義は法の支配を取り入れています。【補足~法の支配と法治主義】
法の支配の内容は具体的に以下の4つであると解されています。
個人の人権保障 (憲法第3章、97条【1】
立憲主義は個人の自由を守るという考え方が根底ですので、国家は個人の人権を保障しなければなりません。
憲法の最高法規性の承認(98条1項【2】
国は憲法に違反する法律や命令または規則を制定してもそれは認められません。冒頭の法のピラミッドはこのことを表しています。
司法権重視(最高法規性の担保) (第6章、81条【3】
裁判所には違憲立法審査権が与えられ、立法府、行政府が憲法に違反している法律や命令を制定していないか・処分を行っていないか調べます。そうすることによって憲法の最高法規性が担保されます。
適正手続の保障(due process of law)(31条【4】
個人の人権を保障するために法に則った手続きをしなければなりません。例えば刑事手続や行政手続などです。
このように、立憲主義に基づく法の支配により、国家権力は個人の人権を侵すことのないよう制限されています。具体的な憲法の条文としては第13条にあります。日本において、国家権力は個人の人権の尊重を包括的に定めた憲法第13条をまず重要視して守る必要があります。

日本国憲法 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法の他の条文はこの第13条を基軸としています。立憲主義や法の支配の目的は個人の自由の確保だからです。
まとめると、一番大切なのは個人の自由であり、それを確保するために国家権力が憲法を守らなければならない、その考え方が立憲主義、原理が法の支配ということです。
以上が憲法についての簡単な説明です。国民は憲法を守らなければならないと考えていた方は目から鱗が落ちたかもしれません。憲法について調べるほど、現代の憲法がいかに個人を大切にしているかが分かります。最近では憲法改正の動きもあるので、憲法への関心が高まっていますが、その改正案は政治家が自らの制限を解くものではないか、個人の自由を狭めるものではないか、国民にも憲法を守らせようとしていないかなど慎重に調べる必要があります。憲法は国家権力の暴走を抑える要だからです。

補足~法の支配と法治主義

法の支配と似た言葉として「法治主義」があります。法の支配は法(憲法)自体が合理的であるかなど法の背景を考えますが、法治主義は国民の代表である議会(立法府)が定めた「法律」であればその内容は問いません。法の支配は司法権を重視していますが、法治主義は議会に信頼を置いています。
法治主義は「悪法も法なり」で、法律さえ決まればそれが人権を侵害するものであっても適用されます。ナチスが法治主義を利用して権力を集中させ、暴走したことは有名です。【5】

  1. 憲法 第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
  2. 憲法 第98条第1項 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  3. 憲法 第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
  4. 憲法 第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
  5. 法治主義には形式的法治主義と実質的法治主義があり、今述べた法治主義が形式的法治主義です。実質的法治主義は、法の内容も考慮するという考え方で法の支配とさほど変わりません。
憲法 第五版
 


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