曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

数百万人の同胞を棄てる悪徳国家権力

2019年12月01日 13時51分47秒 | 政治

                                                                                              

                        「植草一秀の『知られざる真実』」
                                  2019/12/01
           数百万人の同胞を棄てる悪徳国家権力
            第2394号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019120106000061257 ──────────────────────────────────── 2013年9月7日、アルゼンチンのブレノスアイレスで開かれたIOC(国 際オリンピック委員会)総会。
2020年夏のオリンピック招致に向けて、安倍首相は次のように述べた。
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、 統御されています」
英語での表現はこうだ。
“The situation is under control.”
「東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも 及ぼすことはありません。」
さらに、安倍首相は質疑応答で次のように答えた。
「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0・3平方キロメートルの 範囲内で完全にブロックされています」
しかし、現実には福島第一原発の貯水タンクからは毎日300トンもの高濃度 汚染水が漏洩(ろうえい)していた。
汚染水が地下水に到達していたことも明らかになっていた。
東京電力は、2011年4月4日から10日にかけて、港湾内に1万393ト ンの放射能汚染水を意図的に放出した。
そして東電は、1日で港湾内の海水の44%が港湾外の海水と交換されている ことを明らかにした。
港湾と外海は遮断されていない。
港湾は外海に接し、港湾内の汚染水は1日で約半分が外海の海水と交換されて いた。

40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続けている、元京都大 学原子炉実験所助教の小出裕章氏が新著を刊行される。
『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】』 “The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics” (小出裕章著、径書房) https://amzn.to/2OAIdzO
あとがきで小出氏は
「私は自分の本を出すことに興味がなく、本を出すために文章を書いたことは ない。
しかし、止むに止まれぬ思いで書いた文章を、多くの人に届けて下さるという お申し出はありがたいことと思う。」
と記されている。
「筆舌に尽くしがたい被害と被害者が生まれた。
一方、原発の破局的事故は決して起こらないと嘘をついてきた国や東京電力 は、誰一人として責任を取ろうとしないし、処罰もされていない。
絶大な権力を持つ彼らは、教育とマスコミを使ってフクシマ事故を忘れさせる 作戦に出た。
そして、東京オリンピックのお祭り騒ぎに国民の目を集めることで、フクシマ 事故をなきものし、一度は止まった原発を再稼働させようとしている。
フクシマ事故が起きた当日に発令された「原子力緊急事態宣言」は事故から8 年経った今も解除できないままである。
しかし、国民のほとんどはその事実すら知らない。」

「そんな時、イタリア在住の楠本淳子さんが私に一文を書くように勧めてくれ た。
彼女はそれを世界各国のオリンピック委員会に送るという。」
「そこで私は「フクシマ事故と東京オリンピック」という文章を書いた。
その文章に今回、径書房が目を止めてくれ、7ヵ国語に翻訳したうえで、出版 してくれることになった。」
こうして誕生したのが『フクシマ事故と東京オリンピック』である。
圧巻は2013年9月7日のIOC総会でTOKYOが読み上げられた瞬間の 日本招致団一行の写真だ。
この写真に映し出されている表情こそ、日本政治の正体である。
本書における小出裕章氏の記述は極めて簡潔、平易で明瞭であるとともに壮絶 な重大性を持っている。
「広島原発168発分のセシウム137が大気中に放出された。
広島原爆1発分の放射能でさえも猛烈に恐ろしいものだが、なんとその168 倍もの放射能が大気中にばらまかれたと日本政府が言っているのである。
セシウム137はウランが核分裂して生成される核分裂生成物の一種であり、 フクシマ事故で人間に最大の脅威を与える放射性物質である。」
そして、いまなおフクシマ事故はまったく収束していない。
さらに炉心の溶融が進めば、セシウム137を含む放射性物質が再度環境に放 出される。
これを防ぐために、
「どこかにあるであろう炉心に向けて水を注入している。」
多くの写真が併用された衝撃の書である。
各国オリンピック委員会に文章が伝えられれば大きな反響があるはずだ。
背徳の東京五輪を私たちは黙認するべきでない。
まずは、小出氏による渾身の新著にお目通しを賜りたい。

「2017年1月に東京電力は原子炉圧力容器が乗っているコンクリート製の 台座(ペデスタル)内部に、いわゆる胃カメラのような遠隔操作カメラを挿入 した。」
「圧力容器の底を抜いて溶け落ちてきた炉心が、さらに下まで落ちていること が分かった。」
「人間は全身で8シーベルト被曝すれば、確実に死ぬ。
圧力容器直下での放射線量は一時間当たり20シーベルトであり、それすら大 変な放射線量である。
しかし、そこに辿り着く前に530あるいは650シーベルトという放射線が 計測された。
そして、この高線量が計測された場所は、円筒形のペデスタルの内部ではな く、ペデスタルの壁と格納容器の間の壁の間だったのである。」
このことは、溶けた核燃料が
「ペデスタルの外部に流れ出、飛び散ってしまっている」
ことを示す。
こうなると、溶け落ちた炉心を回収し、容器に封入することはできなくなる。

炉心を冷やすために水を注入してきたが、
「そのため、毎日数百トンの放射能汚染水が貯まり続けている。
東京電力は敷地内に1000基近いタンクを作って汚染水を貯めてきたが、そ の総量はすでに100万トンを超えた。
敷地には限りがあり、タンクの増設にも限度がある。
近い将来、東京電力は放射能汚染水を海に流さざるを得なくなる。」
安倍首相は2013年9月7日のブレノスアイレスにおけるIOC総会で、
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、 統御されています」
「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0・3平方キロメートルの 範囲内で完全にブロックされています」
と述べた。
いずれも真っ赤な嘘である。
拙著 『国家はいつも嘘をつく--日本国民を欺く9のペテン』 (祥伝社新書) https://amzn.to/2KtGR6k
に記したように、安倍内閣は嘘とペテンの専売総代理店の様相を示している。
そのなかでも、原発に関する嘘はとりわけ悪質性が高い。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会が発表した「立候補 ファイル」は大会会期中の気候について、「2020年東京大会の理想的な日 程」と題して、
「この時期の天候は晴れる日か?多く、且つ温暖て?あるため、アスリートか? 最高の状態て?ハ?フォーマンスを発揮て?きる理想的な気候て?ある」
と表記した。
「理想的な気候」であるなら、マラソン競技を早朝の時間帯に設定したり、札 幌での実施を検討したりする必要がない。
すべてが嘘とペテンで作られた東京オリンピックと言うほかない。
五輪招致にかかる贈賄疑惑にも決着が付けられていない。
国威発揚、滅私奉公、学徒動員の東京オリンピックを開催する必要性がない。
いまからでも遅くない。
五輪開催を返上するべきである。

1年間に20ミリシーベルトという被曝量は、「放射線業務従事者」に対して 国が初めて許した被曝の限度である。
「放射線業務従事者」だけが「放射線管理区域」への立ち入りを許される。
この「放射線管理区域」において許容される放射線被曝上限が年間20ミリ シーベルトなのである。
その「放射線管理区域」においては、放射線業務従事者であっても、水を飲む ことも食べ物を食べることも禁じられている。
寝ることも禁じられ、トイレすらなく、排せつもできない。
「ところが、国は、今は緊急事態だとして、従来の法令を反故にし、その汚染 地帯に数百万人の人を棄て、そこで生活するように強いた。」
そしてこの措置を強いている、フクシマ事故が起きた当日に発令された「原子 力緊急事態宣言」は事故から8年経った今も解除されていない。
解除の見通しは存在しない。
真実をありのままに述べる人が減っている。
すべての者が沈黙すれば、滅びしかなくなる。
小出氏が書いてくださった文章は7ヵ国語に翻訳され、真実を視覚で訴える多 数の画像、私たちの感覚を呼び醒ます卓越した装丁によって一冊の書物になっ た。
この貴重な書物を日本だけでなくすべての国の人々に熟読していただきたい。



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