「植草一秀の『知られざる真実』」
2019/12/06
本物のたしかな野党を一から育てる必要性
第2498号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019120612253761450 ────────────────────────────────────
臨時国会も幕を閉じて2019年がまもなく終わる。
不正が正されず、悪徳が栄えるこの国の闇は深い。
「桜を見る会」の疑惑が拡大したが、安倍首相は逃げの一手である。
「疑惑を持たれた者は内閣にあるものもそうでない者も、与党であろうと野党 であろうと説明責任をしっかり果たすことが必要」
と繰り返してきた安倍首相が、自分に対して疑惑を持たれた途端、説明責任を 果たそうとせず、逃げの一手である。
国会の予算委員会で集中審議を行い、疑惑を追及することが最低条件だった。
安倍首相は政府行事である「桜を見る会」を完全に私物化していた。
その私物化の証拠となるのが招待者名簿である。
ところが、政府は国会で共産党の宮本徹衆議院議員が資料提出要求すると、そ の直後に名簿を破棄した。
しかし、この時点ではシステム上にバックアップデータが存在していた。
国会の資料提出要求に対してバックアップデータを活用して応じることができ た。
ところが、菅義偉官房長官は、バックアップデータは「行政文書ではない」と の詭弁を呈して政府の対応の誤りを認めない。
こんな馬鹿げた説明を粉砕しない日本の情報空間の歪みが際立っている。
安倍首相後援会が主催した「桜を見る会」前日夜開催の前夜祭では、通常、最 低でも1人1万円以上はかかる費用に対して参加者から徴収した参加費は50 00円だった。
会場入口で安倍首相後援会スタッフが参加費を徴収し、ホテルニューオータニ の領収書を手交し、参加費をホテルニューオータニに渡し、安倍首相後援会は 収支に一切かかわっていないと安倍首相は説明している。
安倍首相説明は虚偽である疑いが強い。
安倍首相説明が虚偽であることを示す証拠が提示されれば、安倍首相の嘘が立 証される。
決定的な証拠を提示する当事者が名乗り出ることが待たれている。
「桜を見る会」招待者名簿のなかにマルチ商法で巨大な被害をもたらしたジャ パンライフ元会長が含まれていた。
ジャパンライフ元会長は政府からの招待状のコピーを印刷して営業活動に利 用。
被害拡大の重大な原因になった。
ジャパンライフ元会長は安倍首相の推薦枠のなかで招待状が発送されたと見ら れている。
事実関係を明らかにして招待に至る経緯を明らかにしなければならない。
安倍首相および後援会、政治資金管理団体の行為は公職選挙法、政治資金規正 法に抵触するおそれのある重大な問題である。
安倍首相が「説明責任」を強調するのであれば、衆参両院の予算委員会で集中 審議を行うことは当然である。
しかし、安倍首相が指示して予算委員会での集中審議実行が阻止された。
本会議で一方的に自己の主張を朗読しただけで終わっている。
国会が国会としての機能を果たしていない。
これ以外にも、安倍内閣に関する刑事責任を問われる問題がことごとく無罪放 免とされてきている。
甘利明氏、下村博文氏の問題も無罪放免にされてきた。
森友、加計疑惑では疑惑の中心に位置する安倍首相、安倍首相夫人、加計孝太 郎氏の問題が不問とされ、財務省による国有地の不正廉売を実行した事案、公 文書改ざんした事案、国会に虚偽の事実を報告した事案のすべてが無罪放免に された。
その一方で、森友学園元理事長夫妻だけが逮捕され、長期勾留の末、長期懲役 刑の求刑がなされている。
問題の本質は行政を私物化した罪、国有地を不正廉売した罪、公文書を改ざん した罪であるのに、この本丸がすべて無罪放免とされ、森友学園の補助金受領 だけが犯罪として取り扱われている。
このような政治崩壊に対して、野党は毅然とした対応を示すべきだが、その野 党中核に位置する立憲民主党と国民民主党の対応が生ぬるい。
野党が解散を恐れて与党に対して毅然とした姿勢を示せぬなら日本政治は完全 崩壊する。
日本の崩壊が進行している主因は安倍政治の暴走にある。
三つの重大な要因がある。
第一は刑事司法が腐敗しきっていること、第二はマスメディアが腐敗しきって いること、そして第三は主権者である国民の対応がぬるいことだ。
第一と第二はあちら側、暴走する安倍政治の側の問題。
しかし、第三はこちら側の問題だ。
野党が生ぬるい対応を示すのも、野党に対する監視の責任を負う主権者の側の 問題であると言ってもよいだろう。
この現状を放置するなら、日本は世界で最悪の国家の一つに凋落することにな る。
この臨時国会で安倍内閣が最優先した議案は日米FTA批准案だ。
マスメディアは米国産の輸入関税が下がることを消費者にとっての朗報だと伝 える。
この報道姿勢そのものが偏向メディアの基本を象徴している。
米国産牛肉には成長ホルモンが投与されている。
米国産豚肉にはラクトパミンが投与されている。
いずれも健康被害をもたらすことに対する懸念が強く持たれているものだ。
欧州では「予防原則」を基礎にして成長ホルモン投与、ラクトパミン投与の肉 の輸入を禁止している。
「予防原則」とは、「有害性の疑いがあるものは安全性が確認されるまでは認 めない」立場である。
これに対して米国は「科学主義」を基本にする。
「科学主義」とは「科学的に有害性が立証されるまでは利用を制限しない」と いうものだ。
これは逆に言えば、「毒性があっても「科学的に立証」されるまでは制限しな い」というものである。
「毒を、毒であることが立証されるまでは食べ続けろ」というもの。
どちらが、国民の生命、健康を守るための方式であるかは明白だ。
「科学主義」が「毒性が懸念されるものについて、毒性がないことが「科学的 に立証」されるまでは利用を認めない」とするものなら適正だ。
これが「予防原則」の考え方だが、「有害性が科学的に立証されるまでは容認 する科学主義」を基本にする運用では、有害性が科学的に立証されるまでに多 数の健康被害が発生することを防げない。
米企業モンサントは、グリホサートを主成分とする強力な除草剤ラウンドアッ プの開発メーカーである。
このモンサントが遺伝子を組み換え(GM)て、ラウンドアップ耐性のある種 子を開発し、ラウンドアップとのセット販売を行ってきた。
農家はGM種子を蒔いて農産物を生産する。
その過程でラウンドアップを散布する。
農産物はラウンドアップ耐性を持つから農産物は生育し、雑草はラウンドアッ プによって死滅する。
しかし、農家はひとたびGM種子とラウンドアップの併用を始めると、永久に このセット販売から抜け出すことができなくなる。
これがモンサント商法である。
ラウンドアップの有害性がかねてより指摘されてきた。
しかし、米国政府は「科学主義」の立場に立ってラウンドアップ使用を認めて きた。
ところが、昨年8月にカリフォルニア州裁判所がラウンドアップの有害性を認 定し、モンサントに対して320億円の損害賠償を命じる評決を下した。
裁判所がラウンドアップの有害性を認定する判断を示したのだ。
GM作物の多くはグリホサート散布の影響を受ける。
このことから、米国の消費者はNON-GM食物を強く求め始めている。
モンサントは独化学企業バイエルに買収されたが、ラウンドアップ訴訟の影響 でバイエル株価が急落した。
米国産牛肉の輸入急増が日本の消費者にとっての朗報とはまったく言えないの だ。
一次産業は私たちの命と健康を支える基幹産業である。
だから、どの国も巨大な補助金を投下して一次産業を保護している。
米国の命令に服従して一次産業崩壊を招く通商協定を安易に受け入れることは 主権者国民に対する背信行為である。
しかも、日米協定はこれから始動する全面的な日本制度改正につながる日米F TA協定の端緒になるものだ。
米国は22の交渉分野を設定しており、今回の通商協定はそのなかの2分野に ついての協定である。
安倍内閣はすべてにおいて米国に隷従しており、日本の主権者の利益を守る姿 勢をまったく示していない。
この日米協定がこの臨時国会で野党の抵抗なく批准された。
野党の中核に居座る立憲民主党と国民民主党が自公傀儡政党に堕していること が主因である。
日本の主権者が目覚めなければならない。
エセ野党を排除して、本当の意味で主権者の利益を守る「真の野党」を一から 育てるしかない。
目先の数合わせに走らず、本物を育てる必要がある。
本物のたしかな野党を生み、育てることが必要だ。
※転載者の一言:安倍政治が続いている最大の原因は、マスメディアにる、真実を報道していれば、安倍政治は当の昔に退陣に追い込まれているはずだ、戦前型、1世紀遅れの政治権力の奉仕機関化されしまっている。従って司法も動きづらい、国民も真実を知らないままである。安倍政治実態は独裁化してしまっている。その政治は暴虐極まりない暴政独裁なのである。
その 実態はグローバルに進められている。政治の上を突っ走っている暴走する資本主義1%の資本家、大企業、多国籍企業の儲けを極大化する、政策を推進して、その反面国民は窮乏化に陥っているのである。欧米諸国は民営化されていた水道なども国営化に戻しているが、逆に日本は未だに推進の方向を脱しないでいる。早く止めなければ暴走する資本主義の国民は奴隷化されてしまうであろう、だらしない立憲、国民民主野党も、安倍政治に対しての拒否反応が鈍いのがなさけない。
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