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真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

主権者の命を守らない政権は刷新すべし

2019年10月19日 09時35分44秒 | 政治

 

                                

                      「植草一秀の『知られざる真実』」
                                   2019/10/18
             主権者の命を守らない政権は刷新すべし
             第2458号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019101906000059472 ──────────────────────────────────── 台風19号が関東、中部、東北地方を直撃し、深刻な被害が広がっている。
台風19号が史上最大級の強さで首都圏を直撃したことは事実だが、この程度 の勢力の台風が首都圏を直撃することは十分に想定されている。
台風19号は「異常に巨大な天災地変」とは言えない。
想定されている勢力、大きさの台風が襲来して、このような深刻な事態が引き 起こされたことは、自然災害への備えが不足していることを意味する。
「ダムと堤防による洪水対策は限界に来ている」
などの論評が流布されるが、適正な代替案を提示せずに、このような論評を流 布するのは無責任のそしりを免れない。
近年、集中豪雨による短時間降水量の増加が顕著になっている。
こうした降水は当然のことながら河川に流入することになる。
河川の流下能力を上回る雨水の流入があれば河川は氾濫する。
「ダムと堤防による洪水対策は限界に来ている」という論評が、河川の氾濫を 「やむを得ぬもの」として容認するものであるなら、それに伴う人的被害、物 的被害も容認するということになる。
今回の台風被害においても、人的、物的被害は膨大なものになっている。
集中豪雨が発生した際、河川の流下能力を上回る雨水の流入があった場合に、 その雨水を河川から外に逃がす手法を検討することは有用ではある。
農業用ため池などを活用して河川の流量低減を図ることなどは積極的に検討す るべきである。
しかし、こうした措置による流量低減効果には限界があり、これだけで甚大な 被害を回避することは難しい。

今回の豪雨災害では、治水用ダムにおいて「事前放流」が実施されていなかっ た。
「事前放流」とは台風が接近する際に、事前に放流して利水容量の下限を下回 る水準に貯水量を引き下げることである。
このことによって、豪雨が発生した際の治水容量を拡大することができる。
巨大な費用を投下してダムを建設するなら、豪雨災害が予想される局面でダム の「治水容量」を最大限活用するべきである。
豪雨発生前にダムの貯水量を人為的に最低水準に誘導しておくことによって、 豪雨の際にダムが雨水を溜め込むことによって河川の水位を抑制することがで きる。
また、河川においては、構造上、堤防決壊が発生する可能性の高い箇所の堤防 強度を強化することが求められる。
支流における本流との合流手前地点では「バックウォーター現象」によって堤 防に大きな力がかかる。
このような地点の堤防を強化することが必要である。
また、千曲川堤防決壊では、川幅が急激に狭まる地点の手前で堤防が決壊し た。
これも事前に堤防決壊の可能性が指摘されていた箇所である。
河川氾濫による被害の甚大さ、深刻さを踏まえれば、河川氾濫による被害を回 避するための対応を進めるべきなのだ。
国民の生命を守ることが政府の第一の役割だ。
そのための財政資金投下が必要になるが、財政資金投下で何よりも重要なのは 「適正な優先順位」の設定である。

ミサイルの迎撃など不可能であると言われているイージスアショアを設置する よりも堤防を強化することの方が、はるかに重要性が高い。
安倍内閣はF35を147機も購入し、維持費を含めれば総費用は6兆円に達 するとも言われている。
しかし、戦乱が発生すれば、直ちにF35の基地がミサイルでの攻撃対象にさ れる。
基地が破壊されればF35は無用の長物に成り下がる。
こんなものに数兆円の財政資金を投下する余裕があるなら、その財政資金を堤 防強化に注ぐべきなのだ。
損失ばかり計上する官民ファンドに巨大な財政資金を投下することもおかし い。
なぜ、吉本興業の事業に100億円もの公的資金を投下するのか。
河川の氾濫を防ぐための事業に財政資金を投下することの方がはるかに健全な のだ。
日本財政の最大の問題は、
必要のない無駄な対象に巨大な財政資金が投下される一方で、本当に必要な重 要な対象に財政資金が投下されていないことだ。
同時に重要なことは、災害発生の可能性と影響を可視化すること。
ハザードマップはその典型である。
事前に、どの地点にどのようなリスクが存在するのかを可視化するものだ。
リスクがどこにどの程度で存在するのかを可視化する。
これは費用のかからない防災対策である。
情報を最大限活用して、合理的、かつ効果的な避難を実現する。
まずは、ここから始める必要がある。

北陸新幹線の長野新幹線車両センターが浸水したが、国は同センターの立地地 点について。2016年に、想定される最大の豪雨で10メートル以上浸水す ることを認定していた。
ところが、同センターを所有する国所管の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は 浸水への対策を取っていなかったことを中日新聞が報じた。
「「浸水想定区域」対策せず 鉄道機構 長野の新幹線基地」 https://bit.ly/2po2tL3
中日新聞報道によると、鉄道・運輸機構は同車両センターを整備する際、長野 県が1982年に作成した浸水被害実績図を参考に浸水対策を実行していた。
実績図によると、センター立地地点の土地は、過去に最大で標高331.1 メートルまで浸水した。
同機構は同じ規模の豪雨があっても浸水しないようにセンターの土地に2メー トルほど盛り土をして標高332メートルまでかさ上げした。
この事実を踏まえるとJR東日本および車両センターは千曲川氾濫の際の浸水 リスクを認識し、対応していたことになる。

しかし、2016年に国が、同センターの立地地点について、想定される最大 の豪雨で10メートル以上浸水することを認定したことに対して適切な対応を 取っていなかった可能性が浮上している。
千曲川は今回、堤防が決壊した地点に近い下流で川幅が急激に狭くなる。
このために、狭くなる地点の上流域で、豪雨の際にはバックウォーター効果で 堤防に対する圧力が高まる。
そのために堤防決壊が生じたと考えられるが、こうした事情も踏まえて河川氾 濫時の浸水リスクを想定していた。
車両センターは同想定で、10メートル以上20メートル未満の浸水が発生す ると予想される地域内に立地している。
この想定を踏まえて、浸水対策を講じておくべきだった。
大雨が想定されていたのであるから、車両を浸水リスクのない場所に移動させ ておくことも十分に検討に値するものだったと考えられる。
ところが、そのような対応は取られなかった。

土砂崩れによる被害を受けることが想定される地点、河川氾濫による浸水が発 生する可能性が高い地点などが、あらかじめ想定されている。
このようなリスクの高い地点に居住する住民が迅速に避難できるためのサポー ト体制を整備することも重要だ。
多数の犠牲者が発生してしまったが、被害を防ぐための最大限の行動を取って いれば回避できた可能性が少なからず存在する。
「命を守る行動を取るように」
とアナウンスすることは容易だが、具体的に何をすればよいのかが明確でなけ れば効果的な対応を期待することはできない。
命を守るために避難所を訪れても、避難所の公務員から避難を拒絶される事態 に遭遇するようでは、政府は「言っていることとやっていることが違う」とい うことになる。

安倍政治の下では国民の命が重視されていない。
財政運営でも政治屋や官僚機構の利益だけが追求されて、主権者である国民の 利益がおろそかにされている。
東京、神奈川で堤防決壊に伴う浸水被害が発生せず、長野、栃木、埼玉、茨 城、福島、宮城などで深刻な浸水被害が発生した理由を冷静に見つめる必要が ある。
東京、神奈川の堤防強化策と他の地域の堤防強化策に質的、量的な相違が存在 するのだ。
逆に言えば、対応策の取り方によって発生する災害の程度を調節できるのだ。
このことは、費用がかかるからという理由で、十分な堤防強化策が取られてい ないことを意味している。
人口密度の低い地域においては浸水が発生し、ある程度の犠牲が出ても構わな いとの発想がベースに置かれている。

この現実を冷静に見つめて、私たちは行動しなければならない。
第一に重要なことは、自分の身は自分で守らなければならないということだ。
開示されている情報を正確に把握し、手遅れにならない先手必勝の行動を取 る。
危険の中に身を晒すことが不適切であることも言うまでもない。
第二に重要なことは、私たちの生命を十分に守ってくれない政府の存続を許す のかどうかを判断すること。
私たちの生命を守らない政府を退場させて、私たちの生命を守る新しい政権を 樹立することを真剣に考えるべきだ。
私たちは主権者であるから、政権を変えることができる。
このことを忘れてはならない。



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