曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

日本の刑事司法と上級国民・下級国民

2019年12月28日 17時51分16秒 | 政治

                                

                     「植草一秀の『知られざる真実』」

                                      2019/12/28

              日本の刑事司法と上級国民・下級国民

           第2515号

   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019122800464362135
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上級国民・下級国民という言葉が浸透しているが、これは単なるやっかみの言
葉ではない。

日本の刑事司法のゆがみとリンクする言葉なのだ。

2019年4月19日、東京池袋では87歳の男性が運転する乗用車が暴走。

30代の女性と3歳の娘がはねられて死亡した。

わずか2日後の4月21日、神戸で市営バスが暴走し、巻き込まれた20代の
男女2人が死亡した。

ともに歩行者が青信号で横断歩道を歩行中に起きた事故だったが、池袋の暴走
事故を引き起こした飯塚幸三氏は逮捕されず、事故発生当時の報道では「さ
ん」という敬称付きで報じられた。

他方、神戸の事故を引き起こした64歳のバス運転手は自動車運転処罰法違反
(過失致死)容疑で現行犯逮捕され、「容疑者」という呼称付きで報道され
た。

同じく横断歩道を青信号で歩行中に起きた死亡事故がもう1件ある。

本年8月18日、午前10時40分頃、JR四ツ谷駅前の交差点の横断歩道を
青信号で横断していた4歳の男の子が、警視庁新宿警察署のパトカーにはねら
れて重体になった。

男の子は9月13日に死亡した。

4歳の男の子が交差点の横断歩道を青信号で歩行しているときに、警察車両に
よって跳ね飛ばされて死亡した重大事件だ。

報道は、警察車両が時速40キロのスピードで交差点内を走行したと伝えてい
る。

警察車両は警視庁新宿警察署のパトカーで、薬物事件容疑者の尿検体を運搬す
るために緊急走行していた。



横断歩道上を青信号で歩行している4歳男児を跳ね飛ばした緊急自動車は警視
庁新宿警察署のパトカーだったが、道路交通法第38条および第41条は、緊
急自動車であっても、「横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断
しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、か
つ、その通行を妨げないようにしなければならない。」と規定している。

新宿警察署パトカーは道路交通法に違反して4歳男児を跳ね飛ばして死亡させ
た。

暴走殺人事件と表現して過言でない。

これら三件の重大事件の刑事上の取り扱い、報道上の取り扱いに天地の開きが
ある。

神戸のバスによる死亡事故ではバス運転手が現行犯逮捕され、実名も公表され
た。

池袋の暴走殺人事件では、加害者の飯塚幸三氏が元工業技術院院長でクボタ副
社長を歴任した人物であることが伝えられ、飯塚氏は未だに逮捕、勾留されて
いない。

四ツ谷駅前交差点で横断歩道を青信号で歩行していた4歳男児が跳ね飛ばされ
て死亡した事件では、加害者の男性の実名すら公表されていない。

メディアはこの問題をほとんど報道していない。

事故発生時、男児死亡時、加害運転手書類送検時に、事実関係だけが簡単に報
道されたのみである。

パトカーを運転していた警視庁新宿警察署地域課の男性巡査部長(51)は1
1月26日に自動車運転処罰法違反(過失致死)容疑で書類送検された。



しかし、ほとんど詳しい報道がない。

池袋事件、神戸事件を大きく報道したテレビメディアが四ッ谷の青信号での横
断歩道歩行中の4歳男児跳ね飛ばし殺人事件をほとんど報道していない。

大きな交差点で防犯カメラ映像があるはずだ。

他の事件であれば警察は防犯カメラ映像を民間メディアに提供する。

ところが、この事件では報道自体がほとんどない。

青信号を歩行中の4歳男児がパトカーに跳ね飛ばされて死亡した事故、事件で
あり、テレビメディアが競って大報道を展開するような事件だ。

しかし、報道はほとんどなく、加害男性の実名すら報道されていない。

農水省元事務次官の熊沢英昭氏は長男を殺害し、12月16日、東京地裁は懲
役6年の実刑判決を示した。

殺人で実刑判決を受けた被告の保釈が認められることは通常ない。

だが、裁判所は熊沢氏の保釈を許可した。

裁判の最終弁論で熊沢氏は「この罪を償うことが大きな務めと考えている」と
話したが、その熊沢氏が判決を不服として控訴した。

審理は控訴審に移行し、高裁判決が示されるまでには新たに長い時間が経過す
る。

日本の刑事司法は完全に腐敗し切っている。

このような状況を放置してよいのか。

最終的に問われるのは主権者国民の対応だ。

国民がゆるい対応を続けている限り、この腐敗は決して是正されない。

腐敗はさらに進行することになるだろう。



バブルの後期ならびにバブル崩壊初期に銀行による乱脈融資が拡大し、多くの
銀行、金融機関が破綻した。

1998年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破綻した。

不良債権を生み出し、銀行を破綻させた経営陣が責任を問われた。

この事件の裁判で2008年7月18日、最高裁は旧長銀の元経営者3人に対
して逆転無罪判決を示した。

このことについて私は2008年7月19日付のブログ記事

「長銀事件逆転無罪判決の闇」
https://bit.ly/39i45IM

に次のように記述した。

「刑事事件で最高裁が逆転無罪判決を出すのは極めて異例である。

日本の三権分立はおとぎ話である。内閣総理大臣が三権を掌握し得るのが実態
である。政治権力は司法、警察、検察に対しても支配力を及ぼすことが可能で
ある。

今回の最高裁判決の真のターゲットはこの事件にはないはずだ。旧長銀と類似
した事案で裁判が行われている「日債銀事件」が謎を解く鍵である。

「日債銀事件」では大蔵省OBで国税庁長官を務めた窪田弘氏が起訴され、1
審、2審で執行猶予付き有罪判決が出されている。

大蔵省、財務省は、同省最高幹部を経て日債銀に天下りした窪田氏の有罪確定
を回避することを最重要視してきた。

長銀事件が最高裁で逆転したことが、日債銀事件に影響する。

日債銀事件で同様の逆転無罪判決が出されるなら、ここに示した仮説が間違い
でないことが判明すると考える。

日本の権力構造の闇は限りなく深い。」



この予測は的中した。

2009年12月7日、最高裁は窪田氏ら旧経営陣3人を有罪とした高裁判決
を破棄し、審理を高裁に差し戻す判断を示した。

そして、東京高裁は2011年8月30日、日債銀の旧経営陣3人を逆転無罪
とする判決を示したのである。

この判決を示したのが陸山会事件で悪名を轟かせた東京高裁の飯田喜信裁判長
である。

石川知裕元衆議院議員ら3名の元小沢一郎事務所秘書に対する筋違いの不当有
罪判決を示したのが飯田喜信裁判長である。

「刑事裁判の絶対権力者」による「ざまあ見ろ」判決の傲慢
https://bit.ly/378BML6

窪田氏は日本債券信用銀行頭取に1993年に就任している。

日債銀の不良債権問題を生み出す中核期に日債銀の頭取を務めていた。

しかし、日本の刑事司法は最高裁での逆転という奥の手を用いて旧官僚トップ
を無罪放免にした。



さらに2009年4月14日、小田急線内での痴漢事件で強制わいせつ罪に問
われ、1審、2審で懲役1年10ヵ月の実刑判決を受けていた防衛医大教授の
男性に対して、最高裁が逆転無罪を示した。

無罪判断を示したのが最高裁判事の近藤崇晴氏である。

この最高裁判断の直後に当たる2009年7月に最高裁は、私が巻き込まれた
痴漢冤罪事件についての私の上告を棄却して有罪を確定させた。

この判断を示したのが同じ近藤崇晴氏である。

防衛医大教授が逆転無罪にされた理由は客観証拠がなく被害者の証言が唯一の
証拠であることとされた。

このことは私が巻き込まれた冤罪事件と完全に重なる。

しかし、防衛医大教授は逆転無罪とされ、私は有罪とされた。

ちなみに、防衛医大教授に無罪判断を示し、私に有罪判断を示した近藤崇晴氏
は、この判断から間もない2010年11月21日に死去している。

また、私が冤罪事件に巻き込まれた際に、私が勾留された蒲田警察署に面会に
行き有罪の心証を持ったとの趣旨の、完全虚偽の情報をネット上にまき散らし
た極悪非道の人物も最近50代で死去している。

私を取り調べた検事はセクハラ疑惑で検事退官に追い込まれたと週刊誌が伝え
た。



熊沢英昭氏の控訴は一審での「罪を償う」との陳述と矛盾する。

殺人罪で実刑判決を受けた者に対する保釈許可も異例中の異例だ。

要するに、この国の刑事司法は完全にゆがみ、完全に腐敗しているのだ。

民事訴訟で敗訴した山口敬之氏が無罪主張をする唯一の根拠が、日本の刑事司
法が山口氏を無罪放免にしたことなのだ。

その刑事司法が腐敗し切っているのなら、無罪主張の根幹が崩れることにな
る。

この国では刑事司法の判断を相対化する必要がある。

刑事司法の判断に重大な誤りが含まれていることが多々存在するのだ。

このことを念頭に置くことが重要になる。



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