「植草一秀の『知られざる真実』」
2017/07/06
次期衆院総選挙最大争点は消費税減税の是非
第1786号
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2012年に小沢一郎氏が「国民の生活が第一」という名の新党を創設した。
民主党が2009年の政権公約を一方的に破棄して、消費税増税を国会で強行
決定したことに対する明確な批判を新党の名称にしたものだ。
野田佳彦政権の消費税大増税決定に対して、良識ある民主党議員が反対した。
そして、消費税増税に反対する議員の多くが民主党を離党して新党を結成した
のである。
2009年に実現した政権交代の大業が、その後の日本政治刷新に結びつかな
かった最大の理由は、民主党新政権が
「シロアリ退治なき消費税大増税」
に突き進んだことにある。
この路線を打ち出したのは菅直人氏である。
2010年6月、菅直人氏は鳩山首相辞任のタイミングを縫って、権力の強奪
に動いた。
そして、鳩山政権が激しい攻撃に晒された主因となった
対米従属からの脱却
と
消費税増税抑圧
の基本方針を突然放棄したのである。
この菅直人政権の誕生こそ、政権交代の意義の自己否定そのものであった。
そもそも、2006年に民主党は解党の危機に直面していた。
前原誠司民主党代表が、堀江貴文氏から自民党の武部勤幹事長に宛てて送った
とされるメールの取り扱いで失策を犯し、党の存亡が危ぶまれる事態を招い
た。
この局面で火中の栗を拾う役割を演じたのが小沢一郎氏だった。
小沢一郎氏が民主党代表に就任し、直後の千葉7区衆院補欠選挙での民主党勝
利を実現した。
これを契機に民主党の大躍進が始まった。
翌2007年の参院選に大勝。
2008年には日銀幹部人事、民主党代表選で、メディアが小沢氏攻撃を激化
させるが、この攻撃をかわして小沢氏が民主党代表三選を果たした。
2009年に入ると、小沢氏攻撃は激化して、麻生政権による謀略と言える
「西松事件」創作などの卑劣な猛攻撃に晒されていった。
小沢氏は衆院総選挙への影響を考慮して民主党代表を退き、後任の民主党代表
に鳩山由紀夫幹事長が就任して、2009年8月総選挙に大勝。
政権交代の偉業を成就したのである。
2006年に始動した民主党大躍進をもたらした、小沢一郎氏が掲げたスロー
ガンが
「国民の生活が第一」
である。
2009年8月の衆院総選挙では、鳩山民主党が
「シロアリ退治なき消費税増税は認めない」
という方針を明示した。
この方針を誰よりも声高に訴えたのが民主党の野田佳彦氏であった。
2009年8月15日野田佳彦氏街頭演説
http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo
財務省は「シロアリ退治なき消費税許さない」とした鳩山政権の基本方針に対
して猛烈な反発を示した。
また、米国は普天間基地の県外・国外移設方針を示した鳩山政権を敵視した。
このために鳩山政権はメディア集中攻撃に直面したのである。
鳩山政権が財務省、米国の攻撃を受けて破壊された状況を間近で観察していた
菅直人副総理は、鳩山首相辞任のタイミングで権力を強奪し、鳩山政権の基本
路線を一気に破棄したのである。
政権発足直後の2010年6月17日に、菅直人政権は参院選マニフェスト発
表会見を行い、突然、消費税率を10%に引き上げる方針を発表したのであ
る。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-99be.html
この公約破棄によって民主党は2010年7月参院選で大敗した。
2009年8月総選挙を通じて実現した政権交代の大業を、一気に水泡に帰す
致命的な過ちが犯されたのである。
この路線を継承して野田佳彦政権が2012年8月に消費税大増税を国会で強
行制定した。
さらに同年12月に自爆解散を挙行して大政を安倍自民党に奉還したのであ
る。
いま求められることは、「国民の生活が第一」の政治を取り戻すことである。
その中心テーマとして最大の論議が必要なのが
「消費税問題」
である。
次の衆議院総選挙の最大争点に消費税問題を掲げるべきである。
消費税について、日本の主権者は正しい情報を獲得できていない。
日本の主権者の認識はおおむね以下のようなものである。
日本財政は極めて深刻な危機に直面している。
財政再建を急がなければ財政破綻に陥ることもあり得る情勢だ。
所得税負担は限界に到達しており、増大する財政需要を賄うには消費税を税収
の基軸にする必要がある
所得税では所得の捕捉に重大な不平等が生じており、この不平等を是正するう
えで、消費税による課税は極めて有効である。
日本の人口は急速に高齢化しており、社会保障支出は増大の一途をたどる。
増大する社会保障支出増加を賄うには消費税率の段階的な引き上げが必要不可
欠である。
このような情報が流布されて、主権者は消費税増税の受け入れはやむを得ない
ものであると諦めてしまっている。
しかし、これらの説明は、そのほぼすべてがウソである。
ウソの説明で、日本の主権者は消費税大増税を強制されてしまっているのだ。
第一のウソは、日本財政が危機に直面しているという話だ。
政府や財務省は日本政府の債務残高が1000兆円に到達しており、GDPの
200%超えを強調する。
あのギリシャでさえ、政府債務のGDP比は170%程度であったとする情報
を流す。
国民は日本財政が危機に直面していると信じ込んで、消費税増税を受け入れて
しまう。
日本政府の債務残高が1000兆円を超えているのは事実だが、政府は、より
重要な、もう一つのデータに触れない。
それは日本政府の資産残高も1000兆円を超えているという事実だ。
2015年末の日本政府の資産負債バランスは、62.6兆円の資産超過であ
る。
借金は多いが、資産はその借金よりも多いのだ。
日本財政が危機にあるというのは、真っ赤なウソである。
増大する財政需要を賄うには消費税増税が必要不可欠だというのも真っ赤なウ
ソである。
1990年ころから2015年ころにかけて、日本の主要税目税収は以下のよ
うに推移している。
所得税 27兆円(‘91年度) → 16兆円
法人税 19兆円(’89年度) → 11兆円
消費税 3兆円(’89年度) → 17兆円
この推移は一体何を意味しているのか。
所得税、法人税での財源調達が限界に到達して、やむなく消費税の負担を増や
してきたのではないのだ。
所得税と法人税の負担を激減させて、その財源減少を補うために消費税が大増
税されてきただけのことである。
所得税、法人税と消費税との間には、税収確保の基本的な考え方の決定的な相
違がある。
所得税と法人税は「納涼に応じた課税」であるのに対して、
消費税は「能力に応じない課税」、あるいは、「能力に反した課税」なのだ。
所得税では累進税率が適用され、所得の多い人の税率が高く、所得の少ない人
の税率が低い。
所得が一定金額に達するまでは課税が免除される。
日本国憲法は第25条で「生存権」を保障している。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」
を基本的人権として保障しているのである。
所得が一定金額に達しない人の所得税負担をゼロとしているのは、この「生存
権」の保障を背景とするものである。
ところが、消費税の場合には、所得がゼロの人にも、所得が10億円の人に
も、同じ税率が適用される。
所得がゼロの個人にとって8%の税率は過酷なものである一方、所得が10億
円の人にとって8%の税率負担は極めて緩いものである。
結局、消費税の大増税は、法人税減税、所得税減税を実現するために実行され
てきたものなのである。
さらに、政府の支出面では、社会保障支出が最優先で圧縮される一方で、各種
の利権支出は拡大の一途を辿っている。
利権政治屋によって重要なことは、
票と金になる有権者を喜ばせること
であり、
票と金にならない有権者に対する支出は、可能な限り圧縮せよ
ということになる。
だから、社会保障支出が削減されて、利権支出だけが膨張の一途を辿っている
のである。
まずは、消費税の税率を5%に戻すべきだ。
招来は消費税を廃止することを検討するべきだ。
「能力に応じた課税」
を強化することで、財源確保は十分に可能だ。
所得税は累進税率が適用されると記述したが、現行制度には重大な抜け穴があ
る。
金利や配当の所得が分離課税となっており、その税率が低位に抑制されてい
る。
「能力に応じた課税」
をベースにするなら、所得税は「総合所得課税」として、累進税率を適用する
べきである。
結局、「能力に応じた課税」を実現しないために、担税能力のない国民に過酷
な負担が強要されているのだ。
経済政策の基準を「国民の生活が第一」に引き戻すこと。
安倍政治が「弱肉強食推進」、「市場原理主義」の経済政策を強行推進するな
かで、経済政策の基本路線の大転換が強く求められている。
次の衆院総選挙を「政策選択選挙」とし、
原発廃止、戦争法廃止、消費税率5%
の政策選択肢を国民の前に明示するべきである。
そして、選挙を「政策連合」で戦うことが求められる。
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